【短編創作】カッターナイフの女
朝ポストを確認した時、ダイレクトメールの葉書を手に取った途端、指の先を少し切ってしまった。
軽く絆創膏を巻いて、朝食の用意をし始めた。
横着してソーセージの袋を包丁で切り開こうと、刃を突き立てた途端、手の平を切ってしまった。
先ほどより少し大きい怪我だが、これもまた少し大きい絆創膏で処置をした。
工事現場を横切ったら、鉄パイプの雪崩に巻き込まれてしまい、腕をざっくりと切ってしまった。
視界の端で、白い服を着た、誰かが見えた気がした。
二度あることは三度もあるのだな、今日はついていない日のようだ。
整形外科でしっかりと処置をしてもらった。もう家に帰っておとなしくしていよう。
家のアパートの前まで着いた時、路上に佇む、見知らぬ誰かが立っていた。
そしてそれは、どうやらはっきり見えてはならない存在だったようだ。
白いワンピースを来た女が、にたにたと嬉しそうにこちらを見ている。
ふるふると狂気に震える手には、カッターナイフがしっかりと握られていた。
俺は今日、生き延びられるのだろうか。
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