フェミニズムの議論は、女性権利の話ではなくて、女性らしさそのものにフォーカスする|Tech Open Air 2019 day.1(後編)Rising Female Founder Stars 5th Edition
前編(Tech Open Air 2019 day.1(前編)NBT Session - Next Big Thing)はこちら
TOA2019のday1、TOA19 Satelitesの参加レポートです。
2つ目はRising Female Founder Stars 5th Edition。
これも歴史の長いイベントなのだそうで、今回は5回目の開催がTOAの会期に併せて行われたとのことでした。(ちなみに前回も同じくTOA2018のサテライトイベントとして行われています)
本来女性起業家、もしくはそれ未満の人たちのためのイベントだとのこと。
実際男性は関係者か、登壇者の側近と思われる人以外は会場には存在していなかった。まして、アジア人は僕とあと1人だけだったようです。
※なんでこの人いるのかしら?っていう空気を感じるほどではなかったので、ご迷惑はかけてなかったと思いたい。
会場はBerlinのWeWorkにて行われました。
オンリー・レディな空間に飛び込むために
この努力が本当に必要だったのかはわからないですが、会場に達するまでの間、迷っていたアント・レディ(起業家女性)のためにドアマンに会場のディテールを訪ね、エレベーターのスイッチボーイをこなし、最後の扉が透明なインナーロックドアだったため、ドア越しに会場内のスタッフにアピールする、など、ひたすらレディ・ファーストに、ジェントルな振る舞いを心がけ、敵ではないし、排すべき者でもないことをわかってもらいました。
その上で本祭の参加者であることをパスで認識してもらい、
「名簿にはないけど、特別ですよ」
という言葉とともに、入れてもらった。
受付の女性が受け入れてくれた直後にくれた言葉は
「写真とかむやみに撮影してSNSとかにアップしちゃダメですよ?みなさん繊細な方達ですから」
※なお、過去の写真はこちらのfacebookページに上がっている。今年のは雰囲気がもう少し明るい感じでしたが、参考にはなるでしょうから貼っておきます。
でした。厳重というよりは繊細な心遣い。
イベントの空気作りとして、スタッフ皆がコンセプトを理解していることに感心して、受け入れてもらったことにはとても感謝しました。
さて、イベントそのものはというと、これもタイトルの通りですが
「成功した女性起業家たちのストーリー」
を共有する会です。
はじめに言っておくと、この記事は、
①エモーショナルで、情緒的なこのイベント(Rising Female Founder Stars)
②行きに乗ったAirFranceの機内での出来事
③ベルリンの街の風土とビジネスシーン
の3つが相まって僕の中の Feminism への理解を大きく深めることになった過程の話です。これは人生では初めての整理角度の発見で、とても大きな収穫でした。
①エモーショナルで、情緒的なイベント
イベント自体の感想はこんな言葉で初めて間違いない。
ゲストは司会者と8名のSpeaker。
およそ100名程度の観客たち。
彼女たちは、主催者に紹介されると、大げさな紹介に恥ずかしそうにしながら少しずつ語り始め、最後には自ら練り出した示唆的なフレーズを提示するというのが、自然発生的なプレゼンテーションのフォーマットのようでした。
人に褒められるのは恥ずかしい
自分の考えを語るのは、誇らしい
そんなとても人間らしい感情にとても素直な語り口で
・自分の人生の中で、なぜこのビジネスを始めるに至ったのか
・どんな原体験が元になったのか
・ビジネスを作る過程で得た体験を元に紡がれた力強い言葉。
をとても雄弁に順番に語っていくんです。
会場には幾度も涙を伴う共感や、形式的な香りの全くしない拍手が起きていました。
いくつか印象に残った発表者と、その示唆にあふれたメインフレーズを紹介しましょう。
Kaia Andrea : Kaye’s storyReal success means creating a life of meaning thought service that fulfiller. Sisterhood is our instinct, follow it.(忘れないで。本当の成功とは、充実した生活を生み出すものよ。)
SI-SU Socks(ファッショナブルな靴下) : Andrea
Think like a queen.(クイーンのように考えてみて)
A question is not afraid to fail.(失敗は怖い?)
Failed is another stepping stone to greatness.(ただの足がかりよ)
Dabelino
本好きとギークのためのサービスを生家商売の書物と文房具屋から発展させた事業
Technical promotion on few bidding(テクニカルプロモーションは裕福でない奇跡を生む)
Mallory : Lit lab(Cafe on SFO)
How to digitize store experience?(ストア体験をどうデジタイズするの?)
これらのフレーズを中心にプレゼンテーションを受けた女性たちは、
「私も勇気をもらった」
「あなたの考えを聞いて、私の考えは間違っていなかったことに気づかされた」
そんな言葉とともにエネルギーに満ち溢れた顔で会場を後にする。
これが女性起業家発生のエコサイクルになっているんだとしたら、恐ろしく力強い。
彼女たち自身のBrand Purposeともいうべき信念に基づいた事業が
新しい哲学の卵を生み出していく
それがこのコミュニティの本質のようでした。
②AirFranceの機内安全案内ビデオ
このセクションで言いたいのは、端的に、2015年にリリースされたこの映像のことです。
史上最高にオシャレな機内安全ビデオ誕生!
何次元も上をいくエールフランスのハイセンス演出!!
と、一時期話題になったけど、覚えている方はいるでしょうか。
この映像を僕は行きの飛行機の中で見ることになったのだけど、この映像にはおしゃれでハイセンスであるという以外に、今回のテーマと関連した特徴があります。
出演している女性たちが、徹底して女性らしい
という点です。
・共感的な所作のグルーヴ感
・各人の最も美しく映えるカットが意図的に入れてあること
・男性でこれを作っても絶対に世界観として成立しないであろうこと
こんな観点から女性らしさや美しさを感じずにはいられないのですが、ここまでピュアな表現は人や企業が日頃から「女性らしさとはなんなのか」を熟考しているような社会でないと絶対に生まれません。
③ベルリンの社会性とビジネスシーン
TOAの会期を通じて様々なチャンネルでお会いしたC職の方々の、およそ半分程度は女性でした。
これは東京・京都・札幌はもちろん、深圳・SVなど、様々なプロダクト・シーンを持つどの街でも見ることができない特徴です。
特にTechとArtに関わるカンファレンスだから、というバイアスもあるとは思いますが、出展企業のバリエーションが様々な中で、この特徴は、このベルリンを取り巻くテクノロジー・ビジネス・シーンの特徴そのものであるという感覚を持ちました。
また、女性らしさ、フェミニズムの枠を超えてもう少し視点を広げて考えてみるとそれだけではなく、SFOとはまた違ったダイバー・シティ感溢れる様々な思想が飛び交っていることにも気付きます。
SFOやSVで言うダイバー・シティはどちらかというと、様々な文化背景を持った人たちが、Logical Thinking(論理思考)やInsight(洞察)などの基本的な考え方を鉈に、産業の中で一角を講じるに足る強さを持つ共通のひとつの文化を作り出し、それを大切にしているように見えます。
言葉を変えると、様々な文化背景・才能を持つ人たちが力を合わせて最適解を見つけよう、というアプローチです。
それと対比すると、ベルリンに根付くダイバー・シティは、様々な文化背景を持った人たちがそれぞれの背景から織り成される哲学をもとに信念を貫いてビジネスに取り組む姿勢がベースになっています。
それぞれが持つ個性も才能も、できるだけピュアに活かす方法を考え、各人が、ぞれぞれらしく生きる、という意志がバックグラウンドになり、個性や才能から生まれる成果物をの特徴を自分にはない才能の産物としてお互い楽しむ、そんなアプローチを強く感じます。
同じダイバー・シティとして表現するも、それぞれの才能や個性を交わらせて楽しむレイヤーが違うんだな、という感じました。
ベルリン型ダイバー・シティにおけるフェミニズム
事業化にとって、そして、テクノロジストにとってのフェミニズム議論の価値を見誤らないために。僕のメモ書きに書いておきました。事業方針を決める経営という役割の中で、とても重要な示唆に富んだ体験でした。
僕の言葉での表現はこれが限界だった…けど、お蔵入りするにはもったいなく、なんとか書きました。失礼な表現などがあったら鋭意修正をさせていただく所存です。
ベルリン型のダイバー・シティにおけるフェミニズムは、僕が当初抱いていた女性解放思想、女権拡張主義と言った言葉の印象からはほど遠く、どちらかというと女性らしさそのものの話しかしておらず、女性らしさが持つ特徴を社会がよく観察し内在する価値に社会が当たり前に期待し、活かしている。ということを伝えられた。
女性らしさは、とりたてて特別なものではなく、社会に点在する様々な個性などと等しくその特徴をちゃんと把握し、
それが社会の中でどういったところに適用すると価値が出るんだろう?
どういったことに向いているんだろう?
というようなことが日常的に考えられている。
ここでことさら言うのも恥ずかしくなってくるくらい、当たり前なのだ、何もこと立てて社会が意識するでもなく、ごく自然に人間の特徴の一部としてフェミニズムというものを認識している、というのが正しい解釈になる。
実際に行われるFeminism議論の印象
実際の現地でのFeminism議論の印象を観察すると、こんな違いがあります。
確かにこの観点に立ってみると、僕が見てきて記憶している社会のほとんど全てはそうはなっていませんでしたし、この社会の人の個性に対するスタンスは、僕の人生の中でも初めて触れたものでした。
そうか、こういうアプローチもあるのだな。
と強く感じるきっかけになったのでした。
このアプローチを元に後日TOA本祭の方である登壇者と交わした話が、とても面白く、今回のカンファレンスのハイライトになるべきお土産話になる。
また後日、書きましょう。