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「証拠の王、自白」今市事件(10)

 「虚偽自白」、これは非常に危険な証拠である。自白は、「証拠の王あるいは女王」と呼ばれ、人は嘘をついてまで自分に不利益な事実を認めることはないとの経験則の下、自白はその信用性が高く評価される傾向にあり、有罪認定の決定的な証拠となる場合が少なくないからである。

「なぜ、人は自白するのか (自分に不利益な事実を認めるのか)」堀 貴博著 2001年

 有罪の根拠とされる7つの間接証拠たちは、どう見ても女児と勝又受刑者を強力に結びつけるほどの証拠となっていない。これらの証拠は、勝又受刑者が犯行を行ったという前提があったとしても「整合性がある」程度のもので、「この人しか有り得ない」ものではない。
 これらの間接証拠の価値を無駄に押し上げたものが、自白だ。この事件はほぼ自白により有罪が成り立っているが、この自白は強要や恫喝によって誘導された供述である可能性が高く、今もその自白の信用性については疑問が投げかけられている。
 虚偽の自白といえば名張毒ぶどう酒事件しかり、狭山事件しかり、袴田事件や足利事件も密室の中で拷問や洗脳に近い方法での取り調べを受け、魂を削られ虚偽の自白を強要されている。

 法廷で被告人が否認した事件について、その主張通りに無罪が認められるものはわが国のばあい、わずか〇.二パーセントであるという(因みに、イギリスでは一五パーセント、アメリカ連邦裁判所では二五パーセント)

「自白の研究 取り調べる者と取り調べられる者の心的構図」浜田寿美男著 三一書房 1992年

 もちろん、一審から自白の信用性について議論はされているが、弁護側の主張はどれも虚しく無期懲役の根拠となり続けている。
 なぜ、人は自分を不利な状況に追い込むことがわかっていながら虚偽の自白を行ってしまうのだろうか。誰もがみな、「自分は潔白だから否認し続けることができる」と思っているだろうが、例え無実であっても虚偽の自白をすることは確実に存在する。

誤判研究における虚偽自白の割合は14〜25%を占めている。

「なぜ無実の人が自白するのか DNA鑑定は告発する」スティーヴン・A・ドリズィン、リチャード・A・レオ著 日本評論社 2008年

 私はするかもしれない、絶対にしない、などという空想は、実際に取り調べを経験しないと永遠にわかりっこない。私が言いたいのは精神論ではない。確かに、そして確実に「存在する」という「事実」だ。

 人の心理は複雑であるし、性格も人それぞれ異なるので、自白する動機・理由も様々であるが、自白する動機・理由がどうであれ、真実、罪を犯したから自白するのだと一般の人は考えると思われる。しかし、実際には、罪を犯していないのに虚偽の自白をする場合がある。

「なぜ、人は自白するのか (自分に不利益な事実を認めるのか)」堀 貴博著 2001年

 では、この今市事件ではその「虚偽自白」は存在したのであろうか。最高裁では自白の信用性についてどのように評価しているのであろうか。これらの取り調べは検察官A、警察官A、警察官B、警察官Cによりなされている。公判中では、
 「検察官は被告人の弁解にも耳を傾ける姿勢を示すとともに、被告人が取調べを拒絶する意思を明確にしていると認められる場合には、直ちに取調べを中止している」
 とあり、一審でも
 「『やっているなら正直に話せ』というだけでなく『やっていないなちゃんと言え』なども促して弁解にも耳を傾ける姿勢を示すー」
 とある。
 なお、前提としてこの取り調べは別件逮捕であり、本来商標法違反についての取り調べをしなければならないはずだ。逮捕中の別件の事件における取り調べは本来任意で行わなければならない。要するに、検察官はこれらの権利は守っていたと言いたいらしい。さらに続く、
 「2月25日の取調べにおいては、被告人が従前の約束を翻し、 Y検察官に厳しく追及された挙げ句、席を立ち上がり窓に向かって駆け出そうとするなどの様子も見られるが〜」
 「約束」というのは、勝又受刑者は後日自白することを検察官に言ってしまったことを指している。この日、彼は繋がれたパイプ椅子ごと窓に向かって走りだし、窓から飛び降りようとしている。すでに勝又受刑者はかなり精神的に参っていたようなのだ。しかし、これも適切に対応していたと判断されている。一審でも、
 「取り調べ中に身体の震えや過呼吸様の症状を呈するなど、質問の内容によっては強い精神的・肉体的負荷が掛かっている様子が見受けられ〜」とあり、
 「被告人は、取調べの当初から精神的に不安定な面を見せていたことから、2週間に1回程度の割合で医師の診察を受けて精神安定剤を処方されるなどしていた上、Y検察官が被告人の体調を気遣いながら取調べを進めていた様子も見られる」
 やはり別件の取り調べ中も検察官はかなりの配慮を行っていた、と言いたいようなのだ。そしてこのように判断されている。
 「被告人に対する取調べは、適切な権利告知任意の取調べであることへの配慮、体調への配慮が十分になされた形で進められており、供述の強要があったとは認められない」
 ということなのだ。何度でも言うが、この時は商標法違反で勾留されていたため、殺人についての取り調べは任意で行わななければならず、そのことは告知義務がある。つまりは本人が嫌と言えばいつでも辞めれるはずなのだ。このような状態は、仕組みを知っていれば誰でも拒否するはずだ。なのにも関わらず勝又受刑者が拒否しなかったのは、拒否できないほど執拗に繰り返されたか、または仕組みについて十分な説明がなされなかったのか、どちらかということになる。
 それでも、自白の強要はなかったとし、その自白内容についても
 「被告人が犯人でないとしたなら説明することができない事実関係が含まれているとまではいえず、客観的な事実のみからは被告人の犯人性を認定することはできない」
 と判断している。つまりは秘密の暴露はなかったのだ。では、勝又受刑者の言う取り調べの内容を見てみる。

「最初は商標法違反の取り調べで、『最後の確認だけで終わるから』と言われ、確認を終えた後、いきなり『君、人を殺したしたことあるよね』と言われた。私は頭?マークでいいえと答えると、『君しか考えられない事件があるのよね』と続けて聞かれた。私は再び、いいえ、と答えると、大友検事は机の上にある書類を持ち上げて机に叩きつけて、『だからキミにしか考えられないと言ってるだろ』と言ってきて、私は怖さで委縮して黙り始めました。
 そうしたら、『ほら心当たりがあるだろう』と言ってきて、私はいいえと言ったら、怒られ、言わないと『心当たりがある』と言われ、どうしようもない状態になりました。そのうちずーと怒鳴られ続けて頭が真っ白になりました。そこからの記憶が断片的になり始めました」。
「記憶として『凶器は帰り道に捨てたのか??』と聞かれ、私は頭を縦に振ったような感じになった。『服とかどうした??』。私は無反応。そうしたら大友検事が『燃えるゴミとして捨てたのか??』と聞いてきて、私は再び頭を縦に振ったような感じ。だいたいこんな感じで話を作られて、そのうち後ろの看守が私の肩を揺さぶり、そして調書にサインをと言われた。

真実探究と戦争廃絶を目指す
独立言論フォーラム「第23回 過酷な取り調べの内容が詳らかに・・・
https://isfweb.org/post-4445/

 これが本当なら、かなり馬鹿げた話だ。さらに、法廷で流された取り調べの映像は以下のようなものだった。

 3月10日の法廷では、商標法違反容疑で勾留中だった2月18日午後と21、25、27日の4日間の取り調べの映像計約110分が再生された。その映像の一部を再現してみよう。
 2月18日の午後
検事:「今から聞くのは吉田有希ちゃん殺害事件。カメラがあって、録音・録画している。言いたくないなら言わなくていい。殺人事件については逮捕していないので取り調べに答える義務はない。体調は大丈夫か?」
被告:「まあまあ」
検事:「午前中の取り調べで、やりましたと話したよね」
被告:「………」
検事:「覚えていないの。午前中のことだよ?」
被告:「パニックになっちゃった」
検事:「今市事件は栃木県内で有名になっていることは知っているよね」
被告:「うん」
検事:「君が起こしたということでいいのかな。無理なら言う必要はないが、正直にしゃべってほしい。午前中に言っていたじゃないか」
被告 「……」
 一部省略
映像の場面が変わる
検事:「午前中は置いといて、8年前の事件を聞かざるをえない。拓哉が殺しちゃったのは間違いないってことでいいんだよね」
被告:「……」
検事:「こっちもある程度分かっている。大変なことをやってしまったと思う。後悔しているだろう。今まで辛かったろう」
被告:「ちょっと時間…」
検事:「そしたら話してくれるのか」
被告: (うなづく)
検事:「殺したか、どうかだけ聞かせてくれ」
被告:「はー、はー」(息が荒くなる)
 一部省略
検事:「2、3日待ったらちゃんと話すか」
被告:「うん」
検事:「分かった。今日は終わりにしよう」
被告: (泣き始める)
 2月21日の取り調べ
検事:「8年前の事件。君が起こしたことで間違いないよね」
被告:「ふーふー」(息が荒くなる)
検事:「震えているけど、どうして」
被告: (泣き始め、手で涙をぬぐう)
検事:「2、3日前には話してくれると言ったよね」
被告:「ふーふー」
検事:「話せることだけでいい。やってないんだったらやってないとはっきり言ってくれ」
被告:「思ったより気持ちの整理に時間がかかる」
 一部省略
検事:「知らない女の子だった?」
被告:「知らない」
検事:「どうやって車に乗せた?」
被告:「声をかけた」
検事:「どうやって?」
被告:「お父さんに頼まれた。お母さんが大変だ。だから乗ってくれと」
検事:「お父さんとお母さんは知り合いか?」
被告:「知らない」
 一部省略
 映像の場面が変わる
検事:「アパートに行くまで何をしゃべった。どこに行くか聞かれたか?」
被告:「した。ふーふー、病院」
検事:「何で病院と言った。母親が大変で病院ということにしたのか」
被告:「分からない」
(場面が変わる)
検事:「車はどこに止めた」
被告:「アパート」
検事:「部屋に入った?」
被告: (うなづく)
検事:「どうやって部屋に連れて行った」
被告:「はー、ふー。」(顔を手で覆う)「途中の詳細は後にしてください」
検事:「お姉さんに言ったら詳細をしゃべるんだな?」
被告:「うん。早く、言って、本当に早く言いたい」
検事:「やってないということはないんだな。一言でいい?」
被告:「はーふー、それも後にして」
検事:「そこもダメなの。火曜日は殺したって言っていたじゃん」
被告:「本当に覚えていない」
検事:「刺した包丁はどこ?」
被告:「山」
検事:「山?どこの山」
被告:「はーはー、あー、これも後でお願いします」
検事:「何で言えない?」
被告:「重い、重い」
検事:「帰るときに車の中から捨てた?山に」
被告:「うん、うん」
検事:「帰るってどこから?」
被告:「あー、あー、茨木」
検事:「茨城の山に女の子の遺体を捨ててからか?」
被告:「帰り道に……」
検事:「帰り道。女の子を捨てた場所とナイフを捨てた場所は近いか?」
被告:「わかんない。帰り道に迷子になったかから」

真実探究と戦争廃絶を目指す
独立言論フォーラム「第9回 映像に頼るしかなかった裁判員」https://isfweb.org/post-2228/2/

 これらを勝又受刑者が罪の意識から自白したと果たして言えるのだろうか。

 2月25日の取り調べ
検事:「新しい気持ちで話してな。吉田有希ちゃんを殺したよね?」
被告:「昨日、姉と話せていろいろと心のつかえが取れて…。それでその後すぐ弁護士が会いに来た。やっと弁護士にちゃんと話せた感じだった」
(一部省略)
検事:「不利益におとしめようとか、そんなことないの。今、話してほしいわけよ。ずっと話さないつもりか。まあ、いつまでも悪夢を見続けろって話だけど」
被告:「あぁ…」
検事:「いつまでも遺族とかいろんな人間に恨まれ続けて生きていけばいいよ」
被告:「もう無理、もう無理、もう無理ーっ」(何回も叫んで腰縄で結ばれた椅子ごと立ち上がり、検事の後ろの窓に突進。取り押さえられる。画面が消えて3分ほど勝又被告の鳴き声が続いた。
 同月27日の取り調べ
検事:「今日も吉田有希ちゃんの事件について聴きますから。黙秘権はあります。任意の取り調べで録音・録画しています。こないだ火曜日夜は…(25日に突然、窓に突進したことについて)」
被告:「すいません」
検事:「どうしたんだ。別にいいよ。つらかったんだろ」
被告:「うん」
検事:「どんな気分になっちゃったの?」
被告:「飛び降りたら楽だなあって」
検事:「自殺しようとしたの。この間、姉と会ったら話すって言っていたのに、火曜は言わないで…。信じてたのに。葛藤もあってパニクったんじゃないの?」
被告:「何か壁があったから」
(場面が変わる)
検事:「逃げたい自分がいるのか。あれか、黙っていれば処罰されないんじゃないかみたいな一筋の希望を見だしたのか?」
被告:「弁護士…。弁護士と話せば話しているほど言えなくなってきて…」
検事:「自分がどうなるか怖くなっちゃったの。それはみんな怖いんだよ。でも段階を踏むわけ。凶悪犯罪した人も被害者や遺族を思って話してるわけよ。話さない人もいるけどさ」
被告:「話さない…。ずっと話さないつもりはない。自分でも耐えられないと思っている。ずっと話さないのは無理」
(一部省略)
検事:「先週はさ、しゃべっていたじゃない。しゃべっていたところ録音・録画してたし、君は真っ白で覚えてないって言うけど、調書もあるんだよ。それ以外にも君が犯人と思う証拠あるんだけど、今さらしゃべんなくなっちゃうのはみっともないと思うの」
被告:「いくら刑事に言われて、いくら思い出そうとしても全然…」
検事:「覚えてないの。パニクった?」
被告:「いや、もう、どうしたのか全然覚えていない。思い出すように何回も言われたけど…」

真実探究と戦争廃絶を目指す
独立言論フォーラム「第10回 捜査側にまずい取り調べ映像」https://isfweb.org/post-2369/

 ちなみに、一審では動機は「お金をもらいたかった」と述べており、凶器は「遺体を捨てた後に車から捨てた」など供述し、さらには「被害者を連れ去って自宅に戻ってくると、見知らぬ第三者が待っていた」や「被害者を拉致してアパートに連れて行った後に、助けを呼んだ男がおり、その男と一緒に殺害現場に行ったが、被害者を殺害したのはその男で、自分は現場に一緒に行っただけである」などその供述は激しく変遷している。
 なお、判決では商標法違反の逮捕後から殺人での逮捕前に行なった取り調べに違法性はなく、取り調べの録音録画から考えても、取調官による恫喝や暴行が加えられた事実はなかったと判断されている。
 断っておくが、これは検察官の取り調べに対してであり、警察による取り調べの内容に恫喝や暴行があったかではない。しかしこの時には、検察官からも、刑事からも取り調べは行われていたのは容易に想像できる。さらに裁判官はこう判断する。
 「取調官による誘導を受けた形跡がない」
 「あらぬ疑いをかけられた者の態度としては極めて不自然」
 「被告は処罰について強い関心を示し、処罰の重さに対する恐れから自白するかどうか逡巡、葛藤している様子がうかがえる」
 と、勝又受刑者の葛藤すら読み取ったと言い出した。

 はて、もう一度事件の流れを見てみよう。
 2005年12月1日、事件発生。
 2014年1月29日、ブランド品の偽物を所持したとして商標法違反で、勝又受刑者、実母、弟が逮捕される。
 同年2月18日、商標法違反で起訴。この日に宇都宮地検は殺人の取り調べを開始し午前中に最初の自白がされた。(とするが、わずか22行の検面調書が取られただけである)しかし弁護士との接見後、再び否認に転じる。検察官の取り調べの内容は録音録画がされていたが、警察の取り調べでは録音録画は一切されていなかった。
 同年2月24日、問題の手紙が姉に渡る。
 同年2月25日、検察官の取り調べ中に「もう無理」と叫び、体に結びつけられたパイプ椅子を引きずって3階の窓に向かって突進したが制止された。この様子も録音、録画されていた。
 同年3月4日、弁護士から宇都宮地検に対し別件取調べの抗議が行われる。
 同年4月8日、弁護士から宇都宮地検に対し再度別件取調べの抗議(2月25日から4月10日までは違法取調べの認定を受けている)が行われ、検察官による殺人についての取り調べは中止された。
 同年5月29日、銃刀法違反で逮捕。
 同年6月3日、栃木県警は殺人容疑で逮捕。
 同年6月11日、裁判の提出された録音録画された供述がこの日に撮られる。
 同年6月20日、殺人容疑での自白調書が取られる(2月18日から123日が経過)
 同年6月24日、殺人容疑で起訴。

 なお、取り調べだけでもその期間は3ヶ月半、255時間にも及んだ。5ヶ月近い間監禁され、毎日同じ話を厳しい口調でされるのだ。それだけでもたまったものではない。ほぼ拷問である。
 おそらく家からは偽ブランド品が見つかり、すでに申し開きもクソもない状態にも関わらず23日間最大限の勾留を行い、さらに期間が切れるタイミングで商標法違反で起訴している。これでまた時間を稼げるわけだ。
 そもそも、刑事事件の被疑者は逮捕の72時間と勾留の20日間を合わせて、最長で23日間の身柄拘束を受ける可能性がある。刑事訴訟法203〜205条によれば身柄が拘束された時点から72時間以内に検察官が勾留請求をしない場合は被疑者の身柄は解放されることになる。
 しかし、検察官が裁判官に対し勾留請求を行い、裁判官が被疑者が罪を犯したと考えられるかどうか、罪証隠滅や逃亡のおそれがあるといえるか否か等を考慮し勾留することを決定した場合は逮捕に引き続き身柄を拘束される。勾留の期間は勾留請求の時点から10日間身柄を拘束され、さらに10日間が経過してもやむを得ない事由があれば、さらに最大10日間身柄を拘束することができる。ここで検察官が起訴した場合、裁判が継続する間は勾留され続けることになる。
 時間切れが迫ると銃刀法違反を繰り出し、逮捕と勾留を延ばしている。商標法違反での逮捕勾留を経て起訴された後、100日以上も後に、殺人罪で逮捕勾留、起訴とおよそ考えられる最大限の引き伸ばし作戦が決行されている。これだけの不格好な引き伸ばしがなされたのは、途中で弁護士が違法取り調べをしていることを訴えたからだ。控訴審では殺人罪に先立ち、商標法違反罪で起訴した後の身柄拘束期間を使って44日間にわたる取り調べを行ったことは「社会通念上是認されないものであった」と認めている。
 おそらく、商標法違反での起訴直後から、殺人罪の取り調べは開始されたものの、取り調べの全過程の録音・録画が開始されたのは、殺人罪での逮捕後からであった。したがって、商標法違反による起訴から殺人罪の逮捕まで、長期間にわたり本件である殺人罪の取り調べが行われたにもかかわらず、その期間の取り調べの録音・録画はごく一部しか存在しない。
 この裁判で再生された取調べ状況の録画映像は検察官が女児殺害事件で再逮捕された6月3日以降のものしかないか、その映像はあるが秘匿されていると考えられる。勝又受刑者が最初に逮捕されて女児殺害事件で起訴されるまでの約5か月間のうち、録音録画がなされたのは再逮捕後起訴されるまでの23日間のみとなり、最初の逮捕から女児殺害事件による逮捕までの4カ月余の間は、女児殺害について取り調べが行われていたにも関わらず,その過程は録画されていない。
 一審では取り調べの録音録画記録媒体は自白の信用性を判断するための補助証拠として使われており、一審判決では検察にとって都合のいい場面だけが提出されていることは間違いない。
 なお、勝又被告は法廷で2月18日の取り調べの際には検察官Aに「ファイルを机に叩きつけられるなどの脅しを受けた」3月19日の取り調べの際には警察官Aからは、「顔面を平手打ちされるという暴行を受けた」「殺していないと言ったら平手打ちをされ、額を壁にぶつけてけがをした」「殺してごめんなさいと50回言わされた」「自白すれば刑が軽くなる」「自白すれば懲役20年で済むが、自白しないと死刑や無期懲役になる」など言われたと述べている。しかしそのような状況は当然録画されていない(ことになっている)いちいち書くが、3月19日は商標法違反で勾留されている真っ只中だ。

 痕を残さないような物理的および心理的強制技術(たとえばゴムホースの使用、窒息、長時間にわたる密室での取調べ、食事や睡眠をさせないこと等)、そして、たとえば刑の軽減や免除を約束したり不利益を与える脅すといった、より軽い形の心理的脅迫にまで及ぶ。

「なぜ無実の人が自白するのか DNA鑑定は告発する」スティーヴン・A・ドリズィン、リチャード・A・レオ著 日本評論社 2008年

 なお、警察官Aは「唐突に取り調べ室の壁に頭をぶつけて自傷行為に及んだ」と証言しており、警察官Cも「利益誘導ととられるような発言をしたことについては明確に否定した上で、弁護人から懲役20年か30年になると言われたなどと述べて落ち込む被告に対し、君はまだ30代だから懲役20年で出てきても50歳なので人生やり直せる」などと励ました、と証言している。

 虚偽自白に異常性を見るとすれば、当然、その異常性はむしろ被疑者のおかれた状況の側にあるというべきであろう。つまり、虚偽自白は、日常生活から遮断され拘束された被疑者が、その異常な事態に対して行ったひとつの正常な反応だと言っていいはずなのである。

「自白の研究 取り調べる者と取り調べられる者の心的構図」浜田寿美男著 三一書房 1992年

 頼みの綱の家族も同じ商標法違反で逮捕されており、誰一人として彼を助けることはできない状況だ。おそらくこれも計画して行われたのだろう。このような状況が100日以上続くなかで、それでも嘘をついてまで罪を認めることはないと果たして言い切れるだろうか。
 長きにわたる拘束期間、これは孤独を加速する。そして過剰な圧力、取調室の中ではどこにも逃げ場が存在しないのだ。これが女児の殺人事件ともあらば取調官からの重圧は凄まじいだろう。

 無実の人が自分のやっていない罪をみずから認めて、うそで自白することなど、およそありうることではないと思う人が多い。もしうその自白があるとすれば、過酷な拷問があって耐えきれなかったか、あるいは被疑者が知的能力が低くて自分の身さえ守れなかったか、どちらかだろうと考える。

「自白の心理学」浜田寿美男著 岩波新書 2001年

 このような状況では虚偽の自白は容易に起こりうると言われている。「私はそんなことはしない」などと個人の意見や決意や主観を聞いていない、現象として「起こる」のだ。
 虚偽の自白には大きく3つのタイプがある。ひとつは自分の側から名乗り出る「身代わり自白」、ひとつは自分の記憶に自信を失って自分がやったのかもしれないと思い込む「自己同化型」と呼ばれるものだ。そして冤罪で無辜の人間が起こすのが「迎合型」と呼ばれるものだ。

 そして三つ目は、同じく取り調べの強圧にさらされて、自分がやっていないという記憶そのものまで揺らぐことはないが、この辛さに耐えきれず、相手のいうままに認めてしまう迎合型の自白である。これがうその自白のなかでもっとも一般的なものである。

「自白の心理学」浜田寿美男著 岩波新書 2001年

 閉鎖された空間で長い間力を持った人間から迫られれば、逃げ場はなくなる。一度認めても裁判で無実を訴えれば証拠は存在しない訳だし、とりあえずはこの苦境は乗り越えることができる、と考えてもまったくおかしくはない。

 さらに被疑者は取り調べの場で、自白を迫る取調官によってその罪を非難され、ときに人非人として罵倒される。無実の人間にとってはお門違いの非難なのだが、だからといってこれに平然と対応することは難しい。私たちも日常生活のなかで、ときに他者と衝突し、相手から強く非難され、あるいは罵倒されたりすることがまれにはある。それだけで十分ショックなのだが、しかしそれはせいぜいのところ数分ですむ。一時間あるいは二時間と持続して、相手から非難され、あるいは罵倒されつづけるという経験はまずないだろう。取調べの場ではそれが何日もつづくことがある。そうした目にあえば、ただことばだけであっても、人は立ち直れないくらいに傷つく。それは肉体的な暴力に匹敵する。

「自白の心理学」浜田寿美男著 岩波新書 2001年

 そういえば、狭山事件において薬研坂で怪しげな三人組を見たと通報した男性も、善意で警察に届出を行ったのにもかかわらず犯人と疑われ、苛烈な取り調べを受け鬱状態のようになって帰ってきて、挙げ句の果てには自殺した。
 捜査機関側もプライドがかかっているため、尋常ではない決意と覚悟で捜査と取り調べに臨んでいることだろう。もしかしたら正義の執行のためには多少荒療治も仕方ないと思っているのかもしれない。彼らには特殊な認知の歪みが存在しているように私には見える。

 頑強に否認する被疑者に対し、「もしかすると白ではないか」との疑念をもって取り調べてはならない。

「犯罪捜査一〇一門」増井清彦著 立花書房 2000年

 こう考える強面の刑事、検察官が「コイツが絶対に犯人である」という摩訶不思議な確証バイアスを働かせながら、正義のため、女児の敵討ちのため、新たな被害者を出さないために、絶対に犯行を認めない変態と対峙していると思っている。

 しかも追及する側は、おおくのばあい、問題の出来事に立ち会った当事者ではない。取調官などはあくまで第三者である。その第三者でしかない人間が、根拠もなく物事を確信することはないだろうと思われやすい。しかしこれまた、現実はそう単純ではない。人はどのようなときに確信をもつかを考えてもらえばよい。私たちは素朴に、握っている証拠がたくさんあるほど確信は強くなると考えやすい。しかし現実の事例をみればすぐにわかることだが、人の抱く確信の強さはかならずしも証拠の強さに比例しない。

「自白の心理学」浜田寿美男著 岩波新書 2001年

 虚偽の自白に至る検察官の再現動画などを見ると、実に面白い。屁理屈を並べたて、情に訴え、時には怒鳴り散らすのだが、それは全て検察官が描いたストーリーに整合しない事実が出たときだ。これは何だか、給食費が無くなったクラス会議で、犯人が手をあげて名乗り出るまで目を伏せさせ、永遠に待っている教師のようにも見える。
 自白の研究で有名なドリズィン教授らは、確実に無罪であることが証明された125件の冤罪事件の分析を行なっている。その分析データによると虚偽にも関わらず、取り調べを始めて早い人であればわずか6時間未満で虚偽自白をすることがわかっている。

 取調べ時間がわかってるもののうち、虚偽自白まで6時間以下の事例が16%、6時間から12時間が34%、12時間から24時間が39%、48時間から72時間が2%、72時間から96時間が2%で、取調べ時間の中央値は12時間である(短時間のうちでも虚偽自白が引き出されている)。公判審理を選択した者のうち、有罪となった者は81%であり、多くの場合、裁判官と陪審員は、虚偽の自白に基づいて無実の被告人を有罪としている。

「なぜ無実の人が自白するのか-DNA鑑定は告発する」(スティーヴン・A・ドリズィン+リチャード・A・レオ)として、日本評論社

 結局、最終的な判決では客観的証拠について、
「被告人が犯人でなければ合理的に説明できない事実は含まれていない」
 とする一方で、自白については
「想像に基づくものとしては特異ともいえる内容が含まれている。体験した者でなければ語ることができない具体的で迫真性に富んだ内容だ」
 としている。「真犯人じゃないかもしれないけど、言ってることは超リアル」一体どっちなんだ。さらに、
「客観的事実によれば被告人が殺害犯人である蓋然性は相当に高い」
 と言いながら、
「それのみから被告人が殺害犯人であると認定することはできない」
 と言い出し、
「本件自白供述の任意性に疑いを入れる余地はない」
 とした。さらに、
「犯人でなければ語ることのできない具体性、迫真性を有しており、取調官の誘導やそれに基づく被告人の想像の産物としては説明が困難な具体的事実について述べられた部分が多々含まれている」
「一見すると不合理ではないかと思われる部分も含めて客観的証拠を詳細に検討すればその内容が事実と矛盾する点はなくむしろよく整合している」
 勝又受刑者は超演技派で、色々言ってることは変だけど、全部をまとめるとスッキリするよね。と評価し、
「供述の変遷は処罰を免れる術がないかを逡巡したためであり供述態度からは起訴を免れないならばできるだけ早く自白供述をして受ける刑罰を少しでも軽くしようという自白に至る動機が認められ」
「本件自白供述には遺体に認められた顔面や頭部の傷害結果が発生した経緯やわいせつ行為後被告人方を出発するまでの数時間の行動など十分な説明がされていない部分や解放するために連れ出したとする被害者が全裸のままであったことなど不合理と思われる部分が散見される」
 ことも
「被告人が上記のような動機に基づき本件自白供述をしたために、取調官から追及されなかった不利益な事実についてはあえて供述しなかったものと考えれば、十分に首肯することができるといえる」
 現場の状況と違うとこはあるけど、罪が重くなるの嫌だからって観点からするとまあ普通だよね。などとした上で、
「被告人が認めざるを得ないと考えて供述した本件自白供述における本件殺人の一連の経過や殺害行為の態様、場所、時間等、事件の根幹部分については、十分に信用することができる」とした。
 なんか、後からどうとでも言えるなら、何でもありなんだなと素直に感じる。

 取り調べは明らかに対決的で、操縦的で示唆的な心理的手法を用いている。取調べの目的は、自白を引き出すことであって、被疑者が真犯人かどうかを決めることではない。

「なぜ無実の人が自白するのか DNA鑑定は告発する」スティーヴン・A・ドリズィン、リチャード・A・レオ著 日本評論社 2008年

 不思議なのだが、怪しげな間接証拠たちはそもそも自白があるからこそ成り立っている。そのため、自白が怪しいとなると全てが怪しくなるのだ。そうなれば全ての間接証拠はスケープゴートづくりのためのただの言いがかりだ。
 そして、こういうのを何と言えばいいんだろう。
 そうだそうだ、茶番だ。

 強制、拷問又は脅迫による自白、不当に長く抑留又は拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。

刑法38条2項

 最後に、自白の状況について勝又受刑者の認知した内容を載せる。

 「刑事から『ずーと車をグルグル回るわけじゃないでしょう』と言われ、私は夜の6時~7時頃にアパートに戻ったと答えました。
 そうしたら『そこから何をしたのか??』と聞かれ、有希ちゃんを部屋において、私は床に座ってどうしようか、悩みました。大変な事をしてしまったと、頭を抱えて床の上でどうしようか、悩んでいましたと答えた。なぜなら普通の人ならそうすると考えたからです。
 そうしたら刑事から『ずーと悩んでいられないでしょう』と言われ、それで適当にテレビをつけて見せました(有希ちゃんに)と答えたら、刑事から『何を見せたの??』と聞かれて私は、逆に刑事に12月1日って何曜日?と聞きました。
 刑事からは『木曜日』という情報で、ポケモンを見せたと答えました。なぜならば、私はアニメ大好きで、月曜はコナン、水曜はナルト、木曜はポケモン、金曜はドラエモン、日曜日はちびまる子ちゃんとサザエさんです。
 刑事からは『ずーとアニメを見てるわけではないでしょう』と言われ、私はロリコンで、『誘拐してやる事やらないでどうするの』ということで、いたずらをしたことを答えた。
 そうしたら刑事から『有希ちゃんをおとなしくさせるためになにかしなかったのか??』と聞かれ、私はおとなしくしないと殴るぞとか言ってたと思うと答えた。そしたら刑事はそれだけじゃ納得してくれなくて『当時部屋に危険な物はないのか??』と聞かれ、私はナイフで脅したと答えたら、刑事は『今回キミの家で差し押さえたスタンガンの箱があるけど、これを使わなかったのか』と聞いてきたので、私はあー有希ちゃんはスタンガンをやられてたのか、と悟り、ここは、とりあえず、答えを合わせようと、スタンガンを使いました。
 そうしたら刑事から『どこにあてたの??』と聞かれ、私は(本当は使用していないので)分からないから手と答えたら、『手のどこ??』と聞かれ、私は手首からひじの間と答えたら、刑事は、『もっと上じゃないのか??』。そしたら私はひじから肩と答えたら刑事は不満そうに『左?』『右?』と聞いてきたので右と答えたら、刑事はそこで満足しました。
 そうしたら『スタンガンを当てて有希ちゃんはどうした??』と聞かれ、私は考えてました。以前自分にあてたことがあって、鞭で打たれたような痛さ、その時の感想で痛いといったんじゃないかと答えました。おとなしくしないともっとやるぞと言ったと思うと答えました。
 後に検事から有希ちゃんの遺体には、右腕じゃなくて、首の右側にスタンガンの痕があると教えられ、私はあーそれなら私の勘違いで首に当てたかもしれないと話を合わせていきました。『スタンガンはいつ買ったの??』ときかれ、私は大分前の事でよく覚えてなくて、かといって、全く覚えてないと言ったら、また怒られるから、適当に数ケ月前に買ったのですと答えました」
 「そして、刑事に『有希ちゃんにスタンガンを当てて痛いと答えたということは、口のガムテープがゆるんだんじゃないのか』と聞かれ、私はあ、はい、貼り直しました、と答え、私としては口のサイズにガムテープを切ってはったと言いたかったのか、検事からは『口のあたりから頭の後ろに回るような感じでまいたんじゃないのか』と言われて、私は、あ、よく覚えてないが、そうしたのかもしれません、と話を合わせていきました」
 「そうしたら、刑事は『目はどうした』と聞かれたので、私は多分貼られていたからこそ、刑事が聞いてきたのだろうと、それで話を合わせていきました。目もガムテープで貼ったと思いますを答えました。『それからどうしたの』と聞かれ、私は有希ちゃんの両手は縛られているから、服はどうすればいいのかと、考えました。そしたらハサミで切ったと答えました。足はしばったと言っていないから普通に脱がせたと答えた。パンツも普通に脱がせたと答えた」
 「最初刑事の時『いたずらをし終えてどうしたの』と聞かれ、私は寝ました、と答えました。『いつまで寝てたの』と聞かれ、私は次の朝と答えたら、刑事が怒りだして『Nシステムでキミの車の走行記録があるのよ、その日の夜、車で出かけてないのか』と聞かれ、私はあー出かけました。そうしたら刑事は地図を出して、『Nシステムがここで記録されているけど、キミの所に行ったの??』と聞かれ、私は幾つかのルートを示したけど、どれも刑事が欲しい答えじゃなくて、それで実際に行ってみることにしましょうとうことになって、ついでにナイフも探そうということで行きました。
 刑事が行ったルートは、母が以前行っていた茨城の一乗院という所に行くときのルートでした。行きながら地図を見せられ、カーナビもあって、私はルートを何とか覚えられました。それで地図を書かされて、やっと刑事の希望通りにルートをかけました。
 それでいたずらをし終えて、有希ちゃん連れ出して茨城にいったということになって、『どうして茨城なの』と聞かれ、遠くと思ったからとしか答えようがない、実際に当時と遠くと思い浮かぶものは、神奈川の大和か町田とかもあり得たけど、刑事が欲しい答えは茨城だから茨城としか答えるしかなかった。
 それで、『外に連れ出すときに何したの』と聞かれ、私は多分ズボンをはかせたと思うと答えた。
 刑事からは『足首にもガムテープを縛らなかったのか??』と聞かれ、私はあー多分したと思うと答えた。そして有希ちゃんには白色のジャンパーを着せたと答えた。そして有希ちゃんを抱え刑事の時は後部座席に置いたと答えた。その後『後ろに座らせるのは不安じゃないか』と刑事か言うので、助手席に座らせたと答えを変えました。そして車を走らせ、刑事が言う現場(地図で)付近で頭でいろいろ考えてわけわからない道に入った。それが現場ということになった。
 私はそこで殺害することにしたという話と、刑事からは『ナイフはどこに置いてあったの??』と聞かれ、私は車をいじるのが好きで車のダッシュボードに置いてあったと答えた。車をいじるのに軍手もよく使ったので、軍手も使ったと答えた。そして刑事は『ナイフはいつ買ったものなの??』としつこく聞いてきたので実際はわからないけど、答えないとまた怒るし、それで事件の何カ月か前に買ったと答えた。
 変な話、『ナイフに指紋をつけたくないから軍手をはめた』とか言ってるけど、ナイフはそもそもすでに私の指紋だらけで、今考えると、おかしい言い訳だよなーと、それで『有希ちゃんを降ろして直ぐに刺したのか』と刑事に聞かれ、私は、無言でした。そうしたら刑事は『真っ暗な中で刺したのか』と聞いてきて、私は考えました。そして車の前に連れて行き刺したと答えた。
 そうしたら刑事は『10回刺し終えるまで、有希ちゃんはずーと立ったままだったのか??』と聞かれ、私は人間そんなに立てないだろうと考え、5回くらい刺したら膝が崩れたと答えました。残りの5回はそのまま肩をつかんで刺し続けましたと言いました。
 再逮捕された後、現場に行ったことがあって現場はとっても細い道でバックとかできるような場所じゃないので、『有希ちゃんを殺してそのまま置いたの??』と聞かれた時は、私は斜面に投げ入れたと答えました。阿部検事は『1回だけ投げ入れたの??』もう1回みたいな感じで聞かれたので、もう1回何歩か歩いた後に投げ入れたかもしれないと答えを合わせていきました。

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