川端康成 女性の描写① 2 幾田花 2024年7月13日 15:05 会話文要素:匂い、声 安全剃刀の刃でそぐばかりで、そう言えば、ずいぶん頭を洗わなかったから臭いのだろうと、銀平はふとおびえたが、両肘を膝について頭を前に出しながら、石鹼の泡で髪をもまれているうちに気おくれはなくなって、 「あんたの声は、じつにいい声だね。」 「声……?」 「そう。聞いた後まで耳に残っていて、消えるのが惜しい。耳の奥から優にやさしいものが、頭のしんにしみて来るようだね。どんな悪人だって、あんたの声を聞いたら、人なつかしくなって……。」 「まあ? あまったれ声なんでしょう。」 「あまったれ声じゃないよ。なんとも言えないあまい声だけれどね……。哀愁がこもっていて、愛情がこもっていて、それで明るくきれいだね。歌うたいの声ともちがう。」みずうみ(新潮文庫)会話文要素 女性自身の感情「あんた、恋愛してるの?」 「いいえ。それならいいんですけれど……。」 「ちょっと……。ものを言う時は、そう頭をかきまわさないで……。声が聞きにくい。」 湯女は指を休めたが、困ったように、「恥ずかしくて、ものが言えなくなりますわ。」 「天女のような声の人もいるもんだね。電話で二こと三こと聞いても、しばらく余韻を惜しむだろうね。」みずうみ(新潮文庫)地の文要素 比喩 銀平は真実涙ぐみそうになっていた。この湯女の声に、清らかな幸福と温い救済を感じていたのだった。永遠の女性の声か、慈悲の母の声なのだろうか。みずうみ(新潮文庫)会話文要素 女性自身の感情、天国「あんたの国はどこ……?」 湯女は答えなかった。 「天国か?」 「あら。新潟ですわ。」 「新潟……? 市?」「いいえ。小さい町です。」みずうみ(新潮文庫) ダウンロード copy 2 この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか? サポート