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アラン・ドロン死去

今日16時前、Yahoo! Newsを見ようとパソコンの電源を入れると、「アラン・ドロン死去」のニュースが目に飛び込んできました。
最近は、めっきり衰えて「早く死にたい」と自ら語っていたそうですが、さもありなんと思われます。
私たち一般人は、老いてもさほど落差は感じないでしょうが、若いときにあれだけ美貌に恵まれ、現在のように老いてしまえば、その落差に耐えられないことでしょう。

私が、初めてアラン・ドロンの映画を観たのは、ジャン・ギャバン、リノ・ヴァンチュラの三大スターが共演した、『シシリアン』という映画でした。もちろん子供の頃から、アラン・ドロンという名前と顔は知っていましたが、「これが、アラン・ドロンか。カッコイイなあ。これが映画スターというものなんだな」と思ったものです。以来、彼の映画は、再上映、テレビ放映も含めてほとんど観ました。
中でも、一番好きな映画は、ジャン・ポール・ベルモンドと共演した『ボルサリーノ』という映画です。
ファースト・シーンは、刑務所から出てきたアラン・ドロンが、軽快なテーマ音楽が流れる中、一人歩いていくシーンでした。歩くだけで、絵になる俳優がいるのだと痺れました。

何と言っても、アラン・ドロンを一躍有名にしたのは、映画『太陽がいっぱい』でしょう。
サスペンス物につきものの、回想シーン、アト説が一切なく、ラストで、アッと言わせる傑作サスペンス映画です。
ルネ・クレマン監督(『禁じられた遊び』『鉄路の斗い』----第1回カンヌ国際映画祭監督賞受賞作)が、アラン・ドロンが出演した映画『お嬢さん、お手やわらかに!』を観て気に入り、彼に出演依頼したというのが定説になっていますが、実は、当初アラン・ドロンの役は、モーリス・ロネがやったアメリカから来た大富豪の息子、フィリップでした。しかし、アラン・ドロンはシナリオを読んで、
「どうも、この役は自分には合っていない気がする。主人公の貧しく孤独で野心的な青年、トム・リプリーの方が合っているような気がするのだが----」
と自分のマネージャーに言って、監督、プロデューサーにその旨交渉してもらい、主人公役を勝ち取りました。
彼のその判断は正しく、この役柄は、彼のその後の俳優人生の方向性を、決定的にしたと言っても過言ではないでしょう。
もし、当初の配役通りフィリップ役をやっていたら、彼は単なる二枚目俳優で終わっていたかもしれません。

最近の日本の芸能界には、とんとスターがいなくなりました。“会いに行けるアイドル”がコンセプトで、芸能人がより身近になりました。みんな、何処にでもいる、“隣のお兄ちゃん、お姉ちゃん”ばかりです。それはそれでいいのかもしれないが、何か物足りない気がします。
私の住んでいる街にも、何人か芸能人が住んでいますが、道ですれ違っても、近くのスーパーや郵便局で見かけても、スターしか持ちえないオーラが、まったくといっていいほど感じられません。サラリーマンのように、仕事がテレビに出ている人、映画に出ている人に過ぎないような気がしないでもありません。
その点、若いときのアラン・ドロンなど、表参道や渋谷の雑踏を歩いていたら、目立ってしょうがないでしょう。誰しもがすれ違いざま、「なんて、いい男なんだ。この世に、こんな美しい男がいるのか----!!」と、振り返って見るに違いありません。

以前、女優の浜美枝さんが、桂文枝さんとのテレビ対談で、映画『007は二度死ぬ』のボンドガールに選ばれてハリウッドに行ったとき、ホテルのロビーで当時大スターだったオードリー・ヘップバーンとすれ違い、「凄いオーラだった。スターとは、こういうものなんだ」と話していましたが、そうだろう、そうだろう、何せ、主演する映画すべてが世界中でヒットするのだから凄い。
きっと浜さんの頭には、彼女の主演作、『ローマの休日』『尼僧物語』『ティファニーで朝食を』『シャレード』『マイ・フェア・レディ』の名場面がよぎったに違いありません。
アラン・ドロンも、ヘップバーン同様、作品に恵まれたスターでした。中でも、私も再上映のときに観た『冒険者たち』がよかったと推す人が多いようです。この映画で、オートバイに乗るアラン・ドロンのカッコよさに影響されて、私もオートバイに乗るようになりました。
チャールズ・ブロンソンと共演した『さらば友よ』は、テーマ音楽も良かったし、名作『禁じられた遊び』の名子役、ブリジット・フォッセーが出ていたことは、あとで知ったことでした。

大スターに共通しているのは、作品に恵まれているということです。いい作品に出演し、それが世界中でヒットすれば、名声も高まるし、何より本人には相乗効果で自信がつきます。それが我々一般人にはない、オーラとなって現れるのでしょう。
その点、最近の日本の俳優さんたちは、作品に恵まれないから、オーラのつきようがない。

          <了>


 

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