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ファンドレイジング体制をトップダウンからボトムアップに変更するタイミングと、その時に重要なポイント
この記事は書籍:まんがでみるボトムアップ理論を参考に制作しています。
2006年、当時、サッカーではまったく無名の広島県立広島観音高校が初出場にして初の全国制覇を成し遂げました。そして、それ以降も全国大会の常連校として活躍しています。こうした躍進は監督:畑喜美夫氏が実践したボトムアップ理論の定着が大きく影響しています。
今回はこのボトムアップ理論の視点で、ファンドレイジングチームの作り方を考えていきます。
NPOのファンドレイジングはトップダウンから始まる
まずボトムアップ理論は以下のような考え方です。
ボトムアップ理論とは
社長(トップ)が指示を出し、社員たちを右へ左へと動かすのが「トップダウン(上意下達)」型の経営だ。社長の決断でものごとが進むから動きは早いが、万が一社長が判断を誤れば、会社全体が間違った方向に進んでしまう恐れもある。
一方「ボトムアップ」型の経営では、社員が会社のビジョン、ミッションを踏まえたうえで意見を出し合い、話し合いながら「よし、こうしよう」と決めていく。現場の意見や情報を吸い上げることで、より実戦的な対応ができ、また、自分の意見が取り上げられることで、一人ひとりの仕事に対するモチベーションも上がる。やる気が高まれば、会社全体の力の底上げも期待できる。
NPOのファンドレイジングは、最初は組織の代表がやり始めることが多いです。そこから、広報・ファンドレイジングの担当者と共同して行うようになり、獲得金額が増えていくにしたがってファンドレイジングチームで組成されていくのが標準的な流れです。
この流れだと代表がやっていたことを、まずは担当者が引き継いでいくことになりますから、トップダウンの形で始まります。担当者は今まで代表が行っていた事務的な作業を巻き取っていって、その分の時間を代表は新たな関係構築を進めることにあてることで獲得金額を増やそうとしていきます。
ファンドレイジングをトップダウンからボトムアップに変更するタイミングはいつ?
代表ありきの関係からの資金提供では頭打ちになりますから、組織の成長と共に獲得資金を高めていくには、代表と担当者の協働のタイミングでボトムアップに切り替えていき、チーム体制になる時にはボトムアップでものごとが進んでいく状況にしていく必要があります。
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では、代表と担当者との協働のタイミングで、ボトムアップに変更していく時に大切になってくることは何でしょうか。
ボトムアップで大事になるのがファンドレイジングの目的
本書で述べられている目的(ミッション)と目標(ビジョン)を見ていきましょう。
目的(ミッション)
「何のためにサッカーをするのか?」という問いの答えはいろいろある。しかし、チームづくりを進める際には、選手全員が共通の意識を持つことがとても重要だ。どれほどサッカーのうまい選手が揃っていても、皆がベクトル(全体像)に向かっていなければ、チームは一つにまとまらない。「ミッション」と「ビジョン」は、チームの意識共有には欠かせない要素である。
「ミッション」は「使命、目的」のこと。「ボトムアップ」では、「ミッション」をどう定めるかが大きなポイントになる。
畑先生の指導する安芸南高校サッカー部では、「道徳心、倫理観をもった人間力を育成する」ことをミッションとして掲げている。
「サッカーがうまくなりたい」とか「Jリーガーになりたい」といったものでなく、さらに視野を広げ、「大人になっても世の中を一人でも生きていく力を、サッカーを通じて身につけていくこと」を意識して決められたものだ。
目標(ビジョン)
では、次に「ビジョン」とは何か。「ビジョン」は「目標」のことだ。ここで初めて、「日本一になりたい」、「県大会で優勝したい」といった具体的なものが出てくる。
これらを「ミッション」と考える人もいるが、それでは勝負に負けたときに先に進めない。勝ち負けを「ビジョン」とし、「人間力を育成する」ことを「ミッション」とすれば、勝負に負けても、そこから学び、人としての成長が期待できる。
活動に必要な300万円の資金を獲得するはボトムアップ理論においては「目標(ビジョン)」となります。
では目的である「何のためにファンドレイジングをするのか?」はどうでしょうか。
「活動をするための資金が欲しい」「マンスリーサポーター100人欲しい」でいいでしょうか?
トップダウンで運営されていて「インターハイに優勝して日本一になる」を目的としたチームに、ボトムアップで運営され「道徳心、倫理観をもった人間力を育成する」ことを目的にしたチームが勝ったことを考えると、この目的を考えることは、とても重要であることがわかります。
ボトムアップ体制でのコミュニケーションに必要な環境づくり
これまで代表から作業を引き継ぐといったトップダウンのかたちから、ボトムアップに変更していく時には、コミュニケーションが変わってきます。
「ボトムアップ」では、選手登録やスターティングメンバーはキャプテンを中心に子どもたちだけで話し合って決める。「どうして自分は出られないのか」と納得しない選手がいたら、全員で話し合い、納得いくまで議論する。(中略)自分たちで決めたメンバーで、自分たちが考えたゲームプラン、戦術で戦う。良い結果が得られないこともあるが、それも当然自分たちで受け止める。うまくいかなかったこともその課題と向き合えば、人間力を高める糧となるのだ。
上意下達ではなく、上も下もなく話し合い、何をしていくのかを決めていく必要があります。その話し合いの時に大切なのが、担当者も意見を持って代表や周りの人に言える環境を整えることです。
はっきり「返事」のできる環境をつくる
チームや組織づくりの中では、自分の意見をストレスなくはっきり言える環境を整えることが大切だ。上から押さえ付けられるようにものを言われると、萎縮してなかなか自分の意見を返せないこともある。「ボトムアップ」では、選手が主役。コーチや監督、先輩にも「いいえ」や「私はこう思います」といった意見が抵抗なく言えるような環境づくりを心掛けたい。ミーティングで自分たちの意見を言い合えてこそ、意味のある深い議論になるのだ。
話し合いにならず、深い議論にならない場合は、伴走支援者などの第三者の力を借りてでも、代表・担当者が議論を経て方針を決め、行動案を策定し、実行して、結果を見て改善をはかることを継続していくことで、ボトムアップが定着させていくことができます。
団体のファンドレイジングをチーム体制に移行するためのゴール像
ボトムアップ理論の畑喜美夫監督が述べられている、以下のような思いを代表さんが持ちながら、担当者やファンドレイジングチームメンバーに接することができるようになるのが、団体のファンドレイジングをチーム体制に移行するためのゴール像となります。
ボトムアップの主役は僕ではありません。選手が主役です。彼らが自分たちで話し合い、意思決定し、実践し、浮かび上がった新たな課題にまたみんなで取り組んでいく。”自主自立”のちからを磨きながら成長を続けていくのです。
ファンドレイジングをトップダウンからボトムアップへ変更していくには、第三者の力をかりるのが効果的です。代表主体のトップダウン体制から担当者やチーム主体のボトムアップ体制への移行の伴走支援をしておりますので、関心がある団体さんはホームページ、公式LINEからご連絡ください。
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