白洲次郎のYou are the fountain of my inspiration and the climax of my ideals.
後にも先にもこれほど女冥利につきる称賛の愛のメッセージはないのではないかと思う。
白洲次郎が妻になる白洲正子へ送ったポートレートに添えたメッセージ。
「君は私にとって霊感の泉であり究極の理想だ」
今日はなぜかこの言葉を思い出して、『白洲次郎 占領を背負った男』北康利(講談社)を本棚から取り出した。
2009年、NHKのドラマスペシャル「白洲次郎」で白洲次郎役を伊勢谷友介さん、白洲正子役を中谷美紀さんが演じた。
はっきり言って、お二人は完全にはまり役だった。この二人以上に演じることができる人がいるのだろうかと思うほど、素晴らしかった。
白洲次郎はケンブリッジ大学に留学、正子は米国ハートリッジスクールに留学。会話のところどころに自然と英語が混ざる夫婦の会話を伊勢谷さんと中谷さんは本当に大人の雰囲気で気負うことなく演じていた。
明治生まれの二人が終戦後の激動の日本を駆け抜けた後、武相荘で余生を過ごすカントリーライフはもうあっぱれとしか言いようがない。引き際、そして、土をいじって老後を暮らすと決めた白洲次郎はどこまでもCoolなジェントルマンなのだ。
成熟した男女のあるべき姿だとため息とともに心底憧れた。
白洲次郎のダンディズムや名言”「すみません。」は駄目だ、「Say Thank You」だ。”は今の時代でもまだ定着していない日本人の遠慮がちなマインドに響く言葉ではないだろうか。
戦後沢山の努力と思いと様々な忍耐と悲しみや喜びを越えて、今、私たちは平和に暮らせている。
私は年齢を重ねるたびに、8月になると、そっと心の中で手を合わせて、その時代の人々へ思いを馳せ、感謝の言葉を唱えるようになった。そう、ありがとう、Thank you、と。
命さえあれば何度だってやり直すことができる。何度でも誰かに出会い、何度でも誰かと別れ、やり直すのだ。
100歳まで生きるのだから、焦ることはない。
そして、平和に暮らせる毎日は当たり前ではないのに、当たり前と思う次の世代に手渡して、私たちはあの時代の人たちへ、ありがとうと言って、また一年を送る。