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現実逃避と至った理由。

お笑いは自分にとって現実逃避の手段のひとつだった。
勉強だるいとか親にめちゃくちゃに怒られたとか6時間後レポート提出とかこっぴどく振られたとかヤバイくらい仕事溜まってるとか、この世を生きるためには上手いこと逃避もしないとやっていけないわけで。
バラエティ番組やネタ番組を見て笑ってる間は目の前のことを忘れられたし、笑った後はなんとなく前向きになれて現実とも向き合いやすくなった気がした。

その日、というかその日までの数週間、近年稀に見る絶不調っぷりだった。何かどでかいことがあったというより、割れたグラスの破片がいつまでも細かく散らばってて何の気なしに歩いてたら痛っ!ってなる、のが一歩踏み出すたびに起こる、みたいな。とにかく、ずっと、めちゃくちゃ、絶不調。最底辺ゴミカスライフだった。
そんな時、帰省するために乗った始発の山手線で、とあるコンビのネタを何の気無しに見た。コンビ名を聞いたことあるけどネタ見たことないな、そんな理由だったと思う。昨今ご本人たちがネタ動画を上げてくださる有難い世の中になったので、さっと検索してさっと見た。
ものすごい衝撃。電車で見るんじゃなかった。笑い耐えるのが勿体ない。めちゃくちゃでかい声で笑いたい。えっおもしろ…えっ…?とりあえずもう1回…おっっっっもしろ……これの繰り返し。本当に、マジで、同じネタを、東京駅着く30分くらいの間ずっと見た。そしてずっと笑ってた。始発であんまり人いなかったから、2回目以降は声控えようとしつつも、笑ってた気もする。

実家に帰るや否や、親や妹や友達に「ねえ知ってる?見たことある?おもしろすぎるから!」ととにかく捲し立てるように喋った。みんな、ちょっと前までの最底辺ゴミカスライフを知っているので優しく聞いてくれた。そして聞き終わった後口をそろえたように言う。

「現実逃避できてよかったね」

現実逃避?
いままでもお笑いでしてきたことだったのに、今回はしっくりこなかった。

そもそも現実逃避とは、変わらない現実がそこにあるからできることだ。
そのネタ動画を見た後、自分の現実はぐるりと変わった。衝撃的に面白いネタに出会えて、お笑いってすごい!という圧倒的な現実しかなくなった。そのネタを見る前と後で、誇張なしで、世界が変わった。

「世界が変わった」がいかに誇張じゃないか。1番の証明は、自分でネタを書き出したことだ。
我ながらなんでそうなった?と思うけど、沢山笑って楽しんだあと、「こんな風に自分に起こったこともネタにして笑えたらいいな~」という考えに行き着いた。めちゃくちゃ嫌なことや、むかついた発言をボケにして、ツッコミ入れたら笑えてすっきりしないかな?と、試行錯誤してネタに昇華しようとした。勿論、今までで一度もしたことないわけだから、ぜんっぜん上手くいかなかった。けどなんか楽しかった。

そして、その4か月後。自分は某劇場で作家見習いとして働くことになる。
善は急げ、思い立ったが吉日、鉄は熱いうちに打て、その辺の言葉全部の例に挙げられるくらいの行動っぷりだと思う。ネタを考える現実から、お笑いに関わる仕事で生きる現実に変えたかったからだ。半分くらいは変えられたけど、まだ「食ってく」には程遠いのでこれからも現実変えていかなきゃな~と思いながら日々過ごしています。

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