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連載(88):人類の夜明|まどろみの中で「貨幣はあらゆる責任を断ち切ってしまう。」

この記事は『かとうはかる(著)「人類の夜明」』を連載しています。

貨幣はあらゆる責任を断ち切ってしまう。

貨幣本位制の世界では、どんな責任も貨幣によって清算することができる。

どんなに無謀な消費をしても、どんなに無責任な生き方をしても、(法律を犯さなければ)お金さえあれば責任回避が可能なのである。

だからこの世界では、『お金さえあれば』が人をお金の亡者にしてしまうのである。

労働本位制の世界ではどうだろう?。

その世界では、一人一人の責任は輪廻するごとく循環し、再び自分のところに帰ってくる。

たとえば、Aという人がある物を無謀に消費したとすれば、その物を生産している労働者だけでなく、資源を掘り起こしている労働者にも、原料を作っている労働者にも、輸送をしている労働者にも、市場で働く労働者にも波及していき、すべてが労働者であるこの世界では、そのツケはいつか無謀に消費したAのところに帰ってくるのである。

したがって、無謀な行為がいつか我が身に帰ってくるという物理的あるいは心理的脅迫によって、その世界では節度ある消費がなされるのである。

また人に迷惑をかけた償い方も、本人が身を尽くして示す誠意しかないから、相手も欲を募らすこと無く、ただ誠意を待つのみとなるだろう。

こうしてこの世界では、誠意と誠意の施し合によって穏やかに解決されるのである。

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