![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/104552177/rectangle_large_type_2_4199c4e9331bedf4e84226c872b57cfc.jpg?width=1200)
トンネル抜けて
6時。6時6時6時。呟きながら眠りにつく。
つこうとする。明日は6時に起きる。
遠足の前の子どものようにどうにも眠れない。
いやそんなことを言ってる場合じゃないのだ。
眠れ眠れ眠るのだ。ひたすら呪文を唱え続ける。
明日になればトンネル抜けて。
ふいに泣きながら高速をぶっ飛ばした記憶が
蘇る。交通事故だった。二人の友をなくした。
あれからもう何年経ったのだったか。
いくつものトンネルをくぐり抜けて辿り着いた
場所には笑い声が溢れていた。
よくわからないものに惑わされることもなくなった。生きてりゃいいこともあるもんだ。
ぎゅうぎゅうに詰め込まれたキャリーケースを
そっと撫でる。
明日になればトンネル抜けて。
あぁ、あれからもう20年か。
彼らの笑い声が聞こえてくるようだ。
ねぇ、トンネルを抜けたよ。
アルバムを開きながらひとり微笑む夜。