【英語のレシピ 3】発音の下ごしらえ
どんな言語であれ、私たちが外国語を学ぶ際にまず立ちはだかるのが発音です。しかし、何も日本人だけが外国語の発音を難しく感じるわけではありません。
例えば、アメリカ人やイギリス人が日本語を学ぶ際にも、その発音を身につけるには大変な困難が伴うものです。
つまり、誰にとっても、母国語以外の言語を発音することは基本的に難しいものなのです。
では、そもそも一体なぜ、外国語の発音が難しく感じられるのでしょうか?
今回の「英語のレシピ」では、英語の発音を下ごしらえして、今後の学習に役立てるための準備をしたいと思います。
それでは、Let's cook!(調理しちゃいましょう!)
外国語の発音が難しい理由
外国語の発音が難しく感じられる理由、それは、母国語に存在しない音を発声しなければならないことです。
例えば中国人が、「出張で札幌に行ってきたよ」と日本語で話す場合、実際には次のように発音される様子がとても多く見られます。
しゅちょうでさぽろにいてきたよ
日本語を母国語とする私たちにとっては、小さい「つ」の音(これを促音"そくおん"と言います)が抜け落ちた、文字通り、どこか間の抜けた発音に聞こえてしまいますが、実は、これは仕方のないことなのです。
というのも、中国語には「が"っ"こう」や「さ"っ"ぽろ」のように、母音に続けて促音を発音するルールがないからです。
これと同じことが私たち日本人にも当てはまります。つまり、私たちにとって英語の発音が難しく感じられてしまうのは、日本語には存在しない、英語に特有な音を発音しなければならないからなのです。
しかし、この困難を乗り越えることは難しいことではありません。日本語とは発音が異なる言語を学ぶのだ、という認識を持ち、慣れ親しんでいる日本語の発音をいったん脇へ置いて練習することで、英語の発音は上達していきます。
具体的には、例えば、coffee や Japan という身近な英単語を見かけても、「コーヒー」や「ジャパン」という発音は日本語式であり、英語ではそのようには発音することはないのだ、と、しっかりと意識することが、英語の発音を習得するための第一歩なのです。
英語学習で発音が大切な理由
英語は発音を大切にした学習と相性が良い言語です。というのも、26文字の英語のアルファベットとその組み合わせが担当する基本的な音(これを音素といいます)の発音を身につけるだけで、初見の英単語であっても、かなりの確率で正確に読めてしまうことが珍しくないからです。
ところが日本語ではそういうわけにはいきません。50音のひらがなに加えて、たった26文字の漢字の読み方を知っているだけでは、ほとんど何も読めないといってもいいでしょう。
英単語の綴りが表す『音』を理解することは、英語学習において最も重要なことを習得することを意味します。
なぜなら、英単語の『音』を覚えてしまいさえすれば、綴りについては、その『音』を担当する英語のアルファベットを書くだけで完成してしまうからです。
おすすめの学習法
英語のレシピでは、Phonics(日本語ではフォニックスと発音されます)と呼ばれる学習法の活用をおすすめしています。
Phonics は英語圏で広く採用されている学習法で、そこでは、基本的な音(=音素)と、1文字のアルファベットやアルファベットの組み合わせ(=綴り)とのあいだに存在する"一般的な関係性"を学びます。
ここで"一般的な関係性"と敢えて強調したのは、様々な理由から"一般的な関係性"にあてはまらないものがあるからです。
Phonics を学ぶことで、"全く問題なく"英語を読めるようになるのではなく、"ほとんど問題なく"英語を読めるようになる、と認識しておくことはとても大切です。
学習順序でいえば、音素を発音できるようになった後で、音素と綴りとの関係性を学ぶのが順路ということになりますが、Phinics を学ぶ中で、この二つを同時に身につけるのはそれほど難しいことではありません。
Phonics は元々、小さな子供向けの学習法であるため、YouTube などで配信されている動画教材は、可愛らしいキャラクターや童謡を用いたものが多いですが、語学の学び始めは誰もが子どものようなものです。童心に帰ったつもりで取り組んでみましょう。
発音の練習法
言語の発音を身につけるための効果的な方法のひとつは、正しく発音できる人の様子を真似ることです。特に、口の形と舌の位置をよく観察したうえで、自分の口でそれを再現しながら発音の練習を繰り返しましょう。
適切な英語指導者が身近にいるのであれば、その指導者に発音を確認してもらうことが一番ですが、必ずしもすべての英語学習がそのような環境下で行われるわけではありません。
そこで英語のレシピでは、スマートフォンの音声入力機能を利用した Speech-to-Text(スピーチ・トゥ・テキストと日本語では発音されます)アプリを利用した練習をおすすめしています。
Speech-to-Text とは、文字通り、話し言葉を書き言葉へ変換してくれるサービスです。PCやスマートフォンに向かって発音した言葉が画面に表示される様子を通じて、話した内容が相手に伝わった時の体験を疑似的に味わうことができます。
ただし、こうしたアプリは、誤った発音であっても推測によって正しく聞き取ってくれたり、英語表現におけるリズムや抑揚までは確認してくれなかったりするため、あくまで補助的な練習ツールとしての利用であることは気に留めておきましょう。
発音を学んだ先にあるもの
人間が日常生活の中で意思疎通するために生まれた言語を自然言語と呼びます。私たちの母国語である日本語はもちろん、英語もこの自然言語にあたります。
自然言語は、まず『話し言葉』として姿を現します。そして、『話し言葉』の根幹を成すものは『音声』です。書き言葉は、その『音声』を表すために生みだされた道具に過ぎません。
したがって、語学学習においては、まず、その言語の『音声』の発音を身につけることが効率的な学習法だということになります。音があって文字がある。この順番こそが大切なのです。
英語については、その発音を学ぶことで、英単語の学習がとても楽になります。また、音がわかるから聞こえるようになる、という理由で、リスニング能力を自然な流れで身につけることもできます。
つまり、平たく言えば、語学は話してなんぼ、ということなのです。日本語だけで問題なく生活できてしまう日本で外国語の音を学ぶためには、この意識を持つことがとても大切です。
皆さんも、是非、発音を大切にした英語学習を心掛けてみてください。
※その他のレシピについては、編集作業が完了次第、公開予定です
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