忽然と
音楽と植物を愛する教授と呼ばれていた友人が
SNSから忽然と姿を消していてあれ、と思った。
一体いつからいなくなっていたのだろう。
そういえばあの植物たちは、とふと思い出して
ようやく気づけるぐらい無頓着な自分が恥ずかしくなる。
今となっては連絡先も知らないしそもそも連絡を取り合うような仲でもなかったけれどなんだか寂しくなった。
わたしもある時期を境に某SNSから姿を消した人間なので人のことをとやかく言えるわけでもないのだけれどどこかで今日もいつものように植物たちに水をやって時々音楽を奏でていてくれたらいいと思う。いや、生きていてくれたらそれでいい。それだけでいい。
どんなに離れてしまったとしても視界に入らなくなってしまったとしても人間というものはそう簡単に死なないしタイミングが合えばいつかまたどこかで出会えるだろうとおおよそ9割は楽観的に捉えてはいるのだけれど、もう出会うことが叶わなくなってしまった人々のことを想うとほんの少し胸がざわめく。
気がつけば夏が来て振り返れば秋風が吹いて
人生はどんどん通り過ぎていく。
次から次へとやるべきことが山積みになっていって生活に追われていくうちに失っていくものを
振り返る余裕もない。
埋め尽くされたスケジュール。
いつの間にか空になったボトル。
冷めきったケトル。
あのひとはもう失くしてしまったのだろうか。
失くしてしまったとしても。
立ち上がり洗濯物を干す。
山の向こうに風車は回る。回り続ける。
かまわないよ。
あなたが生きていてくれるなら。