イタリア語と英語で振り返る映画「スポットライト」名シーン①

「新聞を読者にとって、なくてはならないものにする」

 筆者は、アカデミー賞作品賞を受賞した映画「スポットライト」が大好きなもので、イタリア語吹き替えやオリジナルの英語で見ながら語学学習に役立てています。

 映画の主役たちが演じるのはボストングローブ紙というアメリカの新聞社の記者たち。カトリック教会によって組織ぐるみで隠蔽されてきた聖職者による性的虐待事件の数々を明らかにしていく、事実に基づいた物語です。(冒頭に「Basato su fatti realmente accaduti」、「Based on Actual Events」とテロップが出ます)

 今回紹介するのは、外部からやってきた新任の編集局長バロンさんと、スポットライト(ボストングローブ紙の調査報道チーム)の責任者ロビーさんの初顔合わせの場面です。バロンさんはヨソ者、ロビーさんは地元ボストンで生まれ育った生え抜きの記者。お互いの腹を探りつつ、新聞社の未来について話をします。

  バロンさんが「インターネットが新聞業界に浸食」(「Internet sta danneggiando il lavoro qualificato.」「The Internet is cutting into the classified business.」)し、読者数が減っていると懸念を示すと、ロビーさんが「経費削減しようと言うんですか」(「Allora prevedi altri tagli?」「So you anticipate more cuts?」)と質問。

 これに対してバロンさんは、もちろん経費削減も必要なんだけど、もっと重要なのは紙面を魅力的にすることだと言い、2人の会話は次のように進んでいきます。

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バロンさん「今、私が話しているのは、この新聞を読者にとって絶対なくてはならないものにする道を探すことなんだ」
イタリア語「Al momento mi sto concentrando più su come rendere quest giornale insostituibile per i propri lettori.」
英語「What I'm focused on right now is finding a way to make this paper essential to its readers.」

ロビーさん「すでにそうなっていると考えますが」
イタリア語「Mi piace pensare che già lo sia.」
英語「I'd like to think it already is.」

バロンさん「その通り。だけどわれわれはもっと努力できると思う」
イタリア語「Ma certo. Penso solo che si posso fare di più.」
英語「Fair enough. I just think we can do better.」
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 映画の舞台は2001年。今から20年前の話ですが、すでに新聞業界の苦境が始まっていたことが分かります。
 そんな中で、新聞を「なくてはならないもの」にするという気概を込めた言葉は、業界の片隅で仕事する筆者に響きました。
 ちなみに「なくてはならないもの」と訳したのは英語の「essential」。辞書を見ると「絶対必要な、絶対不可欠な、欠くことのできない」などと書いてます。イタリア語版では「insostituibile」。こちらは「置き換えられない、取り替えられない、埋め合わせのきかない、かけがえのない」という意味だそうです。

 ではまた。Andrà tutto bene. Life goes on.



 

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