天井に落ちていたペットボトルを拾う
目を閉じててもわかるその色によって目を覚ました。世界中の情報をコンパクトに纏めたラベルがこの部屋の壁で、それがいま認識出来る世界の全てを美しいラメ色に染め上げていた。天井に一つ落ちている、ペットボトル。手が届かないその眩しさに、いつまでも見惚れていた。自分もデザインの一部で、最初からこの世界と共にある。あのペットボトルを見ていると、そう思わずにはいられなかった。
そのペットボトルはプラスチックで出来ていて、何もかも照らしている。太陽は、プラスチックで出来ていたのだ。
気付いた時には自分は水の中に居て、そう長くは息が持たない事を悟る。この水は全て自分の目から出ていて、それに身を委ねれば太陽と一つになれる。そう信じ、そっと目を閉じた。
体が浮いているのを感じる。両手を天井に上げると、光る泡が腕を纏う。いつまでも、いつまでも、待つ。
泡が消えていくのを感じる。瞼から、ラメ色の光が消える。変わらないのは、太陽の眩しさだけだった。腕を下ろし、土を握る事でもう自分があの美しい世界には居ない事を理解する。
目の前に置いてあった炭酸飲料の蓋を開け、涙を流しながら太陽と一つになる。太陽は、目の前のペットボトルを目で認識出来るようになる光を提供してくれたのだ。
今も自分は、ペットボトルと共に在る。
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