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kiki vivi lilyの歌詞のおっさん臭さがクセになる話

ガーリーに潜むおっさん


最近興味深く聴いている歌手はkiki vivi lilyである。
最近といってもkikiはプロ歴が10年になるベテランなので今更といえば今更だが。
前々から何曲かは知っていて、ウィスパーボイスを洗練された今時のポップミュージックのサウンドに乗せるガーリーな感じ、ポストcharaとかaikoとか。
と思っていたがふと80denierという曲の歌詞を聴いてみたら
なんだこれは。

おっさん世界じゃねえか。


実は男目線という伏線

物語としてはなんやかんやホテルに連れ込まれる「彼女」の心象というやや下世話なものだ。
曲の冒頭部分は次の通りである。

80デニールのタイツを履いてきたわ
60デニールじゃちょっと違うの
都会の真ん中でいつでも見つけられるよう明るい色を
明るい色を

80denier/kiki vivi liliy

都会の風景と彼女の履くカラータイツのコントラストを視覚的に印象づける描写だが、この鮮やかさによってこの歌詞の視点は「彼女」ではなく「彼女」を見る男に置かれている。


極めつけはBメロからサビの流れ。

階段を10段登ってゆく間中考えていたの
とびきり素敵な彩りを
すべてあなたに捧ぐの
わたし

同上

あー、はい、ラブホに階段があるのね

というのとここで階段を「降りる」としては話が成り立たない。登らなければいけないのだ。

とびきり素敵な彩り
うーん言葉のチョイスがおっさん臭いけど、冒頭のカラータイツの描写と対応している。
これにより曲の視点はあくまで「彼女」を見る男側だと強調しサビへ続く。

ねぇ今触ってもいいんだよ
恥ずかしがっていないでよ
わたしだって本当はこそばゆい
ねぇ今触ってもいいよね
そうきっとちょっぴり期待してる
恥ずかしがっていないでよ

同上

あー、はい。
このシーンは完全に「彼女」の語りかけを聞く男の側ですね。もうきっと青年漫画のエロシーンの世界です。


ストーリーテリングの上手さと女友達いなそうな「彼女」

歌詞としては「彼女」のモノローグの形をとりつつ、色彩の描写をキーにして「彼女」を見る側の視点にスライドしていく構成がとても面白い。
作詞家として楽曲提供なんかもやっていきそう。っていうかもうやってるのかも。

あとkikiのリスナー層は実は女性よりも男性のほうが多そう。
kikiの他の歌詞でも思ったが、こういう女(≠kiki vivi lily本人)って女からはあまり好かれなそう。
彼氏の女友達にいたら絶対に嫌がられるタイプ。

彼氏に近付けたくない女のイメージ

キャラ設定も歌詞も曲も本当に巧みの一言。

余談
あと制作陣に学生時代の知り合いがいて少し驚いた。すごい売れっ子になってるんなあ。



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