アメリカ印象派展制作中!④美額の美学
来年(2024年)アメリカ・ウスター美術館所蔵のアメリカ印象派の展覧会「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」が開催されます。今回は閑話休題。額縁のお話。
▶フェルメール《レースを編む女》の額は元は鏡のフレーム
絵画を囲む額縁は作品と密接な関係を持っていて、時代や地域によって様式やデザインが異なります。15世紀後期から16世紀にかけては建築装飾の一部としてデザインされ、17世紀オランダでは簡素な黒檀貼り仕上げ、フランスの「ルイ様式」にはバロックとロココ様式があり「壁の家具」とも言われました。職人の手によるアンティークの額は、それ自体が芸術作品です。
以前「ルーヴル美術館展―17世紀ヨーロッパ絵画―」では、レンブラントやフェルメールの作品をあえて額縁ごとデザインしビジュアル展開したことがありました。これが意外と新鮮で、「作品を額ごと鑑賞する」というちょっとした当たり前の気づきがありました。
日本でも圧倒的な人気を誇るオランダの画家、ヨハネス・フェルメールの《レースを編む女》は24cmx21cmの小さな宝石のような傑作。その額は元は鏡のフレームだったそうです。いつの時代にこの額にはめられたのかは定かではありませんが、額には作品のオーナーの好みが反映されているケースがよくあります。
▶作品は額とともに完成する
19世紀半ばになると、それまで職人が一つ一つ木材を彫って金箔を施していた額に代わり、機械で成型した樹脂に金色の塗料を塗ったものが大量生産されるようになります。ロセッティやムーアら、イギリスのラファエル前派の画家たちはこれを嘆き、自ら額をデザインしました。そこには「作品は額があって完成する。自分の作品に最もふさわしい額を作れるのは自分だ」という信念が感じられます。
作品の額が、その時々の所蔵家の好みによって改変されることは珍しくありません。アルバート・ムーアの作品、《花のための習作》(1881 年頃)は、元々は画家がデザインした額に入っていたと考えられていますが、その後コレクターが額を変え、後にハーバード美術館に寄贈されました。美術館では昨年、元のデザインに基づいて額を復元し、作品を入れ直しました。資料を集め、150年前のデザインを復元する作業からは、関係者の並々ならぬ情熱と”額縁愛”が伺えます。(詳しくはこちら↓)
▶画家自らがデザインした額に注目
来年(2024年)1月開催の「印象派 モネからアメリカへ」にも画家のデザインによる額に入った作品が出展されます。中にはアール・ヌーヴォーの額も。。。印象派とアール・ヌーヴォー・・・すぐには結びつきませんが、1870年代にフランスで生まれた印象派がアメリカに渡り発展したその時期は、まさに19世紀末から20世紀初頭のアール・ヌーヴォーと重なります。絵画と装飾、様式の微妙なブレンド。ぜひ会場で額にも注目してみてください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?