依依恋恋
「ただ自由に生きたい」
涙にぬれたその声が今も私の耳に残っている。
大きな瞳が好きだった。細かな咳払いが好きだった。
遠慮なく口を開けて笑う姿が好きだった。
好きなことにまっすぐなあなたが好きだった。
これを愛だと胸を張って言えたなら、私はあなたを守ることができたのでしょうか。
たとえ私が知らないあなたの一面があったとしても、あなたがどんなに人として情けないことをしたとしても、私はあなたを嫌いにはなれなかった。
「ただ自由に生きたい」
自由に見えたあなたは誰よりも不自由だった。
あなたの心を殺したのは、誰の何だったの?
それは私では救えなかったものだったの?
離れたのは私だったのか、あなただったのか。
離れられないのは私なのか、あなたなのか。
あなたにしか見えない愛を、あなたが見ているかもわからないのに今もこうやって零し続けている。
あの日、あなたを抱きしめることができていたら。
空を飛んで海を渡るあなたに「気を付けて」すらいえなかった。大好きだったあなたの目すら見れなかった。
たった24時間しか現れないあなたの今を、私はただ薄い板越しに眺めるだけ。
華やかな街頭で、あなたの涙は見えない。
多言語の喧騒で、あなたの息づかいも聞こえない。
遠く離れたその地でいま、ほんとうに自由ですか。
そんなことはもう聞くことすらできない。
言葉も愛も未完成で不十分だった私たちは
一番近くで一番遠くにいた。
依依恋恋
‐恋慕うあまり、離れるに忍びないさま。
依依