ユリの買い物
今日は先輩が留守だから、ショッピングモールへ買い物に来た。もちろんクリスマスプレゼントの下見だ。
2人で楽しめるものがいいかなぁ、何が喜んでもらえるだろうか。
クリスマスの時期の店は華やかで、眩しいほどだ。えーと、どこから見ようかな…? あれ? あいつ…ユリ?
─ なにかプレゼントを買いたいと来てみたけど、売り場の華やかさが苦手だ。とっとと選んで帰ろう…。
「おい!」
肩をたたくと、ぎょっとしたようにユリがふりむいた。おもわずニヤニヤしてしまう。
「何してんの? めずらしいな? 1人? 買い物?」
「質問は1個にしろよ。まあちょっと買い物…」
「ふーん。彼女にプレゼント? あれ、彼女いたっけ?」
「べつに彼女じゃね-し。こほん…あー、ソヌ先生にだよ」
「へー。ああ、アルバイトしてたもんな。お世話になったお礼ってか。」
「うるさいな、あっちいけよ!」
「だって、ユリちゃんがそんなふうにプレゼント選んでるなんて、雨降るよ? 珍しいじゃん。先輩に写メとっておくろ」
「ばか! やめろよ!」
「ふふーん。で、何選ぶんだよ。」
「関係ないだろ?」
「いや、気になるじゃん。俺も先輩へのプレゼントを選びにきたんだし。やっぱりさ、喜んでもらいたいじゃん。開けたとき、パーッと笑顔になるようなさ!」
「へー」
「お前は違うの? ソヌ先生、好きなんだろ? 高校のときから慕ってたもんな。そういうわけだったかー。わざわざ母校のバイトなんかしちゃってさ」
ユリの脇腹をどすんと突いた。
「バカか。そんなんじゃねーよ。ソヌ先生は俺に優しいけど、もともと優しい人だから、誰にでも優しいんだよ」
「確かに、誰にでも優しいっていうのは、むかつくな。俺にだけ優しくしてほしいもんな」
「お前の話じゃねーよ」
「でも、なにかプレゼントしたいって気持ちになったんだろ? あの、ユリくんがだよ? 天変地異が起きるよ? ソヌ先生は特別なんじゃないの」
「あーうるさい! あっち行けよ!」
ユリにおしまくられて、別の売り場へ向かう…ふりをして影からユリの様子を観察する。
─ あ、なんかタオルを手にとった、ちょっと笑ってる? けー!
あれは、あれだ。無自覚ってやつだな。自分の気持ちに気づいてないやつだ。俺もずっと自分の気持ちがわからなくて、不安だったもんな。
あいつは女子とずいぶん付き合っては、すぐ別れってやってたけど、ほんとに好きになったことなんて、ないのかもな。
今度は本気なのかも・・・・。俺になにかできることあんのかな?
少なくとも、本心を気づかせてやらないと、始まらないか。しょうがねーな!
とりあえず、先輩のプレゼントを下見して、早く帰ろう。先輩に報告しなくっちゃ! へへへ。
(fin)
サポートいただければ、大変励みになります。いろんな資料の購入やレベルアップに役立てたいと思います。 何より、読んでくださってありがとうございます!