【旅日記】厳かという言葉がぴったりな弥彦神社(新潟県/彌彦〜新潟)
新潟県でパワースポットとして知られる場所、弥彦神社。県内では「おやひこさま」と呼ばれて親しまれているそうだ。香川の「こんぴらさん」みたいだ。〇〇さん、〇〇さまって各所にあるもんなんだなぁと思った。
弥彦駅には10時頃に到着した。思ったよりも混み合っておらず、落ち着いて観光できそうな雰囲気だ。弥彦神社までの道をえっちらおっちら歩いていく。初めのほうこそ、新しく作られた観光向けの建物がちらほら見えるものの、先に進んでいくと温泉旅館や釜飯屋さんなどが立ち並んでいる。昔の趣を残した良い場所である。
弥彦神社の前まで来ると、大きな鳥居がドーンと構えている。その巨大な鳥居を支える真ん中の柱は宙に浮いている。どこかのツアー客の観光ガイドの人の解説を盗み聞いたところ、どうやら鳥居が浮いているのは日本でここだけのようだ。どうして宙に浮かせたのか気になる。寸法を間違えて昔の人が「まっ、いいか!」って考えていたなら笑える(後々調べたところ、柱が腐らないようにするためだそうだ)
鳥居をくぐって参道をゆっくりと歩いていく。小川がコポコポと流れる音、小鳥がチュンチュンとさえずる音が聞こえる。とても穏やかな場所だ。パワースポットと言われるのもわかる気がする。そんな雰囲気を自然と醸し出している空間だ。
本堂まで来ると、何やら門の前で人が詰まっている。なんでかなぁと背伸びして覗いてみると、参拝者で列をなしているとわかった。お参りしようとすると何分かかるか分からなかったので、並ぶのは諦めた。代わりに周りからその様子を写真で撮ることにした。
神様もこんなにたくさんの人から願い事をされても捌ききれないんじゃないだろうか。私は、特にお願いごとを思いつかなかったので、「お疲れ様です」と心のなかでつぶやいてその場を後にした。鳥居のところまで戻ってきたが、ここまでで一人として外国人観光客は見当たらなかった。人も少なめで思いの外穴場なのかもしれない。
神社を後にして、時間は11時。昼前なので、ちょっと時間は早いがおひるにすることにした。店は事前にチェックしていた「割烹 釜飯 弥彦」。店前には人は並んでいなかったが、入口の戸をガラガラと開くと、開店したばかりにも関わらず席はほとんど埋まっていた。今回は運よく座敷の席に座ることができた。帰る頃には、あとから来るお客さんで満員になっていたので、早めに来て正解だった。席につくと、夏限定の鮎の釜飯をおすすめされたので、それを注文することにした。
30分くらいして、注文した釜飯が出てきた。釜飯屋さんにしては結構早く出てきた気がする。蓋を開けると、湯気がほわぁ〜と立ちのぼり、鮎が2匹、顔を覗かせる。しゃもじで混ぜてお茶碗によそう。具は、たけのこと山菜、しいたけが入っていた。濃すぎることのない絶妙な味加減で、たけのこと山菜の食感が楽しい。鮎は骨まで食べれる。途中で漬物と一緒に食べるとまた味が変化して美味しい。2200円とちょっとお高めだが、来た甲斐があったというものだ。
腹ごしらえを済ませて、弥彦駅に向かう。ちょうど電車が行ってしまったタイミングだったので、読書でもしながら駅構内で時間を潰すことにした。1時間近くした後、弥彦駅から吉田駅行きの電車に乗った。
10分しないくらいで電車が吉田駅に着いた。ホームに降りたあと、新潟方面に行くために乗り継ぐ電車を探した。だが、見つからない。「まずい、まずい。乗り継ぐ電車はどこだろう」と焦りながら、周りをキョロキョロした。乗り過ごすと次来る電車は30分以上待つことになる。乗り継ぐ電車が見当たらず、焦りばかりがつのってくる。ふと、ここまで乗ってきた電車の行き先を見たら、新潟行きに変わっているではないか。つまり、そのまま乗っていればよかったのである。なんで最初から「新潟行き」になってないんだろう。紛らわしい…。
新潟駅の一つ手前、白山駅で降りた。マリンピア日本海という水族館に行きがてら、「ジェラテリア Popolo」というジェラート屋に寄ることにした。徒歩だったのだが、思いのほか距離があって汗が額に滲む。やっとの思いでPopoloに着いて、ジェラートを食べた時は生き返る思いだった。普通に美味しい。その足で水族館に向かったのだが、次々と水族館に向かう車たちを見て入る気が失せたので、素通りして新潟市内に向かうことにした。
新潟市内に向かう道すがら、戦前を思わせる建物や洋風の建物がチラホラと見えた。大きなアーケード街も健在で、横道に入ると花街の雰囲気を漂わせる通りもあった。商店街の近くで路上ライブをやっている人たちがいて、人が大勢集まっていた。活気がある。時間があればじっくり歩き回りたかったが、宿でのんびりしたかったので、足早に新潟駅に向かう。途中、萬代橋という立派で巨大な橋を渡っていく。なにやら歴史のありそうな橋で、橋からの眺めも良い。橋を渡ると、そこはもう高層ビル群が立ち並ぶ都会のそれだった。
新潟駅に至るまでの大通りは、片側が3車線くらいあり、めちゃめちゃ広い。北海道の旭川でも同じくらいの大通りをみたことがある。これだけでも、新潟が大都市であることがうかがい知れる。
新潟駅は工事中で迷路のようになっていて、どこに何があるかわかりにくい。次の電車まで30分は時間があったので、ぐるぐる迷路をさまよって時間を潰した。そうこうしているうちに、電車の時間が近づいてきて、電車に乗って今日泊まる宿である「湯田上温泉 ホテル小柳」に向かうことにした。信越本線に乗って田上駅まで行く。こころなしか、電車の中での読書率が高い。紙の本だ。東京で、みんなが黒い板切れを握りしめてじっと眺めている異様な光景とは対照的である。
田上駅から宿まで徒歩で30分弱。湯田上温泉はこじんまりとした温泉街のようで、住宅街を抜けて坂道を登っていくが、温泉街という雰囲気を感じない。かと言って、寂れた感じもしない。そして、その坂道が長いのだ。まだつかない。Google Map を見ながら、あと1km、あと500m、とまだかまだかと歩を進めていく。ようやく、宿の入口が見えたときはホッとした。
宿の入口には巨大な暖簾がかかっていて、雰囲気の良さそうな場所だ。また、梅雨のシーズンだからか、入口の両脇にはアジサイの花が並んでいた。館内は適度にリフォームされていて、古さを感じさせない。部屋の扉はリフォーム前からのもので一瞬不安を覚えたが、扉を開くと室内はきれいで間接照明もあって良い雰囲気だ。露天風呂は6階にあって、風呂からの眺めが良い。そして、ご飯がうまい。これは重要だ。
翌朝、宿をあとにして、燕三条駅に向かう。あとは帰るだけなのだが、せっかくなので「燕三条地場産業振興センター」に立ち寄ることにした。ここでは燕三条で生産された金物が集結しており、購入することができる。スプーンと靴べらという、よくわからない組み合わせを購入した。たまたまそれらが欲しかったのだ。
新幹線に乗る前に腹ごしらえを、と思い、燕三条の近くにある蕎麦屋に行った。「小嶋屋総本店 燕三条店」という店だ。11時開店なのに、早くも続々と来店者であろうクルマが駐車場に止まっている。車のナンバーは新潟県内が多く、地元でも人気なのがうかがえる。これは期待できる。天ざるそばを注文したが、期待した通りおいしい。新潟の蕎麦は「へぎそば」といってつなぎにフノリが使われているはずなのだが、緑っぽい色はしていなかった。だが、これが本来の色なのだろう。やたらみどりみどりしている蕎麦は、着色しているに違いない。
観光地をたくさん巡ったわけではないが、充実した旅になった気がする。まだ周りきれていないところもあるので、また別の機会に新潟には行きたいものだ。