シアトル発のソーシャルビジネス5選★その3:コーヒーで若者就業支援
今回はコーヒー事業を通じて若者の就業支援をするStreet Bean Coffee Roasters(以下Street Bean)をご紹介します。
3.コーヒーで若者就業支援「Street Bean」
Street Beanは18〜24歳の住所不定の若者たちに対し、コーヒーを通じて就業訓練をしている団体です。
「シアトルがあるワシントン州キング郡で、1500人以上もの若者(12〜26歳)が住所不定であり、そのうちほとんどが自分ではどうしようもできない理由により成功の機会から遠ざかってしまっている。」とStreet Beanのホームページにあります。
そんな社会問題を美味しいコーヒー(シアトルと言えばコーヒー!)を通じて解決しようというビジネスです。
アイリープではCareer Discovery Abroadプログラムの現場視察先としてStreet Beanを訪問しています。訪問の際、マネージャーのKaya(カヤ)さんに聴いたお話を基に書きます。
現在10人の正規スタッフと、4人の訓練生がいるそうです。
訓練生は、提携先のホームレス用シェルターに滞在している若者や、口コミで知って申し込んできた路上生活中の若者など。
訓練プログラムは4カ月。最初の1か月は、オフキャンパスでの訓練があり、次の1か月はお店の環境に慣れるためのトライアル期間。それを過ぎるとお店でコーヒーを作らせてもらえるようになります。
お店では、接客、現金の取り扱い方、コーヒーの淹れ方と煎り方、掃除などを学びます。
訓練生のプログラム中の勤務時間は週に15~18時間で、週100ドルの手当てが出ます。
プログラムを卒業したら実際に別の場所で就業することが目標です。そのために履歴書作成など就業のためのサポートもするそうです。現在約80%の参加者が卒業後無事仕事を見つけているとのこと。
アイリープでも現場視察で何度かお店に行っていますが、スタッフさんたちはいつも笑顔で堂々としていて、正規スタッフと訓練生の区別がつかないほどでした。
(写真右がKayaさん)
だけどKayaさん曰く、チャレンジもたくさんあるそうです。
一番のチャレンジは、訓練生が時間通りに来ない時があること。
原因は人それぞれですが、
・これまでに働いた経験がないために、毎日仕事に来るという習慣をつけることが難しい
・不安(過去のトラウマなどが影響しているのかもとのこと)
・慣れ親しんだコミュニティを離れ、新しい環境に適応することが難しい(路上生活者のコミュニティの中には、働きに行くことを良く思っていない人たちもいるそうです)
などが考えられるとのことでした。
また、家庭の事情や、訓練に馴染めないなどの理由で、プログラムを途中で辞退してしまうケースもあるそうです。
Kayaさんは自分の両親が毎日仕事に行くのを見て育ったので、「毎日仕事に行くことが当たり前」でした。
しかし、そうではない環境で育った人たちの「自分とは全く異なるものの見方」があると知り、自身の「Privilege(特権)」を見直す必要があったと言います。
そんなKayaさんがStreet Beanで働くモチベーションは、「コーヒーが大好きだから」だそうです。
Street Beanはコーヒーにもとてもこだわっていて、淹れる時に重さや時間をはかるのはもちろん、豆は農家さんからできるだけ仲介を入れずに大手のコーヒー会社よりも2倍の額で買い取るなど、
・サステイナブル
・エコフレンドリー
・フェアトレード
・美味しさ
にこだわったコーヒーを提供しています。
もともと特にソーシャルなことに興味があったわけではなかったKayaさん。Street Beanで働き始めてからは、「同じように美味しくて質のいいコーヒーを提供するなら、社会に貢献するコーヒーを提供する方がいい」と思うようになったそうです。
文:スタッフはるか
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シアトルのソーシャルビジネス5選
1.Samaritan:モバイルアプリでホームレス支援
2.Tiny Trees:教室のない幼稚園
3.Street Beans Coffee Roasters:コーヒーで若者就業支援
4.Theo Chocolate:オーガニック&フェアトレード
5.Fare Start:就業支援レストラン
iLEAPウェブサイト:http://ileap.org/ja/