静寂
見える景色は変われども
心はしんと静かである
深い深い森の中
小鳥の羽ばたく音だけが
全てをやわらかく包み込み
ようやくここまで来たのだと
私は安堵しているのである
それはまるで
よく冷えた朝のひかり
それはまるで
音もなく揺れる水中花
それはまるで
風に揺られるススキの穂
揺らがぬわけではないけれどひどく
心乱されることもなければ
流れに逆らうこともない
好きなものは好きなままだし
嫌いになったわけでもない
それでも心は凪のように
静まり返っているのである
長い長い旅路の果て
ようやくここまで来たのだと
私は安堵しているのである
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