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私にだけ正解があった頃の話

文章にリズムがあるという話を見て、ふと昔のことを思い出しました。


私は、周りと比べると恐ろしいほどに文章を書き終えるのが早い子供でした。昔は、何故みんな文章を書くことに苦労するのか、全く理解できませんでした。

体が弱く風邪をひきがちな私は、昔から本を与えられて育ちました。殴って調教する血縁者に飼育される時間が長かったので、小学生になれば失敗のない宿題を好んでやりたがりました。音読はそれこそ、宿題に出れば一日の宿題で十回でも読んでいました。

そこで得た特殊能力が主語述語を一瞬で仕分ける力と、文章力だったのでしょう。特に、昔は私の綴る文章が作りだすリズムには、確かに正解があったのです。

ここまで私の文章を読んでくださった方にはわかるかもしれませんが、今の私は正解を失くして、暗闇の中で文章を書いています。有り難いことに、文字数を重ねていくことは今でも苦手ではありません。それでもきっと、昔の方が美しい文章を書いていたのでしょう。小さな頃に書いた文章を掘り返すような気もなく、すぐ目につくような場所には何も残っていないので、確かめようはありませんが。

家族には、お前の書く文章は変だと言われるので、集団生活の中で浮いてしまう私自身と私の書いた文章を、つい重ねてしまいます。一文が長いだの体言止めが多いだの、ああだこうだと言われ私も私自身の書く文章を否定し、私は正解のあった正解を失くしました。

いつかあの感覚が返ってくるような、けれど小さな頃にはあった不思議な力なんてものは、きっと戻ってこないような気もしています。

それでも昨日よりは自由に、人の目を気にせず気持ちの良い響きに身を委ねて文字を打つ。そうやって、私は今日もあの頃の不思議な感覚を、または正解を待っています。

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