180日後に去る私 38

Oさんに仕事を教え始めて1週間ほど過ぎた頃、徐々にですが、ポツリポツリと以前のように話をしてくれるようになってきました。ちょっと安心し始めた頃に、また一悶着がありました。


もう間もなく、子供が産まれる予定だったので、出来るだけ定時で帰らせてあげて奥さんの側にいれるように、私とOさんの間で調整していました。
子供が産まれる予定日に、工場長へ
「陣痛が始まったので、今日は休ませてください」
という電話があったそうです。


私は全く構わないですし、それが当たり前と思ったのですが、どうやら工場長は違うようでした。
手が空くと私の所に来て、コソコソと様子を窺いにきました。

「Iさん、Oくんのことどう思う?普通子ども産まれるいうても、仕事休むもんなんかなー」

「いやーどうでしょう。僕らの時代ではあまりなかったですけど…今は産休取るのが普通ですからねぇ、良いと思いますよ」

そう答えましたが、私も子供はいませんので親になる時の気持ちは、よくわからないというのが本音です。良いも悪いも答えようがないのです。
かくいう工場長も、この時まだ独身だったので…経験した事もないのですから、放っておいてあげたら良いでしょう?というのが正直な気持ちでした。


この時に限らず後々になっても、例えば用事があるので定時で帰りますという社員に対して
「平日に予定って何があるのん?ていうか平日に予定入れるのが、理解できへん」
とこぼしてきました。


誰しも自分の価値観で決めつけてしまうのは、わかります。
しかし、ちょっとこの人は自分本位すぎるかなと思う事が数多くありました。
管理者ならば、もっと中立に時代ごとの価値観を受け入れてほしいものです。


工場長自身も若かったですが
「僕が会社入った時は〜」
「昔はこういうのが当たり前で〜」
「社会人としての常識が〜」
古くさい事をよく言う人でした。

現在でもこの気持ちは変わらないですが、
今の若い人達(平成生まれの方)が将来を作っていく世代になってきているのですから…
古くさい常識や、悪き風習はやめて頂きたい。


若い人達が私達に学ぶことはもちろんあるんでしょうが、その逆も大いにあるはずです。
Oさんについても、子供が産まれるのは喜ばしい事で、特に責められる謂れはない。
仲間として会社全体で、素直に祝福すれば良いのに…何が気に入らないんだろう?


仕事を簡単に休むなって言いたいんでしょうが、出産も簡単ではない筈ですので…サポートして当たり前というのを認められない会社は、これからの時代に取り残されます。

言ってもわからないでしょうから、言わなかったですが。
つくづく器の小さい人だな…とまた私の中で、工場長への信頼が落ちていきました。


会社を去るまで
あと143日

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