書誌学心をくすぐる展覧会:北斎ブックーワールド
天気の良かった10月某日、すみだ北斎美術館に行ってきました。
メインは見出し画像に貼った「北斎ブックワールド ~知られざる板本の世界」展です。
浮世絵というと、ポスターのような1枚ものの印象が強いかと思いますが、この展覧会ではいわゆる本として綴じられた作品である「板本」(はんぽん)をテーマに展示しています。
★展覧会公式サイト★
よくある形式ですが、ここも企画展のチケットで常設展も見れます。そっちも含め、今回は全体を軽くレポートします。
中の前に、外見を少しだけ。良い天気で写真が撮れたので。
〈企画展〉
北斎ブックワールド ~知られざる板本の世界~
3Fが企画展の会場です。このエリアは写真NGでした。
テーマ/構成/見どころは前述の公式サイトでまとめられている通りです。効率的に鑑賞されるなら事前に、じっくり鑑賞されるつもりなら事後に目を通されると良いのでは、と思います。
展示は実物を分かりやすく、丁寧な構成とキャプションで説明しており、和書マニアなら気になるところを手際よく、この手のジャンルは初めてという方でも本という存在に関心があれば楽しく、鑑賞できる内容だと思います。
個人的に印象に残った点としては、北斎以外の、名も知らなかった北斎の弟子筋の作家とその作品をかなり見れたこと、板本以外にも原板(版木)や本箱など周辺的なモノも展示されていたことが挙げられます。中でも特に、板本販売時に本を包んでいた「袋」には、グッときてしまいました。
〈常設展プラス〉
隅田川両岸景色図巻(複製画)と北斎漫画
4Fは常設展と常設展プラスに分かれています。常設展プラスでは、この館のお宝である《隅田川両岸景色図巻》が展示されていました。非常に長い絵巻物の大作です。
ただ、残念ながら実物ではなく複製による展示です。
美術館HPのコレクション紹介のページからも、ごく一部ですが、この作品の画像・解説が見れます。以下にそのURLを貼っておきます。
実物は7mと横に非常に長く、最後に狂文という一種の文書がくっついているので、全く違う印象になります。
ほかに、3Fの企画展と連動して北斎の板本の複製本を陳列しており、直接手にとって読むことができます。本は毎日入れ替えているとのことで、この日はたしか北斎漫画1~8巻(全巻?)とその他絵解き本でした。
近年、一つ一つの作品は何らかの画像データで、内容全体も近年復刊された書籍で通し読みはできますが、実際の刊行当初(江戸時代)の和書の姿で実物を触って読むことは、体験としてまた違う価値があります。和書(和装本)ならではの軽さ・柔らかさは、初めての人にとっては新鮮な驚きだと思います。きっと。運良く空いていれば、思う存分手にとって初めから終わりまでじっくり”体感”することができます。
〈常設展〉
ここの常設展は、一面黒が基調でシックな雰囲気です。ここは写真OKです。
北斎の代表作(ここで所蔵しているもの)を北斎の画業の時代区分で展示しており、作品だけでなく北斎自身に関しても効率よく効果的に知ることができます。本やドキュメンタリーなどと異なる、ミュージアムならではの知る・学ぶ場として非常に意義が高く有用だと思います。もちろん、ここで展示してあるだけで北斎を概ね分かったと思ってしまうと、ちょっとまた違うとは思いますが。
今回常設展で出会った中で、一番気になった作品はこれでした。名前が思い出せませんが、このシーン/構図は他の古美術作品でも見た覚えがあり、北斎も描いてたんだ、と思いました。
↑↑↑ HP上で公開されている、《貴人と官女図》の記事(画像と解説)
〈ショップ・グッズ〉
ここのショップは、良いモノが充実していていつも誘惑と格闘になります。
今回、企画展に対応した図録(展覧会カタログ)の制作はなく、代わりに数ページのリーフレットが販売されていました。
書籍のコーナーには、今回の企画展のテーマに即した専門書がラインナップされていました。覚えている範囲で何冊か挙げておきます。
その他
今回展示会場である3Fと4Fを一通り鑑賞しましたが、かなり早く回って1時間ぐらいでした。過去何度か訪れていてそれなりに勝手知ったること、そして常設展の内容も大方は頭の中に入っている状況でこれぐらいです。初めて訪れる方で、また展示も解説も全てじっくり読まれる場合(面白いのでその方がお勧めです)は、所要時間として2時間はみておいたほうが良いかと思います。
なお、この美術館には付属図書室もあり、もし今回の展示やテーマで気になることがあるようでしたら、気楽に寄ってみるのもよいかもしれません。
以 上