180日後に去る私 5

入社の際に、必要書類を用意して会社に提出するのは普通だと思うのですが
「最終学歴の卒業証明書の提出」
については、おや?と思いました。

今までの会社では求められた事がないし、大きな会社だとあるのかも知れませんが、小さくてもキッチリした会社に入ったんだなーと、この時は思った程度でした。

しかし、この決まりが後々とある笑い話に繋がるのですが…それは時系列を追って、お伝えしたいと思います。

皆さまも薄々勘づいていらっしゃる通りですが、転職先に選んだのは、社員20名程の小規模企業でした。配属先である工場に限るならば、零細企業と呼んだ方がイメージし易いと思います。

会社の大小に全く拘りはなかったのですが、前の会社が数百名規模だったので、今度は一緒に働く仲間たちの名前がすぐ覚えられてラクだなぁ…と呑気に構えていました。

T係長より面接の時からずっと言われていたのは
「この工場を変えてくれる人が欲しい。一緒に変えていきたい」
でした。

弊社は、とある薬品の製造と販売をしている会社なのですが、私が入社した時は自社で工場を持ち始めて2年目。
人が定着せず、マニュアルも充分では無く、工場内のルールすら整備されていない時期だったようです。

簡単に言えば、お金がある企業が町工場を買って経営し始めた、と思ってください。
本社と数ヶ所の営業所があり、営業ノウハウはあるけれど、工場経営についてはまだまだ手探りの状態。


私の前職は内装職人で、たくさんの後輩達に仕事を教えてきた経験がありました。力仕事や身体の動かし方、作業中の危険予知から工具の使い方まで一通りの事は理解していました。
実務の面でも体力の面でも、ほとんど不安はありませんでしたし、仕事の内容は単純なものだと聞いていました。


あとは人間関係。本当にそれだと思っていました。小さな職場であれば、毎日全員と顔を合わせる事になります。まさに死活問題です。
その中でも1人、初日に仕事を教えてくれた先輩であるKさんとの出会いが衝撃的でした。


「なんでこんな変な会社きたん?やめといたら良かったのに…。そんなに気合い入れんでも、仕事なんてダラダラ適当にやっといたらええよ。時間なったら帰るだけやし」


メモを片手に質問する私に対しての返答としてはあまりにそぐわない、会社の信用すらも失墜させかねない程の破壊力でした。

なるほど、工場長(T係長)が手を焼くのも無理はないな…
ちょっとこれは…
想像以上に難しい仕事かもしれない…


予想だにしていなかった、波乱の幕開けでした。


会社を去るまで
あと176日

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?