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その景色はいつでも夏
#夏に観たい映画 と言われても全く何も思い浮かばないのはなぜだか考えてみた。
僕にとって夏に観たい映画を挙げてみようとする時、まず最初に浮かぶ好きな映画を頭から引っ張りだしてみるのだけど、なんだかそれらは全て夏の風景の中にある気がする。逆に、冬に観たい映画を挙げようとする時、まず最初に浮かぶ好きな映画を引っ張り出しても、ほとんどが冬の景色に無い気がする。
しかしながら、強引に当てはめようとするとなぜかそれらは冬の景色がぴったりと当てはまってしまうから、我ながら頭のつくりの悪さに辟易としてしまう。
そんなこんなで、よっぽど夏をテーマにした映画ではないと、それが夏を舞台にした映画だという確信が持てなくなってしまうのだ。季節に敏感で居るつもりでいても、映画を季節毎にジャンル分けしているわけでもないから、それはつまり記憶力の悪さのせいなのかもしれない。
どうしても暇というか何も手につけたくない一日があったので、何か映画を観よう、できれば夏っぽいのが良い、ということで大好きな『ジョゼと虎と魚たち』を観たが、驚いた。
最初から最後まで、それは寒い季節だった。
その作品は、だいたい2年弱ほどの物語なのであるが、どのシーンを切り取っても、また全体的に寒い季節感を漂わせている。
あてつけがましいが、自分の勘の悪さに一言文句を言いたい気分になった。
なぜだか、僕の好きな映画はいつでも夏の景色にある。それは夏休みを持て余している今だから言えることなのかもしれないし、またあるいは、とも思ってしまう。冬になればたとえそれが『スタンドバイミー』であったとしても、冬の景色にありそうだとか言ってしまっているかもしれないくらいには、僕は僕の勘の良さを信用していない。
でもやっぱり、粗い画質、乾いた空気感、どこか寂しそうな風景には、夏と蝉と鈴虫の声があってほしい、というのが僕の本音なのかもしれない。
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