BE:FIRSTが世界に提示したいもの 長編
Boom Boom Back, Mainstream,
そして、彼らの第1章の終わりで第2章の始まりとなるMasterplan。
2年前からこのタイトルで楽曲を作ることになるだろうと思っていたメンバーたち。
デビュー前からSKY-HIは、3年後、5年後のグループとしての活躍やありたい姿を明確に頭の中でビジュアライズし、見事にそれを達成するための逆算を1つ1つのマイルストーンに仕立て、彼らの成長のスピードと何かを生み出すことを人任せにしないという思考回路、グループとしてのありたい姿、メンバー1人1人の意思を言語化させるというレベルまでこの2年間という短かい期間で育て上げた。
私はボーイズグループには興味もなく、たまたまSOTAのダンスを見て、BE:FIRSTに興味を持ち、グループがダンスだけでなく歌唱、ラップとハイクオリティで音楽活動をしていることを知って、まさか推し活を始めるなんて微塵も思っていなかった。そんな私が今ここで熱くビーファーについて語る。
面白いもので、BTSすらわからないのに、ビーファーメンバーが好きということでStrayKidsのファンになり、BTSやBIGBANGをチェックした。NI-KIという日本のダンサーが入ったENHYPENのファンになってみたが、ビーファーの凄まじいライブ、、音源より最高を持ってくるグループの熱気に食らってしまい、彼らを愛さずにはいられない。よって、スキズもエナイフンもファン脱退。しかし、、K-POPに足を突っ込んで見なければ、BE:FIRSTが提示したいもの、また何故それが絶対に必要なことなのか分からなかったかもしれない。
StrayKidsは第4世代で兵役中のBTS先輩を凌ぐ勢いで世界のファンダムを形成している。楽曲制作およびプロデュースをメンバー3人(3racha)で行う圧倒的な個性を持つグループ。FCは辞めても彼らの音楽は好きだ。彼らの音楽、特にラップが素晴らしいし、いわゆるヒット曲をこの2,3年で出し続け、彼らの生み出す音楽への絶対的な存在感は確かな説得力を持つ。2024年から満を持して、欧米への進出に舵を切り世界40都市のツアーを行うのだそうだ。
兵役後のBTSと現在進行形のStrayKidsの米国市場への進出をどのように行うか、実はすごく興味を持って見守っている。
昨年BTSが兵役に行く前にそれぞれのメンバーがソロ活動をした。その中で最後の最後にやってきたJung Kookのアルバム”Golden”。その反響は凄まじく圧倒的K-POP勝者だった。
StrayKidsがアメリカのヒットメーカーCharlie PuthをFeaturingする形で3rachaと楽曲制作し、リリースした”Lose My Breath”。矛盾極まりないが、Jung Kookの”Next Standing to You”を聴いた時と同じことが起きた。最初、かっこよさに掴まれ、その後じわじわモヤモヤする違和感みたいなものがやってくる。それがなんなのかよくわからなかったが、同曲のUsher Remixを聴いた瞬間その理由に気がついてしまった。
世界にK-POPというカテゴリーをしっかり根付かせ、その頂点に立ったBTSが米国進出で成し遂げたいことは実はK-POPの王者になれば、それなりに世界で活躍できるし、もうK-POPという居場所は過去のものになるのだろう。グローバルアーティストとしての活躍は保証されたも同然、、、と思いきや、多分そんな簡単なことではないのではないかと最近つくづく思う。
BTSの成り立ちからDynamiteでの大成功まで、BTSはやりたかったヒップホップを諦め、それぞれの”らしさ”を捨てながら、一つのグループの人格を作ってきた。兵役前に、メンバーはそれぞれ自分たちの思いのままやりたい音楽をソロ活動を通してファンに見せてくれた。それはBTSという人格には混ぜることはできない個性だった。
JKの”Golden”というアルバムは完全なMade in USAで、私はストリーミングで聴いた時、アメリカのアーティストが歌っているのかと思った。
この楽曲をJKの憧れのUsherがRemixし歌って踊ってみせたら、JKが霞んで見えた。JKの世界観は当然あるのだが、、マイケル•ジャクソンのダンスをコレオに、マイケルのイメージを思い起こすような衣装と、、サブリミナルな感覚さえ持つほどのマイケル要素が、あちらこちらに散りばめられていて、そこまでやる?ってかっこいいと思いながら不思議な気持ちで、MVをみていた。一方、Usherが提示したものは、楽曲をダンス、ボーカル、バイブスで全てを一度溶かして、Usherという体現者として、自らの楽曲の如く、”Usherらしさ”を当たり前のように出して、ダンスと歌が見事にシームレスに融合、一瞬にその世界に引き込まれる。
みな欧米市場での成功を夢見ているのに、例えばK-POPグループなら、K-POP同士の熾烈な競争で疲弊しているし、ファンの見たいもの、聴きたいものをとことん作り上げ、時には先導し、みんなが好きになる楽曲を増産した。これは悪い意味ではなくて、実際にBTSは稀有なグループで、私もすっかり彼らの歌やダンスが好きになった。
一般的なエンターテイメントの世界のありきたりな話だ。大衆が好きなゾーンを深掘りし商業的な成功を導く方程式。みんなが売れるわけではないが、
アーティスト、アイドルのサスティナビリティーなど、エンタメには無用の長物であることは間違いない。ところ変わればのスタンスでアメリカ市場で勝つのに必要なファクターを全て持ち込んで、ポジションの確立とリスナーやファンを更に増大させるのみだ。人格をいくつも持って世界を旅する。
しかしそこに、ビーファーがMainstreamからMasterplanを落としてきた。
SKY-HIの言うところのアーティストの幸せは、商業的思考と真逆なのだが、アーティストとして音楽人として一生生きていく人間には、エンタメの方程式は自爆を意味する。
ビーファーが提示したものは、おそらく、彼らの音楽人生でブレることはない唯一無二の選択を鮮やかに清々しいほど明確に人々に提示し、そして圧倒した。そこには、彼らが生きてきたこれまでのたくさんのインプットをMade in Japanにこだわり、カルチャーそのものも楽曲に乗せアウトプットし、それを持って世界でチャレンジしたいという表明。SOTAとダンサーで振付師のReiNaちゃんが作ったコレオはSOTAがダンサーとして世界で活躍してきた中で、自分らしさ、唯一無二を追求してきたことで生まれたダンススタイルを惜しみなくビーファーに落とし込み、メンバー全体のダンスレベルを引き上げ、アイドルとかボーイズグループとか、もうそういう次元でないスキルフルかつ無双のダンサー集団に変えてしまった。楽曲も同様でメンバーの歌唱やラップも個性豊かでクオリティが高い上、今回は和楽器を入れ、MVには咲き誇る桜を背に超難関ヒップホップダンスを見せた。これらを引っ提げ海外進出をするのだから、彼らのブループリントには、欧米の楽曲をこよなく愛し、かっこいいと思ったそれらを、自らが発信する側になった時、誰にも真似できないBE:FIRSTのヒップホップ、つまり日本のカルチャーを滲ませ、Made in Japanのグループとして、自分たちのかっこいいを表現し続けていきたいという。。私的にはこれをずっとむしろ待っていた。誰かの真似でなく、、誰にも真似できない何かを追求していく姿勢は簡単ではない。売れるということと楽しむということが同義ではないことが前提にある時、、彼らのスタンスはお花畑に聞こえるかもしれないが、彼らの乗り越えてきたマイルストーン、実績は、彼らの意思に揺るぎない説得力を与えた。
実際、私も海外との繋がりが多いため、最後は私が何者か、日本人として何をどう消化し、それをどうアウトプットするかの連続で、他国の誰かの真似ごとでは、誰の印象にも残らない。そんなことは日常茶飯事なのだから、どんな仕事であっても海外で活躍するとは自分らしさ、自らのアイデンティティの表明は当然のこと。
しかし、それに、売れる、、売れないをごちゃ混ぜにしていくと、天下を取ることが目標になってしまう。天下を取ってから考えればいいと思考回路を停止させ、ともかく走り続ける。なんか切なく苦しいな。
StrayKidsが今回リリースした楽曲は、彼らの個性は見事にアメリカナイズされ、力強く、超絶技巧なラップは無かった。全員がボーカルで勝負し耳心地はいいが、StrayKidsでなければ出せない世界観のようなものはこの楽曲には見つからなかった。Charlie Puthが1人で歌って成立する。どちらがどちらをFeaturingしたのか何度も確認してしまった。
これがアジアで成功を収め、世界に大きなファンダムを形成したグループのアメリカ市場での戦略なのだろうか。
ビーファーもこれからが本当の船出であり、彼ららしさを失わないことで、世界での成功が長く遠い旅路なるのか、貫くことで存在証明に余計な説明は不要になり、届けたい彼らの音楽を届けられるのか、未知なる挑戦だ。ただ、ビーファーが見せたMasterplanの深いメッセージがこの先必ずや彼らの代名詞となって音楽好きなファンを少しずつ確実に増やして行くことは間違いないと思う。
ボーイズグループである以上、人気稼業の要素は切り離せないため、ビジュアルやルッキズムはファンダム形成に不可欠な要素だが、私はファンの1人として、まずは彼らの音楽とダンスをじっくり堪能してほしいと思う。できるのならばライブで。実際にファンの年齢層が幅広いのは、音楽やダンスに偽りがなく、フルスロットルで挑むその姿に賞賛とともに自然に感動が込み上がるからではないだろうか。ともかくライブに行けばわかる。そうして彼らはファンの心を掴んできたと思う。私自身、ダンスや歌また彼らの音楽愛から、自らも音楽やダンスの素晴らしさや楽しさを再認識し、それが彼らを応援する所以になっている。
若さをむやみに消費するのではなく、若さゆえにスポンジのごとく様々なことを吸収し、彼ら色に変換しアウトプットをし続け、常にありたい自分と向き合い、今を楽しんで音楽の沼に、ダンスの沼につかりながら、イノベーションをおこしてほしい。3歩進んで2歩下がるでもいいじゃない。トヨタの”カイゼン”という言葉が世界のビジネス用語になったみたいに、私の自慢の推しが世界でどう受け止められるのか、どう世界の道を切り開いていくのか楽しみで仕方ない。