自分が相手にとって大切な人になるためのコミュニケーション
こんにちは。対人コミュニケーションについて研究・教育をしている大学教員の今井達也です。
私のホームページ:https://tatsuyautexas.wixsite.com/mysite
この記事は:
- 身近な誰かを支えてあげたいと思っている人
-親密な人間関係を築きたいと思っている人
- コミュニケーション学、対人関係、心理学などに興味を持っている人
などに読んでもらうことによって、新たな気付きが得られるかも知れません。
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あなたにとって大切な人はいますか?
家族、恋人、友人、など、様々な人達が私達にとって「大切な人」になりえますよね。
じゃあ、質問を少し変えてみますね。
あなたは誰かにとって大切な人ですか?
この質問に答えるのは難しいと思います。実は今、この「誰かにとって大切な人になる」ということについて勉強・研究をしています。
あなたが誰かにとっての大切な人になれた時、そしてそれをあなた自身が知った時、それはあなたの幸せに大きく貢献します。
例えば自己肯定感の理論である、そして私のnoteに何度も登場するSociometer Theoryはこのように伝えています:
自己肯定感とは「自分は誰かにとって価値のある人間なんだ」と思えているかどうかを表す指標である
Sociometer Theoryについて(英語版Wikipedia)
例えば「あなたは私にとってかけがえのない存在なんです!」と言われたら嬉しいですよね。そんな風に言われてみたいものです(私は奥さんには言ってもらえてるかも笑 私はちゃんと言えてるだろうか。。。恥)。
自分も誰かにとっての大切な存在になりたいものですよね。コミュニケーション学は、そのような存在になるためのヒントを私達に与えてくれます。今日は、どんなコミュニケーションを使えば、あなたが誰かにとっての大切な存在になりうるか、について書いていきますね。
実はたくさんあるのですが笑、色々考えた結果(実行のしやすさ や 実行することによって起こりうるリスクの少なさ)、2つに絞りました。今まで私のnoteに出てきたものばかりですみません。もちろんこの2つの方法は、研究によるエビデンスがあります。その2つの方法とは:
1. 相手に対してレスポンシブになる
2. 相手に感謝の気持ちを伝える
です。一つずつ説明していきますね。
1. 相手に対してレスポンシブになる。
レスポンシブ(Responsiveness)は、日本の研究業界に詳しくないので日本のことは分かりかねますが、海外の人間関係研究の中ではかなりホットな話題です。レスポンシブとは、簡単に定義するのであれば「相手の対人関係のニーズに寄り添う態度」とでも言えばいいでしょうか。このレスポンシブは3つの要素に分けられます。それから説明した方が簡単だと思います。
参考文献は以下のリンクを(英語です)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2891543/
レスポンシブの構成要素:
1. 相手への理解(Understanding)
2. 相手の受容と肯定(Validation)
3. 相手への思いやり や 相手を助ける姿勢 (Caring / Support)
1.の理解は、シンプルに言えば、相手をしっかり、正確に理解することです。実はこれがかなり大切で、レスポンシブの理論によれば、2や3を達成するためには1が必要不可欠とのことです。相手を理解する具体的な方法としては、例えば傾聴のスキルなどは効果的だと考えられます。方法はこちらを。
2. の受容と肯定は、1で正確に理解した相手の情報や気持ちを、受け止め、そして肯定的に捉えることを指します。「あなたはそれで良いんだよ。あなたのしていることはすごいよね。」と相手に伝えてあげることが大切かと思います。この辺り、カウンセリングのスキルと似ていますね。
3. 相手への思いやり や 相手を助ける姿勢 は、簡単に言えば「何かあったら、助けてあげるからいつでも言ってね!」という態度を指します。困ったときは、この人に助けを求ればいいのか、という人がいれば人は安心できますよね。
以上3つが、レスポンシブの構成要素です。この要素を含んだメッセージを相手に与えることができれば、相手にとってあなたは「大切な人」になりうる可能性が高まります。
レスポンシブは親密な友人作りにも有効であることや
https://psycnet.apa.org/record/2010-12776-006
恋愛のパートナーの間でも有効なコミュニケーション方法である
https://psycnet.apa.org/record/2018-35079-001
ことが分かっています。
次の「相手にとって大切な自分になる」コミュニケーションの方法は感謝の気持ちを伝えることです。
2. 相手に感謝の気持ちを伝える。
詳しくはこちらの記事をご覧ください:
感謝の気持ちを伝えることにはどのような効果があるでしょうか。研究の結果は以下のように示しています:
ありがとう!と伝えると
- 相手に「あなたは価値のある人間なんですよ」と伝えられ、相手を喜ばすことができる
- 相手に「この人は温かい人なんだ」と思ってもらえる
- 相手に「この人は私を受け入れ、肯定的に捉えてくれるんだ」と思ってもらえる
まとめると、あなたが相手に対して感謝の気持ちを伝えることができれば、あなたが相手の存在を受容・肯定することになり、そんなあなたの存在を相手は「かけがえのないもの」と見なしてくれる、ということになります。
もし、誰かがあなたに何かをしてくれるようなことがあれば、その人には丁寧に感謝を伝えるといいと思います。その人のやってくれたことが、あなたをどんな風に幸せにしてくれたか、助けてくれたか、改めて伝えてみてください。(やりすぎるとちょっと怖いので、自然な会話の流れの中で使ってみてください。ここ重要です。このようなコミュニケーションの適切さをAppropriatenessと言います。)
それでは、2つの方法をまとめて、以下に書きますね。
あなたが誰かにとっての大切な人になる方法は以下の2つ(本当は他にあるが、ここで紹介するのは2つ)
1. 相手に対してレスポンシブになる
レスポンシブの構成要素は「相手への理解、受容・肯定、そして思いやりとサポート提供の姿勢」です。
2. 相手に感謝の気持ちを伝える
例えば、相手がしてくれたことに対して、感謝とともに、なぜそれがあなたを幸せにしてくれたか、を伝え添える、など。
これらのコミュニケーションの方法を使うと、相手にとってあなたの価値が上がります。つまり、あなたがその人にとっての大切な人になる確率が上がります。
するとどうなると思いますか?
その人はあなたを大切に扱います。なぜなら、自分を幸せな気持ちにしてくれる人は、貴重な存在だからです。思い返してみてください。上記のコミュニケーションを上手にあなたにやってくれる人が周りにたくさんいますか?
するとどうなると思いますか?(再)
あなたは、あなたを大切にしてくれる人を引き寄せ、そしてその人達に囲まれ、幸せになれる確率が上がります(例えば、他者からの受容や高評価を感じることができ、自己肯定感が上る可能性があります。Sociometer Theoryによれば、相手からの受容感や肯定的な態度が自己肯定感の向上と関連することが示唆されるので。)
最後の部分は、まだ仮説の粋をでないので要注意です。最後だけ読んだら、怪しげな「幸せ掴もうぜセミナー」みたいですね笑
が、
実は研究が明らかにしているのは相手に対してレスポンシブにできる人は、相手も自分に対してレスポンシブにする、という研究結果があります。つまり思いやりの返報効果と言えましょうか。もちろん、今後の研究でその効果については、検討され続けるべきですけどね。以下研究リンク:
https://psycnet.apa.org/record/2010-12776-006
私見を述べさせてもらえば「誰かにとって大切な人になりたい!」という気持ちは大切だし、コミュニケーションを使えばある程度達成可能だと思います。しかし、私達は最終的には「自分を大切にする」義務があると思います。私達は、どんな私達であっても、大切な大切な自分というたった一人の人間です。なので基本姿勢は「自分も相手も大切に」です。なので、相手にとって大切な人になろうと努力した結果、自分がしんどくなったり、傷つくようなことがあれば、その人間関係を見直し、より良い関係を模索することが大切とも思います。
さて、参考になりましたでしょうか。今年度は年末年始にかけて大学関連の業務が集中し、noteを書く時間が全く取れませんでした。このように記事を書くことができて良かったです。読者のみなさまに情報提供をしたい、という気持ちもありますが、自分自身の研究の方向性や狙いを、自分の中でまとめることができて嬉しいです。それは読者のみなさまが読んでくれるからだと思います。
上記内容を発展させて、例えば
- 友達や恋人が、相談をしてきたときに、どのようなメッセージを返せば、レスポンシブになれるか、の具体例
- 今日紹介した2つの方法を「やれなかったら」「やらなかったら」どうなってしまうか
などについて今度書いてみたいと思っています。ただ、勝手気ままに書いているので、違うこと書いたらすみません笑
新型コロナウイルスでギスギスしている人間関係が、この記事ですこーしでも良くなれば、コミュニケーション研究者として幸せです。ではまた。
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