2か月半で44本の脚本を書いてみたはなし
皆様こんにちは。今井夢子です。
じゅわじゅわの梅雨時期ですが、いかがお過ごしですか?
私は2年ぶりの日本の梅雨にやや体力を奪われつつ、脱水機能の壊れてしまった洗濯機を前に茫然としながら、びっちゃびちゃの洗濯物と闘った本日、このnoteを書いております。
さて。
3月末にTwitterでぽろりと「いろんな俳優にstayhomeで演じられる一人芝居の脚本を当て書きして、俳優の決めた値段で有料配信する」というアイデアを呟いたことから始まった、#stayhome一人芝居企画。
ついに、ついに、ついに先日・・・!
全受注44本の一人芝居脚本を、書き終えました!
おーーーめーーーーーでーーーーーとーーーーおおおおおおお!!!
#stayhome一人芝居を始めた経緯と 、作品一覧はこちら↓
4月の頭から書き始めて、約2か月半で44本。
我ながらなかなか意味不明のペースでありました。
たくさんの生みの喜びと、生みの苦しみがありました。
というわけで今日は、stayhome一人芝居執筆奮闘記ということで、執筆期間の悲喜こもごもを振り返ってみたいと思います。
◎1~10本目ぐらいまでの心境◎
完全なるナチュラルハイ状態で、1日1本書きまくる。
ツイッターの元ツイートもバズり気味だったし、参加希望の方とのビデオ電話でのヒアリングも楽しく、自分も新しいチャレンジに浮かれていたため、「書ける・・・書けるぞ・・・どんどん書けるぞおー!」という、背中から羽根の形をした炎が燃え上がっているようなテンションが続く。
ちなみにこのころは帰国後すぐだったので、私も2週間隔離をされなければならず、四谷三丁目のものすごく居心地のいいairbnbに泊っており、しかもその後は実家に戻ったため、生活環境が良く、質の良い集中が出来たというのも良かった。
ダイアローグ設定(「胸に映る穢れ」「ハッピーエンド~旅する手首~」)だけでなく、手紙を読むスタイル(「タクロウからの手紙」)、落語調(「地獄で産婆」)、観客へ語るスタイル(「ゆるしのおと」)朗読劇(「夜空を詰め込んだ小説家の習作」)など、いろんなジャンルにも挑戦。
私の大好きな、こじらせすぎて一人で暴走する女子も登場(「反芻サンデー」)。
と、なかなかバリエーションに富んだラインナップ。なにせ背中に炎の羽根を背負っていたので。
◎10本目~20本目あたりの停滞◎
引っ越しをするタイミングで生活上のTODOが増え、脳内が煩雑になるとともに、第一次停滞期を迎える。
「昨日書けたはずの一本が・・・書けない・・・!」
ちょいと前まで無敵の羽根を背負っていたはずの私、早速の超ピンチを感じる。
「待て、まだ始まったばかりなのに・・・なんならまだ受注し続けているのに・・・このまま全然書けなくなってしまったらどうしよう・・・!」
という不安に怯える。ぷるぷるぷる。
そんなときに私を救ってくれたのは、今回の企画でも音楽を書いてくださっている、私の作品には欠かせない音楽家の高崎さんが5年ぐらい前だかに言っていた言葉。
「今はいくらでも書けると思っても、すぐに書けなくなるよ。そこからだよ。そこから、カピカピに乾いた雑巾をぎゅうぎゅう絞って、どうにか絞り出した一滴のしずくを積み重ねて書くんだよ」
これはもう、全てのゼロからイチを生み出すアーティストの皆さんに共有したい言葉!!!
みんなカピカピなのだ、その中で絞って絞って頑張っているんだから、私だって絞ろうじゃないか!という勇気が出ます。
日々、苦しい時間にはその言葉を思い出して、頭をひねる。雑巾絞る。
出てきた一滴を見て、「ほんとに雑巾の搾り汁じゃねえかー!宝石出てこいやー!」と荒れ狂うときも時々。
実際に画面を画面として使用した作品(「最初で最後の『またね』のキス」「カウントダウン」「天地創造スタッフミーティング」など)、ミュージカル(「Witch Audition」「捨てないでハッピーキューティードール」)、二人芝居(「理由なき反抗」)なども生まれる。
もはや小説も書く(「はこ、から、こつん」)。
参加表明してくださった俳優さんたちの個性に救われたような部分もありました。
そして、私はやっぱり上手に生きられない人の話を書きたいのだな、と再認識する。
上手に生きられない人が上手に生きられない人に手を差し伸べる「シュレディンガーのパン屋さん」や、
上手に生きられない人の生きている世界に寄り添おうとする「この窓から見下ろす、真実」や、
上手に生きられない人を真っすぐに励ます「召し上がれ劇場でいただきます」は、個人的にとても、私らしいなと感じています。
なぜなら私が、上手に生きられないタイプだからです。
皆がぱっと割り切れることがいつまでも納得できなかったり、一回躓いたときに立ち直るのに時間がかかったり、他所の世界に逃げたりとかね。
この世界になんと、上手に生きられる人の多いことか。時々、羨ましい。とも思う。
だけど、もしかして皆、上手に生きられるふりをしているだけかもしれないし、もっと言うと、自分は上手に生きられると思いこんでいるだけかもしれない。上手に生きる方がいいと、されている社会だから。
上手に生きられる人の話は、ビジネス本で読めばいい。
物語の中でぐらい、上手に生きられないことが、祝福を受けてほしい。
上手に生きられない全ての人に、寄り添う物語が書けたらいいなと、いつも思うのです。
などと、なんとなく、自分の中に道筋が見えたような気がしたのも束の間。
そんなものはすぐに打ち砕かれるのであります。
◎20~30本目ぐらいの混乱◎
このあたりで、自分の言葉に猛烈に猛烈に猛烈に猛烈に
飽きる!!!!!
うああ、自分自身に飽きるというのは結構大きなダメージです。混乱しました。書くのは楽しいし、書きたい!待ってくれている俳優たちのためにどんどん進めたい!なんならアイデアも持っている・・・のだが、とにかく自分がパソコンに打ち込んだ言葉を見ると、
もうカレーは結構です、うっぷ・・・という心持ちになってしまう。
それはもう食べましたよ・・・と!
冷麺とか、BLTサンドとか、いくらのお寿司などが食べたいですーーー!という心持になる。(実際は毎日スルメを食べていた。思考するときはスルメに限ります)
そんな中で生まれたこの時期の作品は、ちょっとこんなの出しちゃって大丈夫?・・・ドキドキ・・・と感じるような、精神的にグロめな話(「ブラッディ・スペッツァティーノ」です)、設定的にグロめな話(「その檻」です)、はたまた言葉の使い方をちょっと変えてみたり(「ころころことば」)、など、自分の中のセオリーを壊そうといろいろ試行錯誤の伺える尖ったものが多いです。俳優さんが、そういうものもドライブしてくれそうな方が多かったので助かった。
この辺の時期は、別件でも、短編の執筆に長編の直しに、とバタバタしていたので、マジで記憶がおぼろげ。何か約束をした方などいたら、こそっと教えてください。
◎30本目ぐらい~44本目までの乱気流◎
さて、このあたりから近所の友人が経営するスタジオで、毎朝ビリーズブートキャンプをやり始める。頭の回転を運動によってなんとか引き起こそうとする、私はつくづくフィジカル派です。
家を出るとやはり活性化されるらしく、移動中にアイデアを思いつくこと多々。
ブートキャンプ後に2本プロットを書き、カフェに移動して2本脚本に仕上げ、次の日に見直して送る。というイイ感じのサイクルが生まれはじめたのですが、2本書くと次の日は使い物にならない、ということもわかりました。
まだ情報公開していないものもあるのですが、この時期は乱気流で、これは自分もちょっと演じる側で挑戦してみたいな、と思うような、チャレンジングなものが多く生まれました。
「欲望という名の電車」、「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」、「曽根崎心中」など、有名な作品からインスパイアされて書いたものも結構ありました。
しかし一方で、ボツにしたアイデアもいっぱいあるのがこの時期だったりします。アングラを書こうと思って諦めたり、誘拐犯と被害者の愛の話とか(普通に二人芝居にしたくなってボツ)、石に恋する女の話とか(ずっと黙って石を見ているだけだったのでボツ)。
そうして、私の44本は、どうにかこうにか産声をあげることが出来たのでした。
◎みんなやりたいんだね、ということ◎
2か月半、ずーーーーっと脚本のことばっかり考えていました。
思っていたよりずっと大変でした。全てを投げ出して、昼からビールを飲みながら、「彼氏彼女の事情」を全巻読みたいと思った日もありました。それはやりました。
普段だったら短編でも数万円、お金を頂いてお仕事として書いているものです。これを初期費用を頂かずに書く。売り上げによっては作品が10万円になる場合も0円になる場合もある。そして作業はやはり孤独です。
なにをやってるんだろうか、とちょっと思った瞬間も正直あります。
だけどやっぱり嬉しかったのは、みんなの表現したいエネルギーを、受け取れたということ。
このコロナ禍で、演劇(特に日本の)は随分と厳しい状況に追いやられてしまいました。
その中で、44人もの俳優たちが、まだまだ無名の私と共作したいと言って下さったこと。こんな状況の中でも、皆の中に巨大な、演じたい、創りたい!というエネルギーがあるのだと感じられたこと。
帰国したばかりでほぼすべての仕事が中止になっていた私は、それに随分助けてもらったし、やるべきことを与えてもらえたのだなと思います。
44人の愉快な子どもたちも生まれたし。
図らずもコロナベイビーな我が子たちは、少しずつブラッシュアップして育てていきながら、また別の形でも皆様のお目にかかれるよう、次なる企画も進めていきたいと思っています。
すでに公開中の作品、今後公開される作品、そして次なるstayhome一人芝居企画にも、是非引き続きご注目ください◎
さて、脱稿したし抜け殻をエンジョイしようと思い、テーブル一杯に積ん読を積み上げたわたくし。しばらくはひたすらにインプットよ!と思っていたのですが、お陰様で今回のご縁で頂いた脚本のお仕事がまたちらほらと。
我が子は生まれ続けます・・・・!
この積読を、どうしてくれよう・・・・・!
stayhome一人芝居 配信一覧はこちら