2018 ベストトラック

毎年言い訳のように書いてるんですが、今年はほんとに新譜聴かない一年でやったなー。便利な世の中になったっつてもやっぱり、外部刺激が無くなるだけで音楽にアクセスする意欲が減るんだなーと実感したアフリカ生活。
ポップ・ミュージックの世相もほとんど追っかけずに、たまーにspotifyのプレイリストを聴いたり、好きなアーティストの新譜が出たら暇なとき聴くってくらいだったので、音楽的背景ほぼわからないままですが、気に入った10組+番外編を挙げました。
アルバム単位でも聴いてないので「ベストトラック」とさせて頂きます。それでは!

Alice Merton/No Roots 

ドイツの女の子。SSW的なプロフィール書いてあったから自分で曲作ってんのかな?
いや、どキャッチーでいいですよね、シンプルに。
ドラムが淡々と四つ打ちで鳴ってて、エレキのリフがアクセントとして「ジャカジャカジャカジャン!」みたいに入って。歌もちゃんとうまい。
アフリカにいてもフランス系のスーパーやダンスのBGMで使われていたので、大変ポピュラーに聴かれてる曲なんだと思います。


Superorganism/Everybody Wants To Be Famous
今年はフジロックのレッドマーキーを入場規制にし、単独公演はチケット即完、宇多田ヒカルからのオファーで「パクチーの歌」をカバーするなど、確実に日本でも知名度を上げた感のある彼ら。
昨年は単発で曲をネット上に挙げていたけど、今年はアルバム出ましたね。(あんま話題になってない印象なんですけど、これ今年ですよね?笑)既発曲含め大変良い作品でした。アルバム単位だったら多分一番聴いたと思う。感情を抑え気味に淡々と歌われるVo.オロノとそれに対して後ろで鳴ってるオケはハッピーでサイケデリック。CHAIと対バンツアー回ったりとか、日本のアーティストのフックアップもいい感じ。「わたしらは好きな事やってるだけだけど、もし気に入ってくれたらそれは嬉しいです」みたいな感がとてもいいので今後もどんどんいい曲作ってくれたらいいなと思います。


BRACKHAMPTON/1999 WILDFIRE
んでもって集団で曲を作る若き才能たち、と言う意味ではSuperorganismと共通すると思ってるのが彼らBRACKHAMPTON。

"12人のメンバーで構成され、それぞれのメンバーは違う役割を持ち、新しい創作活動を企てている。ラッパーやディレクター、フォトグラファー、エンジニア、プロデューサー、グラフィック・デザイナー、そしてDJと、彼らがやりたいことを追求し続けている。"(出展:qetic japan)

とのこと。全然詳しくないんだけど、Spotifyのプレイリスト聴いてたら流れてきて、すっげーかっこいいなと思った。「La-la-la lalalalala!」のとこシンガロングしたくなる。
アメリカでビルボードチャート1位獲ったらしいけど、内容的にはライブチケットの限定購入権利とかつけたというのがあったらしく、アメリカもやることあんま変わんないなと思ったり笑
でもてことはライブに行きたい人が沢山いるってことだよね、10代辺りから支持厚そうだなと思う。


BAD HOP/Kawasaki Drift
んでその流れで言うと「今日本のギャングスタ・クルーと言えば」と言ってもいいくらいになった感のあるBAD HOP。武道館公演も成功させて、すごいですよね。
詳しくないですがこういうビートのことをトラップっていうのかな?日本語って多分乗せづらいと思うけど、欧米のそれに近い感じに聴こえますね。冷た~い感じも煙を吐く川崎の工業地帯の風景を連想させる。
それぞれのMCみんな立ってるし、すげー世界で生きてきたんやなって思わされるリリック書いてるけどやっぱT-Pablowの

『川崎区で有名になりたきゃ 人殺すかラッパーになるかだ』

ってバースがめっちゃくちゃパンチ効いてるよね。やばすぎるわ。そのあとの

『役づくりじゃなくてこれは生き様』

っていうのも徹底してる(でも本来はこれが彼らにとっては日常であり普通だったのであって、これを「すげー世界」と思ってしまう自分たちが如何に断絶した暮らしをしてきたか、ということなんだと思いますが)。
磯部涼さんの書いた「ルポ川崎」も早く読みたいところ。


Cardi B,Bad Bunny,J Balvin/I Like It
恥ずかしながらCardi Bも全然詳しくないんですけど。とりあえずアメリカで今年めちゃくちゃ売れた曲のフィメール・ラッパーらしいということくらい。これもSpotify経由で聴いたんかな?普通にアガる曲でした。これもトラップビートってやつですよね?。ラテンっぽいニュアンスもありつつすごい流行最先端って感じ。昔はこういう煌びやかなで派手派手しいラップなんて全然聴けなかったんですけど、歳とってきたからか、色々趣向も変わってくるもんですわ。


Track's/GreenHouse
さて、ラップが続いたのでここで私の本来の畑である、メロコアから一曲。
最初聴いた瞬間の印象:「おまえら、どこのSHANKやねん!」
両者に失礼は承知ですが、ほんとにそう思いました。でも僕SHANKまじ大好きなんすよ。だからこんなん好きに決まっとるやろ、と。しかもレーベル見たらNinth Apolloって。しゃんくの元レーベルやないかい!今流行ってるよね~、ナインス。
もう長い事メロコア界隈ってニューヒーローが誕生してなくて、今でもテンフィとかダスト、果てはハイスタがAIR JAMやったりなんかしてなかなか新しくずばーっと来る人がいないなあって言うのが僕の印象なのですが、ひっさびさに切り込んできてくれる存在が表れたのではと思います。一時はWANIMAがどうにかなるんじゃないかと思っていたこともありましたが、彼らは形を変えたファンキーモンキーベイビーズになってしまいましたしね。
話が逸れました。

「地元、静岡UMBERを拠点に活動するスリーピースバンド」

「地元」「拠点」「スリーピースバンド」うーん、良い字面!笑
インタビューも幾つか読ませて貰ったんですが、
「難しい事わかりません!かっこいいと思ったものだけやりました、あとはよろしくかかってきやがれああああああ!」
みたいな頭の悪さも含めて愛せる(笑)まだ高校卒業したてだっていうからほんと、今はその思いだけでぶっちぎって行って欲しいとこです。若い頃にしかうまれないうねりってあるはず。
日本帰ったらライブいきたいです。オフスプリングとの対バンとか行きたいな。


Ezra Collective/Mace Windu Riddim
こちらも全く詳しくないですが、めちゃくちゃかっこいかったので。Jazz the New Chapterの柳樂さんが作ったプレイリストかなんかに入ってたんだった気がします。
あのスター・ウォーズのジェダイマスターの名を関した曲ですが、好きなんでしょうかね?どの辺に彼の要素があるのかはいまいちわかりませんでしたが、緩急の効いたスリリングな演奏、ストリート・ジャズ発の自由さを感じさせる溌剌としたアンサンブルはつい足を止めて聴かせるだけの実力があるかと。
中でもキーボードのジョー・アーモン・ジョーンズは「ロバート・グラスパーへのUKからの回答」とも評されており、やっぱりこれからのUKは盛り上がってくんじゃないかなあという期待を持たせてくれますね~。


Goat Girl/The Man
そのUKのインディー・ロックの新星として今年押したかったのが彼女たちGoat Girl(これ書いた後で見つけたParquet Courtsもすごいよかった)。
サウス・ロンドンの酒場から現れたと言わんばかりの武骨なガレージ・ロック。気怠そうにものぐさに言葉を飛ばすが、どことないエロさも感じられる。ちゃんと読んでないんですけど(おい)社会への反発心や批判みたいなものが歌詞になっているようで、様式美的ロックで、久々に聴いてて楽しいやつが出たなって言う感じです。
すごい柄の悪いハード・ロッカーかと思いきや、演奏してる子達のビジュアルもイケてると来たもんだ、かっこかわいいってやつですね。


Arctic Monkeys/Four Out Of Five
UKといえば、王者アクモンも新譜を発表しましたね。あんまり振るわなかったみたいですが...。
前作『AM』がヒップホップとロックの掛け算を見事に打ち出してみせた名盤だったので、今回はどんなテイストのものが出てくるんだろうと思っていたところ、また全然違うものを出してきてほんとすごいなあと思います。ラップ全盛のこの時代においてバンド音楽はいかにすべきか、みたいな命題が一つあると思っていて、例えばBon Iverみたいにエレクトロとかけあわせてみたりとか、みんなそれぞれが「バンドで鳴らす意味」みたいなものを一つ提示しようとしているとこがある中で、今回のアクモンは"USヒップホップ然としたロービート"×"ヨーロッパ"(欧米ではなく、欧)みたいな掛け算をしてきた感じ。
アルバムタイトルの「Tranquility Base」っていうのは月面着陸したアポロ11号の基地の名前だそうで、そこに建った「Hotel & Casino」というコンセプトのアルバムのようですね。
確かに高級ホテルを思わせるロイヤルさ。全体的に音数を減らし、アレックスの歌が甘美に響く作りとなってます。そして各所で言われているように、前作まで使われていた「必殺のリフを持った曲作り」という方法論がほとんど今作では見られなくなっています。
持ち上げておきながら吐露すると、個人的には彼らに対して、1st至上主義的なところを持つピュアリスト・リスナーなので「遠いところへ来てしまったなあ」という感もなくはないのですが、良い年齢の重ね方をした円熟味があるし、とにかく大好きなこのバンドが、毎回強度の強い、流行に流されないオリジナリティを発揮して、その時代の先を行く作品を提示してくれるということが嬉しいですね。


ROTH BART BARON/HEX
変わらずに「冬」が似合うバンドだなと思います。
生命が終わりを迎え始める秋の終わりから、白く雪積もる冬の、冷たい世界の中にある温かな小部屋。
厳しい厳寒の中に忽然と現れるその煌々とした温もりは、生きる力であり、この冷たい世界における唯一の生命で、世界の全て。
少し中二病っぽい表現ですが、僕のROTH BART BARONに対するイメージはこんな感じです。
今作『HEX』も北欧・北米の風景を彷彿とさせるフォーク・ロックを基調にした牧歌的な作風、その中にゴスペルの重厚な要素やエレクトロ(ボン・イヴェールへの日本からの回答、なんて言葉を見かけました)の近未来的なエポックメイクをも入れ込むことで、とても大きなスケールで鳴る作品になっていると思います。かといってそれが大味になることもなく、日常のBGMとしても聴ける優しさもあり、先に書いた小さな小部屋のような身に寄り沿うような近しさもあり、と。
まだまだ聴き込むことで色々な発見がある作品だと思うので、早く寒い日本に帰って聴くのが楽しみな作品です(笑)


ASIAN KUNG-FU GENERATION/ボーイズ&ガールズ 
前作の『Wonder Future』は実はあんまりはまらなかったんですけど、先行シングルのこの曲、すごい良かったですね。
ノスタルジーな音像だけど、未来を向こうっていう前向きな感情が感じられました。『After Hours』のシャムキャッツをなんとなく彷彿とさせました。あのアルバムはインディー規模ならでは的な手触りの温かさもあると思ってるんだけど、それをアジカンっていうデカいバンドでやってるところが偉いなあって思います。
MVからは若者たちの希望と未来みたいな印象を受けるけど、twitterでゴッチが言ってたのは「40過ぎたおっさんがWeという主語を使っている」ということ。ここに、若者だけでなく誰もが何かを始めるのに遅すぎることなんてないぜ的な彼からのメッセージが込められてるんでしょうね。
伊地知得意の手数が多いテクニカルなドラミングではなく、淡々とゆっくり打つドラムスはアクモンと同じくヒップホップ的アプローチなんかな。明らかにラップを意識して作られた新世紀のラブソングあたりとはまた違う形だけどヒップホップを見据えてて、アジカンというフォーマットは保ちつつも、ちゃんと世の音楽と共振しようとしていることが伝わってくるような気がしました。


番外編 
ELLEGARDEN/虹
 
まあ長々と書いてきてなんなんですが、
俺の2018年の音楽と言えばもうELLEGARDENの復活
これに尽きる。

日本を出てから、新しい音楽を聴くことが減って、すげーキツいときにギリギリでも支えてくれてきたエルレやテンフィみたいな、自分の原点の音楽を聴く機会が明らかに増えて、まあしんどいことが沢山ある期間だったんだなって思うんですけど、「おんなじだよ、お前一人じゃないんだぜ?」という、孤独を知ってる人の優しさがにじみ出るあの歌に、この国でもまた救われてました。

この10年、待ちに待った彼らがもう一度集まってくれたこと。そしてステージに立ってくれたということは「俺が信じてきたものは間違ってなかったんだな」って思わせてくれるには十分だった。

本編最後にやった「虹」の

積み重ねた思い出とか 音を立てて崩れたって
僕らはまた 今日を記憶に変えていける
間違いとかすれ違いが 僕らを切り離したって
僕らはまた 今日を記憶に変えていける

っていう何百回と聴いてきたあのフレーズ。

俺はこの10年、彼らが四人での歩みを止めたという事実が少なからず常に胸のつかえになっていた。人生でこれだけの支えをくれる歌を作ってきた人たちですら、離ればなれにならなければならず、そしていつ抜けるともわからないトンネルに入っていたということが。
信じられるものを作り出してくれた人たちの離散、そしてもう戻ってこないんじゃないかという不安。
作られる音楽とその制作者(達)の人格は全く関係ない、という意見も聞いたりして、まあわかるなって思うんですけど、こと彼らにおいては人間関係も含めた繋がりがあって出来あがった曲たちだと思ってるので、四人のバンドとしての関係ってのが切っても切り離せないものだったんですよね。

「絶対戻ってくる」という約束は本当に果たされるのか。

「最後に笑うのは正直な奴だけだ」というその言葉を信じた俺に、それは本当なんだって示してくれるだろうか。

その答えに立ち会えたと思います。そして、それは、決してあの場で結実して終わりを迎えるものではなくて、この先の人生も続いていくもの。だけど、その道中で、あの景色があったという事実は、これまでの人生で胸につかえていたものが溶け、そして自分の中で止まっていた人生の時計の一部が確実に動いたことを感じさせてくれました。

改めて、おかえり。ELLEGARDEN。
そして、これからも、またよろしく。



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