アートな椅子。アートの中の椅子。椅子が語るもの。椅子により伝わるもの。
高価な椅子と言われれば、何を思い浮かべるだろうか。
一定以上の年齢であれば、たとえば、「ハーマンミラー」や「イームズ」あたりの名を挙げるかもしれない。
しかしこの「アブソリュート・チェアーズ」展は、椅子の展覧会ではあるが、それらは対象としていない。それらはプロダクトデザイン/デザイナーズ・チェアであり、アートを第一の目的とした一点物のアート作品ではないからである。もちろんこの認識区分を意図的に撹拌するような「作品」もいまでは無尽蔵に存在すると思うが、その点はこの展覧会(およびこの記事)の主題ではない。
この展覧会では、現代アート作品 あるいは 現代アート的行為/表現 としての認識フレームに基づき、実物・イメージを問わずさまざまな「椅子」が、示される。そして実物の椅子についてはかなりの数、作品でありながら実際に座ってみることができる。オモシロイ展覧会である。
以降、私の言葉は控え目にしつつ、この展覧会の光景・雰囲気をお伝えする。
* * *
この展覧会は、メッセージ的な分類あるいは視点(多くの展覧会はだいたいそれでセクション分けされるのだが)が非常に多様である。一つの会場にまとめられ、一つのタイトルを与えられ、5つのセクションに分けられてはいるが、全ての作品を同じように、あるいは、同じ深さで、受容(理解したり感銘を受けたり)することは困難である。会場を一通り体験し己が関心のありかを確認し、その後、最も響いた作家・作品(だいたいそれがこの展覧会におけるメッセージの単位となっている)と改めて対話し、あなたを捉えたその感性や問題意識を研ぎ澄ましたり深められれば、それでいいのではなかろうか。
椅子がテーマの美術展と知った時点で、この展覧会でわたしが一番確かめたいトピックは、決まっていた。「排除ベンチ」「排除アート」。なので、この展覧会で私が真っ向から「対話」した作家・作品はこれである。
このテーマに関心のある方向けに、本を1冊紹介する。
https://www.iwanami.co.jp/book/b606516.html
* * *
以上が、「アブソリュート・チェアーズ」展のわたしなりのダイジェスト&感想である。この展覧会の全般に目配せしたnote良記事(以下リンク)が既に存在しているので、あまりそれらと被らない切り口・構成を意識した。
折角なので、またテーマ的にも密に連動しているので、コレクション展ほかについても少しだけ紹介する。
もともとここ埼玉県立近代美術館は、「椅子の美術館」であることがアイデンティティの一つ。なのでデザイナーズチェアを積極的に収集し、極力実際に座れるように、提供している。そして展覧会場外のロビーにも椅子・椅子・椅子。全館椅子尽くしなのである。
美術館の立地する北浦和公園内の、普通のベンチ。しかしこの展覧会を観たあとは、このような何気ないベンチでも実はなにか問いかけているものがあるような感覚が、無意識に深読みしてしまうような感覚が、しばらく続く。
~展覧会および関連情報~
展覧会基礎情報
埼玉県立近代美術館では5月12日まで。
その後、7月12日から愛知県立美術館で。
図録(展覧会カタログ)
この展覧会の図録は、平凡社から刊行されている。会場の埼玉県立近代美術館のショップでむろん購入できるが、市販本タイプのため本屋でも買える。
特記事項
この展覧会に限ったことではないが、この展覧会では特に、空いている状況で観覧できると嬉しい。観るだけでなく座れる作品があったり、実物の椅子=立体作品として気に入ったものは他の鑑賞者に気兼ねなく自由なアングルで自由な時間を掛けて鑑賞したくなるだろうから。
埼玉県立近代美術館について
・「椅子の美術館」/「今日の座れる椅子」「今日みられる椅子」/コレクション展
・駅近。しかもルートがすごいわかり易い。
・立地する北浦和公園内にも、複数の屋外作品あり。ほどほどなコンパクトさ/ボリュームである点が、全点鑑賞したとしても疲弊しない程度で、良い。
~おまけ~
今回のお土産の集合写真(図録も買ったが、それは別)。だれかに見せるというより、記録作業/ルーティンとしていつもやってること。ただそれをちょっと凝ってみた。
今回、転がっていた百均グッズを適当に使ったら、意外に即興でアート?な写真に仕上がった。折角なので、ご覧いただこうかと思い掲載する。タイトルとかも、付けてみた。
お読みいただき、ありがとうございました。
ぜひ展覧会にも。
以 上