180日後に去る私 89

クレーンと玉掛けの資格を取りに行った話をします。
フォークリフトに引き続き私とDさんで講習に参加した訳ですが…
もうコロナ禍でしたので、1つのテーブルにつき2人まで、教室のドアも窓も全開で座学を受けたのを覚えています。


大体20人くらいだったでしょうか?
別の会社であろう凄く若い人や女性も居て、老若男女問わずといった感じでした。
講師の方は40歳過ぎ、50過ぎの方と2人がついてくれました。A講師、B講師とします。


まずはクレーンの座学と実技をA講師から教えて頂きました。
凄く真面目な方というイメージでしたし、実際その通りの方でした。
座学の中でと、あまり砕けた話はしませんでしたが、ひとつだけ物凄く印象に残った話があります。


A講師がまだ20代前半の頃、20数年前のお話しで、資格を取った後に某県の田舎で仕事をしていた時のこと。
山から山へケーブルクレーンを使って資材を運ぶという仕事に就いたそうです。
(ロープウェイをイメージしてください)


その作業中に起きた事故、あれが今でも忘れられないと言っていました。
ああいう現場だと、クレーンを操作する人も運ぶ先が遠いので見えませんよね。
そういう場合は無線などを使って、合図をする人、操作を指示する人、実際に動かす人、などチームプレーを行なっている訳です。


専用のワイヤー、または器具を使って、人の手で積荷をクレーンに引っ掛けます(または外します)
この玉掛け作業がまだ完了していないのに、合図をしてしまったのです。
積荷の影に人が隠れているのを、合図者が見えてなかったんでしょう。


A講師がいた場所からは、角度的に見えていたらしいです。
無線を持ってないA講師は

「アカン!まだ人が残ってる!」

叫び声を上げる暇すらなく、積荷に人がぶら下がるような格好でクレーンが動き出し…
その作業員の方は足をバタバタさせながら、強風と揺れに耐えきれず、落下したそうです。
その方はA講師と同じ会社の同僚で、まだ新婚だったそうです。


この話は、まるで自分がこの目で見たかの様に覚えています。
話されている時のA講師の目。
何回思い出してもやりきれないと言った時の目が、私も忘れられそうにありません。


会社を去るまで
あと92日

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