no Filterの「強み」についての一考察(1)
(1)はじめに
たくさんアイドルが出演するような大型のイベントに行くと、名前も聞いたこと無いレベルのグループが無数にいて、アイドルって本当にたくさんいるんだなぁと思う。そして毎日のように卒業やら解散やら現体制終了やらのツイートを見るたび、この世界で「生き残る」ことの難しさ、「売れる」ことの難しさを、オタクレベルでも感じる次第である。
僕が主現場としていた静岡のアイドル「no Filter」は、結成3周年を迎えようとする今年、@JAM EXPO出場を掴んだ。アイドルの誰もが目指すであろう大舞台に、やっと辿り着いたわけである。ここに辿り着くまでにはたくさんの苦労があったし涙もあったことは、過去の記事にまとめてあるのでそちらを参照してほしい。
星の数ほどいるアイドルグループの中で頭角を表すのはとても難しいことだ。大手事務所であればプロモーションにカネも掛けられるし、強力なコネクションもノウハウもあるから売れさせるまでに時間も要しないだろう。では、そうではないグループはどうだろうか。似たり寄ったりのグループが多い中でどう個性を出していくかが重要になってくる。「歌が上手い、パフォーマンスが優れてる」というだけでは売れていかないのが昨今のアイドル現場である。奇抜なことをやるグループもいれば、過激なところを攻めるグループもいる。独特なコンセプトでスタートするグループだっている。しかしそこから這い上がれるグループはほんのわずかである。
地方の小さな事務所に所属するアイドルno Filterが、このアイドル戦国時代を勝ち上がっていくためにはどんな個性をアピールすればよいか。僕は常々そんなことを考えていた。歌唱力もパフォーマンスもメンバーの個性も申し分ないグループなのだが、それだけでは売れていかない現実がある。何かひとつでも、他のグループには無い「強み」があると武器になる。
no Filterにとって、それは何だろうか?
(2)子どもに愛されるno Filter
ひとつだけ、自信を持って強調できる、他のグループにはあまりない強い個性がno Filterにはある。
それは、家族連れや小さな子どもにも推されている、ということである。
no Filterは、ARTIE(静岡市葵区七間町)という場所で無料定期公演を月一で実施している。ステージの目の前には子どもが遊べるトランポリン状の遊具があり、家族連れが気軽に立ち寄ってアイドルのステージを観覧する環境が日常的にあった。そのせいかわからないが、徐々に家族でno Filterを推してくれるご家族が増えてきていた。現場に子どもがいるという光景は、実はローカルアイドル現場であればそれほど珍しい光景ではない。都市部のアイドルと違い、地方のアイドルはフリーライブや自治体のイベント、企業案件などの現場を主戦場とすることが多い。それらの現場を数多く抱えていれば、それだけ家族連れの目に留まることも多く、そういった層にも支持されることは地方のアイドルにおいてはよくあることだ。御多分に洩れずno Filterもその典型なのだが、no Filterが他のローカルアイドルと異なる点は、そういった層がフリーライブだけではなく、ライブハウスや遠征にも足を運んでくる、ということだ。ライブハウスに小さな子どもがいて、グループのTシャツを着て、メンカラグッズを身につけて、ペンラを振ってる光景。そんなアイドル現場が果たして他にあるだろうか?
今年6月に行われた「Reboot」ツアー東京公演において、僕の招待で初めてno Filterを観に来た知り合いは口を揃えてその光景(小学生ぐらいの子どもが観に来ているということ)に驚いていた。そしてこうも言った。
「周りのオタクがちゃんと配慮しているのが偉いよね。沸きヲタはいるんだけど、ちゃんとスペースを分けて沸いている。棲み分けが出来てるのが凄いと思った。いい現場だよね」と。
また、応援する子どもがいるだけでメンバーの表情も緩むし、周りのオタクも温かい気持ちになる。集客の面でアウェイ感を絶えず受けることになる遠征先であればそのチカラは絶大だ。不安と緊張で張り詰めてたメンバーの気持ちも子どもヲタが視界に入るだけで思わず和む。メンバーにとってそれは相当なパワーになってたはずだ。
こうした光景は他のアイドル現場にはないno Filterだからこその光景だと思うし、no Filterがもっとウリにしていって良いことだと思うし、これからも大切にしていかなければならない部分であるように思う。
(3)なぜ、no Filterは子どもにウケるのか?
no Filterのウリが子どもウケすることであるならば、もっとそういう層に刺さるような売り方をしていけば、売れるための突破口にもなり得るのではないか。
では、なぜno Filterは子どもにウケるのであろうか。
僕はその答えが知りたくて、親子でno Filterをよく観に来ている数組のご家族にコンタクトを取り、簡単なアンケートを実施した。どのご家族も快く引き受けて下さった。保護者向けの質問を10項目、子ども向けの質問を10項目、用意し、アンケートを実施した。なお、アンケートは今年3月ぐらいに実施したものである。次節で考察と共に詳述していきたい。
※今回、アンケートのご協力を頂いたご家族の方に、お写真も提供して頂きました。この場を借りて御礼申し上げます。