AIから決別した村の末路
AI?
巷の自治体では、随分と人件費の削減に貢献したそうですね。
まあ、2050年現在では生産年齢人口が著しく減少し、いくら給料を上げても自治体間で人の奪い合いですからね。
私?申し遅れました、愛知・逢多村で村長をしております滋賀内蔵と申します。
島の人口は200人、愛知で唯一の「離島」でございます。
今となっては、かつて島だった地域に橋や地下トンネルが整備され、超高速ネットインフラも整っています。愛知の自治体数は8となり、自治体の定義から外された「村」は、しがない公務員ではなくなった滋賀が村長をしています。
いえいえ、滋賀も自治体の公務員でした。
でも、島の現状が円滑でないことから住民の反発が強まり、石央の自治体から離脱し、村長となった経緯から先ずお話ししたいと思います。
〈続きます⁉︎〉
AIから決別した村の末路 2
※この物語はフィクションであり、登場人物及び地名は、実在の人物および地名と名前が似ていることがありますが、全く関係ありません。
遡ること2030年、世の中には汎用型AIが出現し、投資する財力がある大手企業は次々と全能アーキテクチャの機能を持ったAIを導入して営業・製造の効率を最大化し、史上空前の利益をあげていました。
生産年齢人口が減少していることから、自治体も財務会計や人事管理を特化型AIを国の補助金により導入し、ここ10年ほどで1割の職員を削減してきましたが、本格的にオンラインで住民の手続きがすべて可能になるシステムを国が整備することになったため、補助金名目による第3次の自治体合併の波が押し寄せていました。
そんなとき、当時逢多村ではなく、東海岸市だった逢多島を、東海岸大地震による津波が襲ったのです。
島は全滅。はだけた山と土だけが残りました。
しかし、住民は東海岸市の緊急災害支援システムにより、津波の事前に避難場所から空飛ぶバス(当時の車名はエアーバス)によって、約500人全員が避難できたのでございます。
自然観光資源として国の特区に指定された逢多島の住民のほとんどは、外国人観光客によって生計を立てていました。
人口20万人の東海岸市のただ一つ観光地であり、その他の地域の住民は、エアーバスの生産、工場化された農業や飲食店などのサービス業に従事しており、失業率0.5%の完全雇用(国の基準による)を実現していました。
なぜこのような完全雇用ができたか。それは2020年の憲法改正により、自治体間での雇用者数を最適に調整するため、住民の自治体間の移動を制限する「住民移動制限法」が2022年に成立したからでございます。
さて、当面島から避難した500人は、避難所での生活が始まることになるのですが、新たな雇用先を探すために全員が求人登録をすると、失業率が国基準を上回り、完全雇用を実現するための住民雇用管理AIの補助金が減らされてしまいます。
AIにより、東海岸市の財政は最適化され、収支バランスは常に整合するようになっていました。
「住民移動制限法」は与野党の攻防により転入者のみを制限し、転出の自由は残されていました、
かくして、避難した島民は、東海岸市を転出するか、避難所での生活を余儀なくされたのです。
島の観光施設が復興すれば、島に戻ることができる。当時の避難者はそう信じて、全員が避難所生活を選択しました。
しかし、近隣市の生産性向上は超速で進んでおり、賃金が上昇する中、エアーバスインフラで遅れを取っている東海岸市内の企業は、逢多島の復興よりもインフラ整備を強く求めました。
東海岸市の財務会計AIは、近隣市の移動インフラを予測して最適化するアルゴリズムだったため、少し遅れてのインフラ整備をする仕組みになっていました。
〈続きを読むと疲れます⁉︎〉
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