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トンネル抜けて

6時。6時6時6時。呟きながら眠りにつく。
つこうとする。明日は6時に起きる。
遠足の前の子どものようにどうにも眠れない。
いやそんなことを言ってる場合じゃないのだ。
眠れ眠れ眠るのだ。ひたすら呪文を唱え続ける。

明日になればトンネル抜けて。
ふいに泣きながら高速をぶっ飛ばした記憶が
蘇る。交通事故だった。二人の友をなくした。
あれからもう何年経ったのだったか。

いくつものトンネルをくぐり抜けて辿り着いた
場所には笑い声が溢れていた。
よくわからないものに惑わされることもなくなった。生きてりゃいいこともあるもんだ。
ぎゅうぎゅうに詰め込まれたキャリーケースを
そっと撫でる。

明日になればトンネル抜けて。
あぁ、あれからもう20年か。
彼らの笑い声が聞こえてくるようだ。

ねぇ、トンネルを抜けたよ。
アルバムを開きながらひとり微笑む夜。

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