わかっているんだろう

光があたるショーウィンドウには
硝子でできた服が飾られ
花屋パン屋に帽子屋靴屋
花を買い求める人々の手には
小さな硝子玉が握られている
ねぇ見てあのひと、綺麗ね
心も身体も透き通っている

大きな大きな船に乗り
島々を巡る夢を見た

ほらあの街はガラスの街
あちらは看板だけの街
看板みたいにぺらぺらな
人々だけが住まう街
向こうに見える色彩は
桜に薔薇に紫陽花に
年中花が咲く街さ
雨しか降らない街もある
傘を忘れちゃいけないよ

わかるかい
全部偽物だよ
ここは貴方が見たい景色と
貴方が捉えている景色
全てがごちゃ混ぜになっている
あれもこれも
全部夢だよ
本当はわかっているんだろう

たとえ夢なのだとしても
全部偽物なのだとしても

目が覚めて
鳥の声

夢ならば夢のまま
大事に抱えて生きてゆく

この世界の片隅に
心の底から幸せを
願う相手が存在している

そう思えるひとに出会えたこと
それこそが何よりも
幸せなことだと思わないか？