rakugaki_44「美術館へ行こう!【東京編】東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館(前編)
私には「美術鑑賞」という唯一の趣味があります。
その「趣味」にもブームがありまして、第一次ブームが1985年~1987年。第二次ブームが2009年~2018年。
第一次ブームの1987年から第二次ブームがはじまる2009年まで20年以上の月日が経っていますが、その間にも何回かは美術観賞をしています。
ただ「ブーム」の期間は、集中的に「美術館」に出かけているので「ブーム」なんですね。
このブログでは、私の大好きな「美術館」に出かけて、観賞した「美術展」の感想とともに、「美術館」の魅力が一緒に伝えられればなぁと思っています。
「SOMPO美術館」は東京都新宿区西新宿に、東郷青児のコレクションの提供を受け1976年に開設されました。
名称も何度も変更しており、「東郷青児美術館」→「安田火災青児美術館」→「損保ジャパン東郷青児美術館」→「東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館」と改名を重ね、2020年7月10日に新たに美術館施設を設け移転し「SOMPO美術館」と名称を変更しました。
今回、移転した先の「SOMPO美術館」を知りませんので、行かせていただいた最後の美術館の名称である「東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館」という長い名称を題名に採用させていただいています。
この美術館、日本がバブル期の1987年にゴッホの「ひまわり」を当時53億円で落札したことで話題となりました。
私の現存する記録の中で、現在まで「東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館」の企画展に出かけたのは11回です。
これは今まで鑑賞してきた「東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館」の感想ブログ(前編)となります。
1)2009年9/12-11/29「ベルギー王立美術館コレクション、ベルギー近代絵画のあゆみ」
「ベルギー王立美術館コレクション、ベルギー近代絵画のあゆみ」は11月29日までで今日は26日だから終わる直前ってところ?
入館が16:40になったので閉館の18時まで鑑賞しました。
想像してたより良かったです。
適度な展示数でしたし。
最初はひょっとしてベルギーの暗い空の風景画で終わるのかと心配しましたが。
近代への絵画の変遷も楽しめました。
最後に所蔵作品の美術の本にも載っているセザンヌの「りんごとナプキン」とゴッホの「ひまわり」を拝んで(しかしガラスごしで遠っ!)閉館のアナウンスを聞きながら、美術館を後にしました。
で、美術鑑賞の後はNewYoker’sCafeでコーヒーを飲んで帰路につきました。
2)2010年4/17-7/4「モーリス・ユトリロ展-パリを愛した孤独な画家」
なんだか目まぐるしく忙しい日々が続いてます。
先週あたり美術館に行こうと、密かに思っていた計画も頓挫しました。
お陰でかなり精神的に追いやられましたので、ここらで強行突破することに致しました。
新宿に向かうJRで移動中に急に大雨。
え?さっきまでめちゃ暑かったじゃん?
気持ちいい天気だったじゃん?
コレって、ゲリラゴウウ?
地球ピンチです。
取り敢えず地球のピンチは置いといて、じゃじゃ降りの雨を避けてなるべく地下から損保ジャパン東郷青児美術館へ。
昨年の11月に行った「ベルギー王立美術館コレクション、ベルギー近代絵画のあゆみ」以来ですから半年振りです。
今回のユトリロ展、非常に有名な画家にも拘わらず、学生時代から全く興味をひかれなかったため、全然ユトリロという人となりを知りませんでした。今観たら印象が変わるのかしらん?
そして、全作品日本初公開ですって。
なんだか得した気分。
絵は時代順に飾られていて、とても分かりやすかったです。
私生児としてフランスのパリで生まれたユトリロは、母がルノワールら著名な画家のモデルや自身も画家として活躍されてたため、一人孤独に育ったみたいです。
早くからアルコールに依存するようになり、アルコール依存症の治療のために、医者から絵筆を取るように奨められて描くようになりました。
しかし、アルコール中毒から抜け出さすために部屋に監禁されており、実際に風景を見て描くのではなく、写真の絵葉書を見ながら描いていたらしいです。
やがてユトリロは名声を得、お金を稼ぐようになるのですが、そのお金は母と結婚したユトリロより若い旦那さんの贅沢に使われたとのこと。
ユトリロも母の奨めで51歳で結婚しますが、相手の女性が60代の年上で、やはりユトリロの稼ぐお金で贅沢し、当のユトリロはやはりアルコールが抜けず監禁されていたそうです。
最初っから最後まで孤独な人。
画家として独学で成功したにも拘わらず、アルコールにしか頼れなかった孤独な人。
「モンマニーの時代」「白の時代」「色彩の時代」とユトリロの画業の変遷を追って、90余りの作品があるのですが、微塵もその人生からくる孤独感はありません。
後半になればなる程、色彩豊かになるのですが温かみは感じません。
実際に見て感じたのではなく、閉じ込められた部屋で、写真の絵葉書を見ながら描いていた時、いったい何を考え何を感じていたのでしょう?
やはり私はユトリロの絵から、何も感じ取る事が出来ず(正確には無機質な違和感を感じましたが)、理解しきれない自分自身も嫌になり、鬱とした気分で美術館を出ました。
雨はあがって晴れ空が広がっていました。
うん。
傘買わなくて良かった!
3)2012年7/7-8/26「ちひろ美術館コレクション ちひろと世界の絵本画家たち」
損保ジャパン東郷青児美術館は「モーリス・ユトリロ -パリを愛した孤独な画家-」展に行ったのが2010年の5月。
昨日訪れましたが、と言うことは2年以上振りでしょうか。
その時の日記を読み直すとゲリラゴオウがあったとか。
昨日も雨がパラパラ。。。
こんなにも有名な「いわさきちひろ」さん。
名前は存じていましたし絵本も見たことはありましたが、こうして絵をまじまじと観ることははじめて。
ただ、もう少し「いわさきちひろ」さんの人となりが伝わるような美術展だったら良かったかな。。。
ちひろさんは(1918-1974)「何年も読みつづけられる絵本」をつくろうと独自の絵本表現を追求し、生涯で約40冊の絵本を発表しました。
その多くは版を重ね続け、今も変わらずたくさんの人に愛され、親から子へ、子から孫へと読み継がれています。
本展では、ちひろ独自のさまざまな絵本の仕事を、原画約25点とアトリエの復元などで紹介しています。
同時に、世界で最初の絵本美術館であり、世界の優れた絵本画家の作品を収集している「ちひろ美術館」のコレクションから、赤羽末吉、長新太など馴染み深い日本の絵本画家やアジア、ヨーロッパ、アメリカ、アフリカなど25カ国52名の画家による絵本原画を加え、全体で約130点を展示しています。
入口のビデオで、黒柳徹子さんとの交友が紹介されているビデオを拝見してから中に入りました。
改めて何かコメントを入れることも必要のない程、認められている日本の第一線のイラストレーター。
しっかりした世界観+世界の無名?な画家さんたちの面白い絵画に触れ、とても面白い時間を過ごせました。
4)2012年9/8-11/11「アントワープ王立美術館所蔵 ジェームズ・アンソール ー写実と幻想の系譜ー 」
今日は損保ジャパン東郷青児美術館に行ってきました。
アントワープ王立美術館が改修するみたいですね。
そのお陰で、同館のジェームズ・アンソールの作品群が来日したという経緯があるみたいです。
ジェームズ・アンソール(1860~1949)は、ベルギー近代美術を代表する画家のひとりです。
私も仮面や骸骨など、奇妙で深層心理に訴えかけるような絵に見覚えがありました。
本展覧会は、素描を含む約50点のアンソール作品をフランドルや同時代の画家の作品と共に展示し、アンソールの芸術を生み出した写実と幻想の系譜をたどります。
この美術展、思った以上に面白かったです。
アンソールの絵が変わっていくさまが、とてもよく分かるんです。
はじめはアカデミックで古典的な絵。
ここにはルーベンスの絵も来ていました。
次に外光主義(それまで例え風景画であっても、画家のアトリエで制作するのが当たり前だったが、アトリエに縛られない写実主義)の影響。
この時期アンソールが描いた海の風景は、まさにそうです。
ここにはクールベの絵もありましたし、アンソールの愛好者だったペリクレス・パンタジスの「浜辺にて」がとても美しかったです。
ご婦人方の後ろ姿に、帆船のおもちゃで遊ぶ子供達。
ほのぼのする絵でした。
ところがまたアンソールの絵は、オディロン・ルドンの影響を受けてパレットを使った大胆な絵に変貌します。
かと思えば黒線で縁取った、今までのどれとも違う絵を描いています。
同時期に、全くテイストが違う絵を描いているんですね。
その後は、印象派を彷彿とさせるような人物画も描いています。
ここまで絵がころころ変わっていくのは影響を受けやすいのか、まだまだ自分の絵画を模索中だったんでしょうね。
「上向きの鼻の女性(画家の恋人)」や「青いショールの老婦人(画家の祖母)」など、身近な人を描いた人物画も素敵でした。
アンソール以外でもアルフレッド・ステヴァンスの「絶望的な女」は、生気を失った虚ろな目でこちらを見続ける女性にハッとします。
その女性が着ているドレスも凄く描き込んでいるんです。
アンリ・ド・ブラーケレールの「食事」も、背景から描き込みかたが尋常じゃないほどみっちり描き込んでいて、ただただ凄いなぁと。
そうそう、アブラハム・ヴァン・ダイクの作品もありましたよ。
あと、レオン・フレデリックの「ふたりのワロン地方の農家の子ども」は幼い女の子の姉妹かな?
不安そうな顔でこちらを見つめる幼い二人が、リアルで見入ってしまいました。
などなど、アンソール以外も楽しめました。
もちろん最後は、ようやくあのアンソールの独特の世界観に行き着きます。まさに ー写実と幻想の系譜ー でした!
あまり期待していなかっただけに、思わぬ贅沢な時間を過ごせて良かったです。
5)2012年11/17-12/24「損保ジャパン東郷青児美術館所蔵作品展 絵画をめぐる7つの迷宮 終わりのない探求」
前回のブリヂストン美術館もそうでしたが、今回は損保ジャパン東郷青児美術館の所蔵作品展です。
こちらも、今年最後の美術展となります。
普通の企画展では、最後の部屋で所蔵作品がチラチラっと拝見できるのですが、今回は最初の部屋から東郷青児作品で埋め尽くされていました。
余り東郷青児の作品をじっくり観たことがなかったのですが、今回はゆったり鑑賞させてもらいました。
思ったより画風が変わったりしていたのだな、という印象を持ちました。
今回の美術展は、芸術の世界も迷宮のようなものではないか?というコンセプトに基づいて構成されています。
最初の東郷青児の部屋は、「妖精の迷宮」という名前が付けられていました。
次が「人物の迷宮」。
ここにはパブロ・ピカソの「長いひげの裸体男性像」がありました。
何と14歳ぐらいの頃の作品で、もうアカデミックな画は完成の域に達していたことが分かります。
日本にあるピカソ作品の中で、一番初期の作品だそうです。
多くの日本の画家や、ゴッホ、ゴーギャン、セザンヌ、ルノワール、シャガール、モーリス・ドニなどお馴染みの巨匠たちの絵を見て回ります。
7つの迷宮を巡った後、最後の部屋は「もうひとつの迷宮」と名付けられており、グランマ・モーゼスの作品が8点飾られていました。
あの20世紀のアメリカに愛された、古き良きアメリカの牧歌的な絵画を鑑賞し、迷宮を後にすることにしました。
非日常的な、絵画という名の迷宮をさ迷えたひとときでした。
・・・後編に続く