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土にまみれて

5時のアラームで目が覚めて
寝ぼけた子猫を抱き抱え
稲刈りに行くような出で立ちで学校に向かう。
土の匂いと草の匂い。
遠くの山を覆っていた雲も次第に晴れてきて
土にまみれて汗を拭う。
草刈機のうなる音。首に巻いたタオル。
重く沈んでいた心と身体は次第に軽くなり
蛙とバッタを追いかける。

頭の中の宮崎駿と養老孟司がわたしに話しかけてくる。

「やっぱりね、人間は土にまみれて泥にまみれて
草の匂いを吸い込むことで生き返るんですよ。
爪が汚れるだの衣服が汚れるだの日焼けするだの
そんなことを言っていたらね、もやしはもやしのままですよ。美味しいですけどね、もやし。

まだ尻尾が残る蛙を手の平にのせた時の子どもたちの目の輝きを見たことがありますか?
両手でそっと包みこむように捕まえたバッタを
得意そうに見せにくる子どもたちの満面の笑みを見たことがありますか?

そういう体験をさせてあげたいんですよ。
ちょっと転んだだけで先生が保護者に平謝りするなんて馬鹿げてますよ。
うだうだ体育座りして頭でっかちに考える前に
田んぼに飛び込めばいいんですよ。
草むらに寝転がってテントウムシが空高く
飛び立っていくさまを眺めていればいいんですよ。

何か大変なことが自分の身に起こったとしても
この世界に生きとし生けるものたちに触れて
自然の力強さを体感することで得られるものが
どれだけ人間の身体と精神に影響を及ぼすかということを知っていさえすればこれから先も子どもたちはたくましく生きていってくれるような気がするんですよ僕は。」

土にまみれたその後は
シャワーでさっぱり洗い流して
言葉のシャワーを浴びに行く。

落語落語。楽しみ楽しみ。

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