『ツイクストをめぐる冒険』#8 カードツイクストを作ってみた!
■はじめに
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■カードツイクストを作ってみた
カードツイクストとは、カードを使ってツイクストをプレイするための拡張ゲームのこと。基本的にカードをプレイすることによって盤上にペグを挿すのだけれど、カードに示された所にだけ挿せるので手の選択が限定される。
今年2021年のゲームマーケット秋にて発売する予定となっている。
さまざまな動機からこのカードツイクストをつくることになったので、今回はこのカードツイクストにまつわる話を書いていきたいと思う。
カードツイクストがどんなゲームかについては↓にて
■ツイクストのラストワンマイル
自分は日本ツイクスト協会の活動で「ツイクストの普及」を数年間続けてきたのだけれども、ツイクストを伝えて教えて行く上で「届かない範囲」みたいなものを感じてました。
例えばツイクストの基本形(セットアップ)やシチョウについては基本的に覚えるしかない要素だったりする。将棋で言えば駒の動かし方なども同様に覚えるしかないと言えばわかりやすいだろうか?
それまでの日本ツイクスト協会としては「入門の本を買って読んで覚えてください」とか「協会のイベントに参加して実プレイで掴んでください」というアプローチしかできなかった。
ツイクストをプレイする人の中ではその論理の一歩目を即座に掴む人もいれば、ゆっくりと把握する人もいる。しかし、ゆっくりと把握する人は数回プレイしてもごくごく初歩を把握することなく「もういいか」と諦めてしまう人も多くない。その流れはとても良くわかる。
そこがツイクストのラストワンマイルのような気がずっとしていた。そのラストワンマイルに届くような何かがあると良いなと。
カードツイクストはそういったプレイヤーに向けて、対戦しつつ覚えるようなエデュケーショナルなものとして用意した。加えて、普通にゲームとしても面白いものとなるように作成した。
■先行モデルとしてのカード将棋
一時期に日本ツイクスト協会の集まりの中で「カード将棋」や「カード囲碁」をプレイするということが流行ったことがある。
カード将棋は基本的に引いたカードに書かれた駒を動かす事ができるというルール、それ以外に「大手をしなければいけない」「相手が指す場所を指定する」「必ず相手の駒を取らなければならない」「自由に指せる」というカードがあるゲーム。
自分自身ではカード将棋をそれほどプレイすることはなく、他人のプレイを眺めていることの方が多かったのだが、カード将棋は普通の将棋とは少し違うゲーム性が発生するようだった。例えば、自分で指す駒を指定出来ないからこそ「必ず相手の駒を取らなければならない」カードが出た時にリカバリー出来る動かし方をするなど。
単純に、本来の将棋と違ったゲーム性を一部もつことと、どの駒を動かすかを決める必要がなく「今動かせる駒の中でどれを動かすか」と思考を限定してくれる所が面白いと思った。
■トランプを使用したプレ・カードツイクスト
そんなカード将棋などを見て最初に副会長のねくろん氏が考えたのがトランプを使った座標式のプレ・カードツイクストだ。作ったというよりも、ツイクストの集まりの中のお遊びとしてなんとなくやってみたという雰囲気が強い。
プレ・カードツイクストはトランプのカードにアルファベットと数字を割り振っていて、引いたカードにペグを挿せるというもので、ほとんど本来のツイクストには変更を加えずにプレイしていた。
というかお遊びに近かったので、プレイ途中に場当たり的に「こういうルールはどうか?」という感じで制約などを設定していたように覚えている。
それを傍目で見ていたが、使用するペグ数やリンク数も多く足らなくなる様子だったし、ほとんど繋がらない場所のペグも多く、あくまでその場のノリで楽しむお遊び的なゲームになっていたかと思う。
その時はカードツイクストを作成しパッケージ化しようとは思っていなかった。ただ、思ったのは「このままではゲームとしては駄目だな」ということと「けれども、発想としてはとても面白いアイデアだ」とも思った。
日本ツイクスト協会では二択問題集という書籍を出している。これは連珠(競技の五目並べ)の書籍で二択問題集が出ていて、それを見た時にツイクストの書籍でも上手く使えるシステムだからと作ったものだ。
つまりは、ツイクストをカード化するというアイデア自体は面白く、別の形でツイクストを伝えるツールになるかもと思った。
■橋はずしゲーム
カードツイクストを作るうえでいくつか核となるアイデアがあったように思う。その要素がどれが先でどれが後かはあまり詳細に覚えていないし、もしかしたら勝手に記憶を書き換えて覚えているかもしれないが、大まかな部分をバラバラと記述したいと思う。
・カードによって挿す手を決める
これはカード将棋から共通する要素で外せないパートである。ここはおろそかにしてはいけないなとずっと思っていて、軽々に変更したくないパートかなと思っていた。
・基本形を出す
このnoteでも書いているが基本形はツイクストの初歩であり、伝えるなら真っ先に伝えたいことから基本形を組み込む事が当然かなと思ったし、カードツイクストには基本形カードが登場している。
ただ、基本形カードがあることは「基本形を実戦で使う」という事とは乖離がある。乖離があるとしても、それでも血肉になって基本形を覚えて貰うことが出来そうなのでそれで良いかなと考えた。
・カード将棋を考える
先行のモデルとしてカード将棋のことを考えてみたと思う。カード将棋には単純に駒を動かすカード(カードツイクストでは基本形カードなど)以外に特殊なカードがある。
という感じで本来の将棋では自由だったところに「このカードを引いたせいで!」という感じにままならないことが起こる。というわけで、ゲームの起伏をつけるためにもままならない(プレイヤーの自由にならない)要素が必要なのではと思い至る
・1デッキ制
また、初期のカードツイクストは1デッキ制だった。これはカード将棋がそうだったという事もそうだが、カードの引き運の偶然性で勝負が決まる事になるので、実力差のある対戦の場合はプレイへの心理的な障壁が下がるかと思ってのこと。よりハンデをつけるなら「橋はずし」の適応の仕方でつけようとしていた。
・橋はずしカード
というわけで「プレイヤーの自由にならない」要素として「橋はずし」カードを考えた。橋はずしカードは既に架けたリンクを外すというカードで、自分のターンで引いたら「相手に外す場所を決められたうえに、自分の手番が終了する」というカードだ。
このカードがカードツイクストのキーカードとなっていて、これを中心に据えたルール整備も多い。例えば、「手番中に挿したペグのみにリンクを架けられる」というルールなど。また、「橋はずし」を回避するプレイが出来ないようにもルールを整備した。
カード将棋には特殊なカードが数枚あったが、カードツイクストではドラスティックにゲームが変わってしまうカードとしては「橋はずし」一枚だけだ。これは将棋とツイクストのゲーム性の違いでそうなっただけかなと捉えている。
というわけで、割と初期の段階で「橋はずし」がカードツイクストの中心であることをなんとなく認識した。
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