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職員にコンフォートゾーンを出ろ!と号令をかけるより、組織にラーニングゾーンをつくろう ~書籍:勝てるチームは会議でつくれ!チーミングリーダー入門から学ぶ~
ファンドレイジングの戦略づくりの伴走支援をしていると、戦略策定後の組織開発が必要になることが多いです。ここで言う組織開発は、新しくファンドレイジングを組織に定着させていくためのはたらきかけという意味です。
代表や事務局長など経営層がファンドレイジングをしていこうと決めても、職員や管理職の人たちがそれを拒むことは珍しくありません。
現状の仕事で精一杯なのに、なぜ新しいことに取り組まないといけないのですか?
私は寄付集めのためにこの団体に入職したわけではない!
こうした声に、ファンドレイジングに取り組む機運が吹き飛んでしまうのです。
コンフォートゾーンを出ろ!と号令をかけるより、組織にラーニングゾーンをつくろう
今までやってきたこの延長線上でものごとを進めるのはとても心地良いです。何をしたらどうなるのかがわかりますので安心して取りかかれます。この領域がコンフォート(快適)ゾーンです。コンフォートゾーンの外側はやったことがないので、どうなるかわからず恐ろしくて何もできないパニックゾーンです。今までやったことないファンドレイジングに挑戦することは、パニックゾーンに踏み出すことになってしまっているのです。
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誰だってどうしたらいいかわからないことに取り組むのは嫌なものです。それでも踏み出してもうらうためには、パニックゾーンとコンフォートゾーンの間にラーニングゾーンを作っていき、チームで学習しながら習得していく必要があります。
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ラーニングゾーンで行われている経験学習
ここでいう学習は研修を受講するなどの知識の習得もありますが、それはごくわずかで、その多くが「経験学習」と言われる自分たちの実践からの学びを指します。
経験学習はデービッド・コルブが言う「経験学習サイクル」のモデルがあります。これは①経験、②振り返り(内省)、③概念化、④計画のサイクルのことです。
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このサイクルをまわすためには「ファンドレイジングチームをつくり実践を重ねつつ、会議を通じて経験学習サイクルをまわすことで成果を出せるチームに成長させていく」ということになります。
え?会議が経験学習なの?
と思う人もいるかもしれませんが、その通りです。会議を通じて組織の成長につなげていくことができます。
多くの会社で行われている会議は、単に実績を振り返るだけの「報告会」になってしまっていたり、思いつきを述べ合うだけで誰もそれを実行しない「言いぱなし」になってしまっていたり、反省はしてもそれを次に活かそうとしない「反省会」になってしまっていたりするのではないでしょうか。それでは成果が上がる会議にはなりませんし、人も組織も成長しません。
会議を、参加メンバーの経験を振り返り、概念化して、次の経験に活かせるように計画する場にすること。そして、経験学習サイクルを早く回し続け、望ましい成果を手にするまでグループを変化させ続けること。これが、「チーミング」です。
今回は書籍:勝てるチームは会議でつくれ!チーミングリーダー入門を参考に、会議をアップデートして経験学習サイクルを回して、チーミングしていく方法について見ていきます。
会議で経験学習サイクルをまわす
会議には3つの型があり、経験学習サイクルをまわすために使い分けられます。
1.GROWモデル
期初に目標を設定したり、進捗管理や改善をするために用いる型です。
- 目標(Goal)
- 現状把握(Reality)
- 選択肢(Options)
- 意思決定(Will)
- まとめ(Wrap up)
目標設定と現状把握はできますが、その後の選択肢のアイデア出しと意思決定に必要な情報のとりまとめ、決裁者とのやりとりを経た意思決定、意思決定までの過程をとりまとめて組織にアナウンスする段取りまでスムーズにできる団体さんはあまりありません。実態は代表さんの頭の中でそれが全てされています。これを会議を通じて多くの人とのやり取りの中で進められていく必要があるのです。
2.POSERSEモデル
目標の適格性を判断するための型です。特にファンドレイジングの場合はえいやで目標設定されることが多いので、目標設定の適格性のチェックは欠かせません。伴走支援の現場においてもこのチェックは頻繁にしています。
- 肯定的表現(Positive):肯定的な目標の表現がされている
- 自分ごと(Own-part):他人事のような考えに基づいていない
- 具体的(Specific):いつ、だれが、どのようにするのかが明確
- 証拠(Evidence):目標達成が明確にわかる指標設定
- リソース(Resource):人的・資金的・時間などのリソースがある
- 適度な大きさ(Size):意欲的に取り組みやすい大きさの目標設定
- エコロジカル(Ecological):負の影響や思わざる結果への配慮
3.メタポジション・プロセスモデル
GROWモデルやPOSERSEモデルで検証された目標設定がされたが、その進捗で問題があり、打ち手がみつからず停滞してしまっている時に有効な型です。
ファンドレイジングは既に取り組んでいて、いくつかの寄付キャンペーンを成功させてきたが、最近停滞している団体に有効な型です。これまでの活動を自己評価し、成功要因や失敗原因の棚卸しや組織のこだわりポイントの深堀りなどして、第三者の視点を持って見直しをしていきます。
GROWモデルやPOSERSEモデルは組織内でやれる人材がいらっしゃることが多いですが、メタポジション・プロセスモデルをできる人がいる団体さんは見たことがありません。だからこそ第三者である伴走支援者が入っての会議実施が求められるニーズの背景があります。
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経験学習サイクルで言うと、GROWモデルやPOSERSEモデルによって経験をや振り返ることで成功事例や失敗事例として組織内で活用できるようになります。さらにそこからメタポジション・プロセスモデルにより概念化することができると、どの組織にも適用できるノウハウとして組織に蓄積されます。このノウハウの多さが組織の強さにつながります。
成果がでるようにチーミングする
人の集まりであるグループは「課題行動」と「プロセス行動」の2軸で成長をします。
課題行動
1.方向模索:共通の目的や目標の設定がグループの個人間でされる
2.組織化:意思決定プロセスの合意や会議体の設定等がされる
3.自由な情報交換:問題解決に向けた情報や知識の提供がされる
4.問題解決:問題解決に向けた具体的な諸活動がされる
プロセス行動
1.依存:リーダーへの指針や決定の依存
2.対立:メンバー間の探り合いの後の見方や個性の違いの表面化
3.まとまり:対立での意見交換を経た、理解した上での協働
4.相互依存:問題解決のためにお互いの存在の必要性を認め合いを経た柔軟な態勢をとれる状態になる
グループをつくると、以下の図のように2軸で構成されるマトリクスのどこかに属することになります。そこから右上の相互依存の状態で問題解決ができるチームになるようにしていくのがチーミングリーダーの役割です。
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グループの成長過程によって求められる対応が変わってきます。
例えば、ファンドレイジングチームを作ったとして、資金調達の必要性についての共通認識をメンバー間で得られたとしても、ファンドレイジングの知識や事例を知らないため、メンバーそれぞれが言い合って収集つかない状態は「bの方法の模索」のところかもしれません。
そこからメンバー全員でファンドレイジング研修を受講して知識を得たとして、クラウドファンディングを実施すべきだと主張する人と、賛助会員制度の変更をするべきだと主張する人の意見が衝突している状況は「gの課題に関連した正面対決」のところです。
対話を重ねて、来年事業で新しい拠点の開設予定なので、そこのクラウドファンディングをした方が寄付が集まりそうであることが全員の共通認識となることで、「kの協力できるグループ」に進み、クラウドファンディングをチームメンバー全員の役割分担で成功させる活動を通じて「oの相互の支援」に進み、クラウドファンディング実施後に懸念となっていた賛助会員制度の変更にも着手して離脱を最小限にした賛助会員制度のリニューアルにより、認定NPOになるための基準クリアに一歩ちかづけることができたことで「pの効果的なチーム」に進んでいきます。
こうした一連の流れでチーミングリーダーは、bの時点ではメンバー全員でのファンドレイジング研修受講を調整し、gでは双方の主張の背景の対話の場をファシリテートし、kではクラウドファンディングの目標設定や活動計画策定をうながし、oでは次のファンドレイジング目標設定に注目がいくようにし、様々なファンドレイジング上の課題や目標に向き合えるpの段階にチームを導いています。
そして、チームを導くための会議には3つの型を駆使しているのです。
さいごに
ファンドレイジングを組織に定着させるためには、コンフォートゾーンとパニックゾーンとの間にラーニングゾーンをつくる必要があります。
ラーニングゾーンを生み出すためには経験学習サイクルの構築が必要で、それにはチーミングと3つの会議の型の活用が有効であることを述べてきました。
経験学習サイクルをまわしたり、チーミングリーダーシップを発揮することを組織のメンバーだけで担うのは難しいことが多いですので、第三者のコーチの協力を得ながら進めていくのがよいと思います。
私はNPOの伴走支援やコーチングをしています。このnoteを読んで関心がある方はホームページや公式LINEからご連絡ください。
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