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ぜんぶ暑さのせいだ

任地263日目。土曜日。

暑い、とにかく、暑い。

最近の私の夕方は使い物にならない。帰ってきたらとりあえず寝るというナマケモノな習慣が完成されてしまった。

暑さはたくさんの体力を奪う。日本にいたときどれほどエアコンという文明の機器に頼っていたかが、わかる。


今日もお昼ご飯を食べた後、すぐに寝た。もう暑くてやっていられないのだ。

しかしながら寝ながらにして暑すぎて熟睡はできない。常に寝ぼけているような微妙な感覚が頭に残る。


夜7時、散歩に出た。

暑すぎる部屋にいたくなかった。

今日は夜音楽隊の練習があったはずだけれど、リーダーの一声でなしになった。残念。


私はケーナを練習している。でも低いソの音だけがどうしてもでない。そして1オクターブしかまだ奏でられない。課題がたくさんある。課題がたくさんあると投げ出したくなる性分も、いつかどうにかしたい。

そもそも私はケーナに向いていないのかもしれない。吹く系の楽器はほぼ初めてである。早く音を出せるようになりたい。


しかしながら毎週あるはずの練習が今週もないとなると、モチベーションの維持にも影響してくる。ギターは永遠に弾いていられるのに、ケーナを練習するのが億劫なのは、向いていないからというのもあるし、そもそも酸欠になるのだ。長時間はできない。

そもそも音楽隊に入ったのも、音楽隊のみんなと一緒にいたいからであり、ケーナを極めたいというのはその次の理由だ。みんなとの練習がなくなるのは、実を言うととてもとても寂しいのである。


今日の練習がなくなって残念がりながら、暑くもわもわした風通しの悪い部屋にい続けることが億劫になった。

ちょっとインカコーラでも買いに行こう。そう思って夜7時、部屋を出た。


目の前のお店は締まっている。先のお店まで買いに行ったがインカコーラは売っていない。仕方なくコカ・コーラを買った。こんなことがない限りコカ・コーラなんて買わない。数か月ぶりのコカ・コーラだった。

そのまま家に帰るはずだったけれど、やはりあの暑い部屋には返りたくない。

そして一人でいるのも嫌だ。

そう思って歩き始めた。町の中心に向かって。


町の中心にはプラザデアルマスという広場がある。ペルー中どの町にも基本的に町の中心にはプラザデアルマスという広場とカテドラルという町一番の教会がある。私の町も例外ではない。

歩いて10分程度で人が集まる広場があるのはこの町のいいところ。

部屋着で出てきちゃった、と思いながら何も気にせずひたすら広場をぐるぐる散歩した。


途中でりんご飴を買った。掌をグーにしたサイズのリンゴに飴が巻き付いているやつ。33円。日本のりんご飴と違ってとても歯に張り付いた。食べにくい。

家に帰ったら歯を磨こうと思ったけれど、日本から持ってきた優しいタッチの歯ブラシがこの硬すぎる飴をそぎ落としてくれるか不安になった。


広場でくつろぐ人たちの半分くらいはみんな私を見てくる。

隣にいる犬は片足を引きずっていた。けがをしたのだろう。この町の犬はちょっとどんくさい。そして怠け者である。人間より遅く起きて人間より早く寝る。そういうぐーたらなところは、ちょっと好き。


りんご飴がなくなるころ、広場を4周していた。最初こそ食べにくかったけれど、なくなって芯だけになるのはとちょっと寂しかった。

りんご飴の芯を捨てて歩き始めるころには、歯に張り付いていた飴が消えていた。いつの間に食べちゃったんだろう。


広場を後にして家に向かう。

散歩は一人も楽しいけれど気の知れた誰かが横にいてくれたらどんなにいいだろうと思う。

りんご飴が歯に張り付くことだって、一人で感心していないで誰かに話したい。

きっとその誰かは自分が良く知っている。その人から連絡が入らないことが何より寂しいのだろう。

携帯を遠くに置いておこう。何も運んでこない電波とはおさらばしたい。


マンゴー臭にまみれた部屋。

何もする気の起きない週末。

ちょっとのことで不安になる日々。

解き放たれたnote。

飲みかけのコーラとりんご飴の後味。

煮え切らない気持ち。


ぜんぶ、

ぜんぶ暑さのせいだ。




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