180日後に去る私 83
週が開けて月曜日は、夏のボーナス支給日でした。この日の事はよく覚えています。
午前中の仕事を終えて、みんなで食事休憩に入る所で、Bさんが私に声をかけてきました。
「Iさん、昼からちょっとだけ付き合ってもらっていいですか?
何となくは分かってはると思うんですけど、退職の件でTさんに昼イチ話しに行こうと思ってます。あの人やったら話ならん可能性があるから、Iさんにもちょっと横で聞いといてもらいたいっていうのがあるんですけど、」
「…わかった。昼イチの段取りだけDさんに伝えてくるから、一緒に事務所上ろうか」
私はDさんに内容を伝えて、午後1番でBさんと工場長を訪ねました。
「Tさん、ちょっとBさんから話があるっていう事なんで、時間取ってもらっていいですか?僕も同席させてほしいんですけど」
「分かりました。とりあえず会議室使いましょうか、先入っててください。すぐ行きます」
この時、工場長の目を見てすぐに何の話か理解しているなと感じました。
もう最近はBさん、態度に出して反抗していましたから。
3人とも席について、Bさんが切り出します。
「退職したいんで、必要な手続きを進めてほしいです。」
「まあ、なんとなくは僕も感じてたんで…わかりました。とりあえず退職日を決めましょうか、Bさんの希望はあります?」
「別にいつでもいいです、何なら今月末でもいいです」
「今月って…もう2週間もないでしょ、せめて1ヶ月くらいはかかると思いますよ」
「そうですか、じゃあ1ヶ月くらいじゃなくて8月の何日なのか具体的に決めてください。僕はもう1日も居たくないんで、最短で」
「えらい勝手な言い方ですね」
「勝手はお互い様でしょ?とりあえず決まったら言ってください」
「わかりました。じゃあそれで」
席を立つように促す工場長。Bさんが立ち上がった時、私は口を挟みました。
「ちょっと待ってください、これで終わりですか?Tさんはなんで退職理由を聞かないんです?それが解らないと、これからもどんどん人が辞めていきますよ」
まったく…辞めるにはそれなりの理由があるでしょ。いつもそれをちゃんと聞かないから、同じ事を繰り返すんですよ、この会社は。
もうこの人には何も任せられない。
同席して良かったという気持ちと怒りが、同時に沸き起こりました。
会社を去るまで
あと98日