「君に届け」
先日やっと「君に届け」(2010年公開)を観た。
三浦春馬さんの繊細な演技に引き込まれて、その晩は神経がパンパンになってしまい、よく眠れなかった。
三浦さんの逝去後、彼の演技を「繊細」と称える映画人のコメントを多々目にして、繊細な演技って何だろうと改めて考えた。彼の生きた証をできるだけ早く目にしておきたいこともあって、この秋はできるだけ三浦さんが出演する映像作品を鑑賞するようにしている。
三浦さんの演技を見ていると、表情の変化やセリフの回し方から、その先を察するようにこちら観者は誘導されてしまうのかもしれない。結果として、言葉にも表情にもしていなくても、心情が咄嗟に観者に伝わり、息が少ししにくくなるくらい胸がぎゅっと掴まれる。心のうずきを感じる。こういうことなのかも?と思った。「君に届け」で体感した。
優しく語りかける声が相まって、風早君の気持ちがそのまま心に届く。「黒沼」と呼ぶ声が、いまも私の頭の中でリフレインしている。リフレインするたびに優しい気持ちになる。中毒性があるのかもしれない。
この映画は、登場人物の心の動きを丁寧に描いている。演者が皆達者で、尚のこと感情移入しやすい。
心に真っ直ぐに届く、本当に良い映画。
映画は「爽やか」と形容されているようだが、鑑賞後、爽やかさよりも心にどしんと重さを感じてしまった。三浦さんが亡くなってしまったからだろうか。むしろ繊細さ、優しさ、儚さを強く意識させられた。桜が象徴的に用いられているからか、いつか終わりが来るような儚さを感じさせられたのかもしれない。
生きることは儚い。それでも、愛を持って真っ直ぐに生きることに価値があると思う。
いまも、風早くんと爽子ちゃんが、北海道のどこかの街で、愛を育みながら真っ直ぐに生きているのかな、とふとした瞬間に想いを馳せてしまう。