見出し画像

主体性重視は、流行か不易か

れんこんnote 011


主体性重視は、今のところ流行だと思う理由

 主体性重視は、今のところ流行だと、私は思っています。
 その理由を説明します。

子供たちをダブルバインドの状態に置いている

 子供たちは、主体的に学校に通っているのでしょうか。
 子供たちは、自主的に学校に通っているのでしょうか。
 それとも、子供たちは、強制的に学校に通っているのでしょうか。

 少子化が進んで、子供の数が減っているにもかかわらず、不登校の児童生徒数は増えています。いじめも増えています。
 そうした状況から考えると、子供たちにとって、学校は子供たちが主体的に通いたい場所にはなっていません。

 学校が主体的に通いたい場所になっていないのに、学校では「主体的な学び」が推進されています。
 「学び」にだけ主体性を求めることは、子供たちにとってわかりずらいことです。子供たちを一種のダブルバインドの状態に置いているからです。

 現在の主体性重視は、まだまだ端緒についたばかりで、流行の域を出ていないと思うのは、子供たちをこうしたダブルバインドの状態に置いていて、大人たちがそれに気づいていないと思われるからです。

「主体性」を重視する現在の風潮

 主体性重視が今のところ流行だと思う理由は、他にもあります。

 東京大学元総長の小宮山宏さんは「日本は課題先進国である」と言っています。日本は世界で最も早く少子高齢化が進んでおり、世界もいずれ少子高齢化になっていきますから、日本が課題先進国であるという主張は理解できますし、小宮山さんが「キャッチアップからフロントランナーへ」と言うのもわかります。
 そのために「主体性」が大事だということも納得します。

 でも、現在進められている主体性重視には違和感があります。

 日本では人口減少とともに需要が減少し、デフレが常態化していました。世界はまだ人口が増加していますが、100年以内には人口が減少し始め、世界的な需要の減少が避けられません。
 世界的に需要が減少すると、資本主義は成り立ちません。
 資本主義を維持するには、新たな需要が必要で、新たな価値を創造し続けて、需要を喚起し続けなければなりません。
 そのためには「主体性」がどうしても必要なのです。
 正解のない世界で、新たな価値を創造するためには、一人ひとりが主体的に考え、価値を生み出す競争を続けなければならないのです。

 こうした考えが、現在進められている「主体性重視」の本音なのではないか、と私は疑っているのです。
 疑い深いですね。
 だって、こうした「主体性重視」では、みんなに主体性が大事だと言いながら、ほんの一部の人が新たな価値を創造してくれればいいのですから。大多数の人々の犠牲の上に進めている「主体性重視」のように思えてならないのです。
 本当に疑い深いですね。我ながら呆れます。

「主体性」はなぜ大事か

 それでも、「主体性」は大事だと、私は思っています。

 小宮山宏さんの言う「課題先進国」では、それぞれの地域や場面で、みんな協力して課題を見つけ解決していくことが求められていると思います。
 世界の人口が減少し始めたら、資本主義が終焉を迎えるかもしれません。そうしたらどうなっていくかは誰もわかりません。誰もわからないのですから、みんなが主体的に考え、行動する中で、答えを創って行くしかありません。
 ですから、「主体性」がとても大事だと、私は思っています。

 自分のことを考えると、自分の主体性など、ちっぽけで大したことがないと思えます。
 でも、一人ひとりの主体性や人権を大事にしなくてはいけない、と思っています。
 なぜか?

 その人がいるから、そこに意味が生まれてきます。
 どの意味が重要かは、その人次第です。

 資本主義が終焉を迎えるかもしれない世界では、どんな意味が重要になるかはわかりません。
 正解がわからない時代ですから、一人ひとりが主体的に考え、行動し、自分の周囲での解や意味を創りだしていくしかありません。

 意味を生む主体として、すべての人の主体性や人権が大事なのです。

 自分のことを考えるとちっぽけで大したことないとしか思えないけれども、大事にしなければならないもの、それが主体性であり、人権なのだと私は考えています。
 そう考えたとき、主体性重視は不易であるとしてもよい気がします。

追伸

 子供たちの主体性を大事にするなら、通わなければならない学校という存在は変えていかなければならないでしょう。

 すぐに思いつくのは、オランダのようにいろんな種類の学校があって、子供たちが選べるようにすることですが、他に方法はないのでしょうか。
 学校を子供たちだけが通う場所から、大人も子どもも通う場所へと変える発想もあるようです。

 近代が生んだ学校を変える時期に来ていることだけは確かなようです。
 そして、それは、それぞれの学校が主体的に考え、行動し、それぞれの形で、一人ひとりの子供たちの主体性を大事にしながら、変えていくしかないと思っています。

 そのためには、現在の仕組みをどのように変えていけば良いでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?