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日本人は温暖化に負けつつある、のかも

夏らしくゾッとする話を。怪談よろしく、眉に少し唾をつけて読んでもらいたい。

仕事の調べ物をしていて衝撃的な資料に出くわした。フランスの世論調査会社イプソスが2024年4月に公表した報告書「アースデイ2024 気候変動に関する世論」。世界33カ国で実施した、温暖化対策に対する意識調査の結果である。色々な意見に対して、それぞれの国の人々が、どの程度同意するかを調べて列挙した資料だ。

ざっとめくると、日本人の賛同率が対象国中で最低の意見が驚くほどたくさんある。

かいつまんで並べてみよう。

「自国の企業が、今すぐ気候変動対策に取り組まなければ、従業員や顧客の期待を裏切ることになる」(「そう思う」を選んだ回答者の割合が33カ国平均では59%、日本は31%、以下同)
「私のような個人が、今すぐ気候変動に対処する行動を取らなければ、次世代の期待を裏切ることになる」(63%、35%)
「気候変動との闘いにおいて自国はもっと多くのことをすべきである」(63%、43%)
「皆が毎日の生活を少し変えれば、気候変動への取り組みに大きな影響を与えられる可能性がある」(69%、48%)
「厳しい経済状況を考慮すると、気候変動を低減するための対策に投資するのは、今は適切な時期ではない」(31%、16%)
「気候変動を防ぐために、現在よりも多くの税金を支払ってもいい」(30%、12%)
「先進国は気候変動に対応するためにさらに対策を取るべきだ」(70%、54%)

アースデイ2024 気候変動に関する世論

全体を通して見ると、日本人は優柔不断で「そう思う」を選びにくいだけかも、と思わなくもない。だとしても、温暖化対策に積極的とはとてもいえない。いやむしろ、ものすごく後ろ向きに感じる。

単に温暖化を恐れていないだけかといえば、そうでもない。なぜなら、「気候変動による悪影響は、あまりにも遠い将来のことなので、私は心配していない」に対する同意も、平均の23%に対して12%と、やはり日本は最下位だからである。心配している割に、いざ行動となると及び腰なわけである。

これまで自分は、日本人は世界でも温暖化対策に熱心な国民だと思ってきた。なぜなら日本の企業が、かつては省エネで世界を席巻したという印象が強いからである。燃費のいい自動車しかり、省電力の家電や情報機器しかり。日本発の「Mottainai」なんて言葉もあった。資源が乏しい国だけに、当然といえば当然だ。

ところが先の結果を見る限り、これは古めかしい国民像なのか。

自分は別の可能性もあると考えている。ひょっとしたら日本人は、世界でも先頭を走り過ぎて、対策してもダメだと諦めてしまったのではないか。特に根拠はなく、先の報告書にある「高まる無関心と気候疲れ」という見出しから、連想したにすぎないが。

実は世界の平均気温は、産業革命以前に対して+1.5度以内に収めるというパリ協定の目標を、とっくにはみ出している。2024年7月には欧州連合(EU)の「コペルニクス気候変動サービス」が、世界の平均気温は6月までの12カ月連続でこの数字を超えたと発表した。とはいえまだ逆戻りできる可能性もあるので、目標が破られたことにはならないようだが。

それでも、である。本当に後戻りなんてできるんだろうか。

我が家では、今や夏場は夜も含めてずっとエアコンをつけっぱなしである。自分はまだ我慢できそうな気もするが、家族の健康を考えると致し方ない。そして、記録を日々更新する気候の現状を見るにつけ、エアコンを止める夏は、もう2度と来ないのではないかと感じている。

おわり。

では味気ないので、もう少し書き足してみる。この記事を公開してしまえば、数日後にも自分は書いたことすらすっかり忘れてしまうだろう。何年か経ってたまたま出くわし、一読、こう呟くのかもしれない。「あの頃はまだマシだった」。

そんな先のことがわかるのならば、なんで今すぐ行動に移さないのか?

なぜだろう?

それが諦めというやつである。


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