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メンバーが主体性を持って自走できる組織に必要なのものは?

人は自分で決めた答えじゃないと納得なんてできない

例えば、仕事で案件の進捗が思うようにいかない場合、いちばん簡単な解決策は身近な上司に指示を仰ぐことかもしれません。でも、その指示通り動いたにも関わらずうまく行かない場合「言われた通りやったのに…」と不満を口にしてしまう、口に出さなくてもモヤッとしてしまう。これは人として仕方ないことだと思います。

そんな話をすると「考えが甘すぎる」「ビジネスにおいて他責思考は良くない」「もっと主体的に考えて行動するべきだ」と言われてしまうかもしれませんが、はたしてそうでしょうか。誤解を恐れず言えば、その言い分こそ主体性をその人に押し付けている=他責思考なのでは?なんて僕は考えてしまいます。

会社にはさまざまな考えを持った人が集まります。バイタリティにあふれ次々と新しいアイデアを考えて実行する人もいれば、与えられた作業をコツコツと正確にこなす人もいます。業界経験が長く知識が豊富な人もいれば、新卒や他業種からの転職で仕事内容や進め方に苦戦する人だっています。そんなキャリアも立場も違う人たちを前に、経営者やリーダー職の人間がいくら声を大にして一方的に「主体的に考えろ」と言ったところで、ほとんどの社員やチームスタッフの考え方や行動が変わることありません。なぜなら、自主性や主体性は他人に言われて身につくものではないからです。

じゃあ、どうすればチームメンバーが主体的に考え行動し、納得感を持って仕事に取り組めるようになるか。今回は僕が考えてこれまで実行してきた「会社経営においてメンバーの主体性を引き出すには仕組みと企業文化が必要」というお話です。


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個人の成長が企業の成長を加速させる

以前のnoteで会社創業期のストーリーとして【社員ゼロの状態で労務環境の整備をした】と書きましたが、もうひとつ組織を作るうえで大切にしてきたことがあります。それが、企業成長のためにメンバーの主体性を引き出す仕組みをつくることでした。

一緒に会社をスタートしたのが弟(現専務)ということもあって、創業当初は肌感覚の合うメンバーを集めて少しずつ業績が上がっていけばいいかな…とぼんやり考えていました。けれど、労務環境やキャリア制度を整備していくなかで、ビジネスにおいてますます人が重要になってくるこれからの時代、多彩な技能やキャリアを持った人が主導権を握ってアジャイル的に仕事に取り組める環境がなければ、企業の成長スピードが遅くなる!と考えるようになり、組織作りに対する考え方を改めるようになりました。

その後、いろいろと試行錯誤してきた結果たどり着いた、社員が主体的に仕事に取り組める環境作りの僕なりのポイントは「感情で判断しないこと」「自分で答えを出すこと」「役割を明確にすること」でした。


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そもそも主体性は感情論から生まれない

よく例えられる話ですが、ビジネスはチームスポーツに似ています。野球でもサッカーでも基本的にチームスポーツは実力成果主義の世界。チームは掲げる目標(例えばリーグ優勝など)に向けて、打順やポジションなどに最適なメンバーを起用します。選手は求められる結果を出すために主体的に自己研鑽に取り組む必要があります。結果、選手は自らの成績によって年俸が決まりますし、チームに必要とされるかどうかも判断されます。そこに感情論はなく、あるのはチームと選手間の明確な目標設定とその達成・非達成という結果だけです。

こんな風に書くとすごくドライに感じるかもしれませんが、一方でチームと選手間の目標設定や共有の方法さえ正しければ、選手はその達成に向けて自分が何をするべきか、どう行動するべきかを主体的に考える指針を持つことができるとも考えられます。

「主体性」と聞くとどうしても、その人の考え方や心の持ち様といった感情の議論になりがちですが、その是非までを人の感覚で行ってしまうと好き嫌いなど意図しないバイアスがかかってしまって、もはやなにが正解かわからなくなってしまう。これは結果的に正確なキャリア制度設計や人事評価の妨げにも繋がりかねません。

そんなわけで、今村不動産では会社としてスタッフに求めるポジションや役割を詳細に明示したうえで、年間の行動目標や売上利益目標の設定はスタッフ個人に決めてもらっています。会社に決められるのではなく自分で決めることの方が納得感は段違いに高いものです。経営者やチームリーダーの役割は、スタッフが主体的に考え行動するための道筋を示すことであって、その人を感覚で判断することではないんじゃないかと思います。


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上司は部下に正解を教えてはいけない

また「自分なりに考えること、自分の意見を持つことの大切さ」については僕自身、機会がある度に全社に伝えるようにしています。例えば、冒頭にも書いたように仕事で難しい問題やトラブルが起きたとき、解決の最短ルートは経験ある上司に聞くことでしょう。けれど、与えられた答えをなぞることは、本人にとっても会社にとっても本当に良いことでしょうか。

ひと昔前の日本の企業であれば、部下の仕事内容やトラブル対応を上司が二人三脚、手取り足取り指導することは普通だったかもしれません。その方が本人も教える側も楽だし効率的なのは確かです。けれど、世の中がどんどん複雑になって、まさに答えのない時代に突入しているのが現代です。仕事の進め方やアプローチも正解はひとつではありません。それなのに、決まりきった方法や過去の成功事例にしがみついていると、個人も会社も成長の機会=新しいアイデアや方法を試す機会を逃してしまいます。これは長い目でみると両者にとって大きな損失です。

教育制度が整っている大企業はさておき、僕らのような中小規模の事業会社は良くも悪くも「人の成長」が会社成長の生命線です。だからこそ、失敗も厭わず常に新しいチャレンジができる環境をつくりたいと思って、ゆるやかなルールを設けました。具体的には、部下は「自分なりの考えをもって上司に相談する」こと。逆に上司は「方法を教えず徹底して聞き役にまわり、質問を通して解決方法を模索する」ことです。

ここで重要なのは上司の役割です。経験が豊富な人であれば、部下の相談に対してついつい具体的なアドバイスをしがちですが、自分の考えを伝える前に質問を重ねることで、部下が気づいていなかった問題解決の視点や方法を部下自身が発見できるようにサポートしてもらいます。そうすることで、部下は自らの判断のもと次のアクションが取れる=結果的に主体的に考えて行動することができるようになります。また、結果的に会社としてこれまでやったことがない取り組みを、部下発信で実施するチャンスが巡ってくることだってあります。

今村不動産では「間違ってもミスをしても良いので自分で考えることが何よりも大切」だという文化を大切にしています。主張と質問を上司・部下が繰り返し行うことを仕組化することで、スタッフ全員が本当の意味で主体的に考えて行動できるように日々取り組みを続けています。


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役割に応じた相談や指示系統を徹底する

メンバーの主体性を引き出す組織作り、ポイントの3つ目は役割の明文化です。「報告や相談は必ず直属の上司と行い、役職を超えたやりとりはNG」というルール。わかりやすく言うと、メンバー社員・課長・部長という3者が同じ部門にいる場合、部長は課長を飛ばして社員に直接指示出しなどを行ってはいけないという仕組みです。

組織構造は会社によって違いますし、何が正解といったものでもありませんが、今村不動産では機能別組織体制を取っていて、経理や財務を行う「管理部」法人営業を行う「企画部」といった具合に業務内容に合わせて部門分けをしています。(まだ会社規模は小さいですが、積極的に採用活動を続けて2~3年の間に広報部やマーケティング部の立ち上げを目指しています)。現在のところ「企画部」の責任者は役員である専務が兼任していますが、上記でお話したような営業スタッフとの主張や質問のやり取りは全て専務に一任しています。僕が営業スタッフと視点を合わせて根掘り葉掘り話を聞くことはありません。

その理由は「主体性」を削いでしまう恐れがあるから。仮に僕が役職者を飛び越えて社員と交流すると、その人の存在意義はあやふやになり、本来メンバー社員の育成を主体的に行う役職者の役割を奪うことになってしまいます。これでは社員の成長どころか管理者の成長も見込めなくなってしまいます。また、社員の視点で考えてみても、指示を仰ぐ上司が複数存在する状況になってしまい混乱を招きかねません。組織の全員が主体性を持って考え行動するには、それを機能させるための組織構造をセットで考えるべきだと思っています。このルールは人が増えて会社規模が大きくなっても当面は継続していこうと考えています。


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結局のところ変えられるのは自分自身だけ。自ら悩んで考え行動した結果にしか納得できないのが人間です。経営者やチームリーダーにできることは、一緒に働いてくれるメンバーが主体性を発揮できる仕組みや文化を根気強く整えることだと思います。

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