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ロートレック展開催中!ゆるキャラ、動物、匠の技!ロートレックはお茶目でカワイイ!

東京・西新宿のSOMPO美術館で開催中の「フィロス・コレクション ロートレック展 時をつかむ線」(2024.6/22~9/23)連日大勢のお客様にご来場いただいています。きょうは本展でしか見られないマニアックな楽しみ方をご紹介。


▶ロートレックのお茶目キャラ全開!

鉛筆、ペン、木炭などで色を使わずに描かれる素描(デッサン)は画家の基本。画家が何を見てどうとらえたかが直に伝わります。ロートレックは生涯に約5000点の素描を描いたとされ、最初に描いた7歳頃から36歳の生涯を閉じるまで、単純に計算しても毎日1点は描いていたことになります。
 本展には45点の素描作品が出展されていまが、中には両面作品やシリーズ作品もあり、それぞれを1点と数えれば62点。馬や動物の一瞬の動きをとらえたものから、人々の内面を映し出したものまで、実に様々です。1枚の紙にいくつものモティーフが描かれ、画家が試行錯誤した過程が感じられたり、紙の隅にいたずら書きのようにささっと描かれていたり。。。ゆるキャラと言えるものもあってロートレックのお茶目ぶりが垣間見えます。

出展作品にある “ゆるキャラ(?)“ たち。会場で見つけてくださいね

▶動物はじっとしていてくれない

ロートレックは最初、動物の画家として知られるルネ・プランストーに師事します。その影響もあってか動物をモティーフにした作品も多く見られますが、特に馬や騎兵を描いた作品が多いのは、伯爵家の出身で身近にそうした場面が多かったこと、そして彼自身、身体的な理由で馬に乗れなかったことも関係していると言われています。
 当然のことながら馬や動物はモデルとしてじっとしていてはくれません。その動きや表情を正確に写し取る観察眼と技量が必要とされ、ロートレックが『博物誌』の挿絵として描いた一連の動物の作品はその真骨頂ともいえるでしょう。

ジュール・ルナール著《博物誌》(1897年)
(左より)ブタ、犬、ネズミ

▶数本の線にこそ・・・

そして個人的にすごいと思うのは、少ない線による表現。“描きこまれた” 作品の真逆を行く、“わずかな本数の線” による描写は、ロートレックのモティーフの本質を見抜く力と一瞬をとらえる技!これぞまさに展覧会のサブタイトルでもある「時をつかむ線」なのです。

わずかな線で表現する力はすごい!

▶展覧会構成のワケ

展覧会の構成を考える時、前半に展覧会の目玉的な代表作を置き(いわゆる “象徴展示”、“つかみ” というヤツです)、盛り上げることがよくあります。そして色がついていない素描はどうしても地味な印象になりがちなので、展覧会中盤に置き、なんとなく観る側もさーっとやり過ごしてしまいがちです。
 
 一方で今回の展覧会は5章構成で、
第1章 素描
第2章 ロートレックの世界(キャバレや劇場などの歌手やダンサー)
第3章 出版(書籍の挿絵など)
第4章 ポスター
第5章 私的生活と晩年(直筆の書簡や友人のためのプライベートな作品など)

・・・と、最も派手なポスターの章は後半において、冒頭に素描をまとめて展示するという、チャレンジングな構成になっているのです。数々の素描作品でロートレックが試行錯誤をした線の一本一本、画家がとらえようとしたものを解釈した上でリトグラフ作品やポスターを見ると、《ディヴァン・ジャポネ》(1893年)の女性の腰の曲線や、《『ラ・ルヴュ・ブランシュ』誌のためのポスター》(1895年)でスケートをする女性が体を斜めにした構図など、ロートレックの線がより意味を持って、お馴染みの作品も違って見えてきます。ぜひ会場でじっくり感じて、味わってください。

左:《ディヴァン・ジャポネ》(1893年)
右:《『ラ・ルヴュ・ブランシュ』誌のためのポスター》(1895年)

「フィロス・コレクション ロートレック展 時をつかむ線」は9月23日(月・休)まで東京・新宿のSOMPO美術館で、その後10月からは札幌芸術の森美術館、来年(2025年)1月からは松本市美術館に巡回します。 


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