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【雉始雊】きじはじめてなく『雪の日の幸せな親子』byナツメ🍀


愛犬スズと散歩中、春?じゃないかと思うくらい暖かかった。
冬にこの快晴は、北陸では奇跡だ!

自宅近くのサイクリングロードから見た白山

山か海かどっちが好き?と尋ねられたら、私は断然海派だが、ここから見える白山も大好きである。
運動音痴の私にとっては、山は登るものではなく眺めるもの。
登山愛好家の方々からすると、何ともったいない経験を逃していると思われるだろうが、今のところ、登る予定はない。
子供たちは、学校行事として白山登山があるので、息子たちは経験済みだ。


霊峰白山(ハクサン)
石川県民は、一本調子で「ハクサン」と呼ぶが、富山県民の友人が言うと「ク」だけがちょっとワントーン上がる。
(声のトーンを文章で表すのは、なかなか難しい)
「変なの~」なんて言って笑っていたが、どうも全国区では富山的発音が正解なのではと最近思うようになってきた。
要するに、私の方が訛っていたと・・・


余談はさておいて、今日は雪の日に出会ったある親子のお話を。


かれこれ20年近く前のこと。私はまだ自営業ではなく、ある会社の事務員をしていた。


雪は大量に降ると厄介だが、初雪は本当に美しい。
すべての物を真っ白なベールで被いつくし、別世界へと私たちを誘う。


そんなある日の朝、私はいつも通り会社に向かうため、車も交差できないくらい細い道路をくねくねと走っていた。
この辺の町並みは、まるで迷路。今ではもう迷うことはないが、結婚した当初は「ここは何処?」なんてことが度々あった。


普段は子供たちが飛び出して来ると危険なので通らないが、私の通勤時間帯の朝8時過ぎには、皆学校に到着しているので人通りはほぼセロ。


そんな雪の日に、私はある親子に一週間続けて出会った。

幼稚園の年長さんらしい男の子が前で、お母さんがその後ろを歩く。
近くに保育園があるから、そこに向かっている途中らしい。

北陸だけではないだろうけど、雪の降り始めが一番寒い。いったん積もってしまえば、ちょっとほっこりと温かく感じるのは、身体が慣れるからかもしれない。


そんな初雪がチラホラと舞い散る中、男の子は防寒用のフードつきジャンパーを着ているのに、お母さんは何故かグレーのジャージの上下のみ。
「寒くないの?」
と心配しつつも、狭い道を十分に気をつけながらゆっくりと進む。


驚いたのは、その男の子の凛々しい顔つき。真っ直ぐに見つめるその眼差しの強さ。
「僕がお母さんを守る!」
そんな気持ちがビンビン伝わって来る。
お母さんはと言うと、外見だけで判断するのは失礼な話したが、障がい者らしい優しいお顔だった。


2日目も出会った。

3日目、雪も結構積もってきた頃。
同じ通りを、二人は雪合戦をしつつ楽しそうに歩いて来る。
映画のワンシーンを観ているかのように舞い散る雪までスローモーションのように感じた。
「いいなぁ」
二人の邪魔にならないよう、ソロソロと車を進める。


その日から、私はその親子を「幸せな親子」と勝手に命名した。
子供は天国から、この人の子供になろうと決めて生まれてくると、聞いたことがある。
まさに、彼はそうなんだろうと思った。


さらに4日目。
いつも通り、お母さんを守るように、前を歩く凛々しい男の子と、後ろを歩くお母さん。
「うん?」
何かが違う!
お母さんが違う?


いつもの全く同じジャージ姿、なのに、お顔が別人。
エッ、お姉さん?
お姉さんがいたんだ。でも何で同じジャージ?
でも、でも。二人に近づくにつれ、私のクエスチョンマークは増えていく。
お顔が、お顔がって失礼な話に聞こえるかもしれないが、お母さんのお顔が観音様?くらいに美しく輝いて見えた。
さらに、うしろから男の子を見守る優しい眼差しは愛に溢れていた。


一日中、仕事が手につかないほど気になった。


5日目、また会えた。幸せな親子!
いつものお母さんと凛々しい息子。
あれはやっぱり私の勘違い・・・
運転しながら夢を見ていた?
そんなはずはない。


だけど次の週からは、一度も合うことなく終わった。

雪がたくさん積もりだすと、細い道は雪にはまって動けなくなることが度々ある。
だから、その冬はそれっきり町中を通らず、融雪のある大通りを使って会社まで通った。


あれ依頼、私はその「幸せな親子」を見かけていないが、あれがまぼろしでなければ、あの凛々しい彼は、もうすっかり大人になっているはず。

夢か幻かは定かではないが、あの雪の日の「幸せな親子」は、私の一生忘れられない思い出である。






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