人生をかけられる時間つぶしを探そう
就職活動が怖い。就職活動の先にいる人間が怖い。もし仕事が見つかったとしても、そこで出会う人間との関係がいつものようにうまく行かないのではないか、うまく行くはずがない、と思ってしまう。
世間では生きるためには働かなくてはならないという。生きることにさほど喜びを見いだせない私にとって「生きるため」という理由は労働への意欲を高めない。
「少しでもいいから稼ごうとしないのはなぜなの。それに腹が立つ」「ずっと家にいられると嫌になる」妻のいうことは間違ってはいない。私が確実に非常識なのだ。
私は結婚などしてはいけないタイプの人間だったのかも知れないと思うときがある。人が怖いということを妻には何度も言葉を尽くして伝えてきたつもりだが理解を得るのは無理なようだ。
私にとって生きるとは死ぬまでの時間つぶしだ。
正確に言えば生きいてるあいだ常に感じている不安つぶし、恐怖つぶしだ。
二十四時間基底音のように私の無意識をコントロールする不安と恐怖を忘れるための努力が私にとって生きるということだ。私は常に熱中できるものを探し続ける。今、ここを忘れるために。
稼がない自分に対して我慢の限界がきた。
もちろん金銭の限界もきている。
何より家にいるのが辛い。暑い暑いといいながら家にいる五〇歳のおっさんの存在を感じながらテレワークする妻の気持ちを想像すると、私は家にいるのがたまらなく苦しい。
人が怖いのなら、人となるべく関わらない仕事をすればよいのだ。ラッキなーことに一人でコツコツ何かをするのは好きだ。というより消去法でそれしか能動的になれない。どちらにしろ続けられる仕事を選ぶのなら、この性格に合った仕事を探すしかない。
私にぴったりの仕事をあれこれ考えてみたら農業に行き着く。人間が怖い私だから一人で畑を耕して生計を立てられたら最高だ。過去に畑を借りて農作業の真似事をした時期があった。土を耕し、種を蒔き、水をやり、草を抜き、収穫する。その作業の全てに我を忘れて取り組めた。畑仕事中に死ねたら最高だと思えるくらいの価値を農作業には見出していたのだ。
私は就農について調べはじめた。
方法として現実的なのは独立希望者を積極的に採用している農業法人に就職して、仕事をしながら農業を学び数年経ってから独立するというものだ。ただ専門家に相談してみると五〇歳で法人に採用というのは厳しい面もあるらしい。
または雇用への移行の可能性もある農家でインターン体験をしてみるという手もあるようだ。しかしこれも五〇歳という年齢が微妙なところのようだ。
補助金をもらいながら農業実習をさせてもらえる自治体もあるようだが、これもまた四十五歳くらいまでが上限のところが多い。
調べれば調べるほど困難な条件ではある。だが俄然やる気がわいてきた。良いのか悪いのか分からないが、これが私の特徴だ。やりたいと思ったらとにかく動きはじめる。
勿論、過去の失敗から後悔する可能性があるのはよく理解している。しかしそれを気にしていたのでは何もできない。とにかく農業をやるなら年齢の問題として悠長に構えている時間はないのだ。
何より、時間が経てばトーンダウンしてしまう恐れもある。
まずは一人での移住だ。妻は今の拠点で暮らしてもらい、独立を視野に入れた就農が可能な土地に私だけが移住する。何年かして農業で生計が立てられるようになったらそこからの生活の形を妻と話し合えばいい。
結果はどうなるかわからない。諦める可能性もある。飽きる可能性もある。就農先が見つからない可能性だってもちろんあるし、この可能性が一番高い。どうであれ、人が怖いにも関わらず就農に向けてなら動けているのだからその気持ちは大切にしたい。
ちなみに私は妻と離婚したいとは全く思っていない。私が農業で一人分の生活だけでも補える程度の稼ぎを確立できたら、何年後であっても一緒に暮らしたい。
妻がテレワークをしている家に無職の私がずっといるという今のままの関係を続けていたのでは、それでなくても卑屈な私がもっと卑屈になってしまい、それこそ妻と別れるという結末が訪れるかもしれないのだ。それをこそ避けねばならない。
最高の時間つぶしを見つける。そうすれば何とか生き続けられるような気がするし、妻に少しでも恩返しができるような気もする。
さて、この計画をどうやって妻に伝えるかだ。
すんなりはいかないだろう。一山も二山もありそうな気がしている。
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本日はこれにてご無礼いたします!
みなさん熱中症に気をつけてくださいね。
ごきげんよー
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