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「偽装された2時間半」番外編 葛尾を歩く 名張毒ぶどう酒事件

 名張市葛尾地区を歩いてみました。本当は当時の葛尾公民館が見たかったのですが、37年前に既に取り壊されて現在は存在していません。

 この集落から次の集落までは離れており、葛尾地区は限界集落のように周囲を山で囲まれた袋小路のようなところにあります。近くに名張市があるのですが、すぐ近くというわけではありません。どう考えてもここにわざわざ外部から誰かが侵入して服毒を企てるという事は考えづらいでしょう。

 これが事件のあった60年前となると、何だか諸星大二郎の漫画に出てきてもおかしくない、ひと昔前は独特な民間信仰が普通にあったようなところに見えてしまいます。集落自体も広くなく、歩いて集落の端から端まで簡単に行けます。

筆者が勝手に抱いていた当時の葛尾のイメージ(これは悪魔の手毬唄)

 特に観光名所などもないところです。狭い集落で、外部からの関与は起こりにくいでしょう。

葛尾地区(写真:筆者)
この寺の裏に公民館はあった(写真:筆者)
旧公民館跡地(写真:筆者)

 ここで愉快犯的に毒を撒くものはおそらくいないでしょう。誰かを毒殺しようと思うのなら、井戸にこっそり入れたり、目標の家に忍び込んで、飲み物に投入する方が遥かに楽だし確実だし捕まらないでしょう。大っぴらに行う必要性がないのです。

 ここは、古くからいくつかの血族で集合しており、誰もが互いの顔を知っていたことでしょう。ここで誰かが不埒な密会などしてようものなら音速で広まることでしょうね。

公民館があった跡地から葛尾を望む 写真(筆者)

 訪れて感じることは、確実に集落の人間による犯行でしょう。明確に誰かを殺そうとしていたとは考えにくく、ちょっとした騒ぎを狙っての悪戯程度の犯行だったように感じます。少量の農薬で人がこれだけの人が死ぬとは考えていなかったのでしょう。

新しい葛尾公民館(写真:筆者)

 日中に歩きましたが、住民の方は誰も見かけませんでした。確かにここに何十人もの記者が詰めかけ、警察がウロウロしている状況はとんでもない異質な状況で、さぞ早く元の暮らしに戻りたかったことでしょう。

 しかし、不思議です。
 こんなところで毒殺事件が起これば、犯人が逮捕される可能性はかなり高いはずです。不特定多数を狙ったテロ的な犯行であれば、犯人候補などは簡単に浮かび上がらないでしょう。特定の危険性が高いにも関わらず、犯行を犯してしまったのなら、衝動的な犯行が考えられますが、それにしては見つからないようにする細工が細かい。何か鬱憤を発散したのでしょうか。随分と意地の悪い人間な気がします。



 やはり、現場を見ても私の見解は変わりません。私の妄想では、妙子が犯人だと思っているのですが、彼女はなぜ農薬を入れたのでしょうか。
 昔の妊婦はあまり歩き回らず出産まで家でじっとしていることが多かったと聞きます。嫁入りして近くに友人もおらず、さぞかし毎日暇でフラストレーションが溜まっただろうなと勝手に考えておりました。
 初産でようやく久しぶりの実家に帰ることができ、一息ついたのに、自分の家に若い人が化粧なんかして集まって、男女で宴会するために慌ただしく料理を作っている。気に入らないと思うこともあるでしょう。
 家を占拠して他人の合コンの準備をせっせとしている訳で、自分も元三奈の会会員だったなら更にイラっとしたのかもしれません。しかも、自分は参加できないのに、と言ったところでしょうか。
 大石家で葡萄酒瓶が置かれてから3時間の一人供述時間差プレイを始めたのは妙子ですし、家庭用のりを使って封緘紙を貼り替えられますし、時間はゆっくりあるのですから、誰もいない部屋でいくらでも細かい細工ができる訳です。

 そして、この事件を調べていて何度も感じた所感は、奥西さんって本当かなりのイケメンだということです。

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