ペルーでの日々の記録

カウンターパートの辞任とペルーの社会

任地254日目。木曜日。

ペルーは年末年始休暇はなし。1月1日のみ休みで、今日(1月2日)から配属先で活動をしていました。

同僚は1か月の休暇取得中。

上司も朝から来なかったので、一人オフィスでずっと作業をしていました。

上司来ないなーって。まあ新年だしゆっくりめなのかなーとか、他の場所で仕事あんだろうなーと思ってゆったり待っていたんです、数時間。

そしたら農業課の同僚が来て、彼はもう来ないよ。って。


上司というのは形式上の私のカウンターパート。

基本協力隊員は現地で活動するために配属先があってそこで一緒に働く相棒みたいな存在がいます。それをカウンターパートと呼びます。

というか、そもそもその配属先がボランティアを欲しがっている構図なので配属先がないことはありえません。カウンタパートはいたりいなかったりしますが基本います。

私の場合、相棒と呼べるようなカウンターパートはいなく、一応上司が私の受け入れをするという感じでした。

最初こそ全然JICAボランティア事業の理解が及ばなかったけれど最近は結構いい関係を築けてきていました。

その上司が、今日から来ないことになりました。というか、配属先の長に辞めさせられました。おそらく政治的な理由で。

4月に着任してからこつこつ、信頼関係を作って来ていたと思っていたし、お互い探り探りだったけれど最近は本当にお互いのことがわかって来ていたし、一緒に活動していく話もしていたんですけれどね。

「君が」という主語が「僕たちで」に変わったりして、嬉しかったり。

私が出したアイデアに目をキラキラさせてそれやろう!!って言ってくれたり。

公務でリマに上がった時の日本文化紹介イベントの話を嬉しそうに聞いてくれて、JICAペルー事務所がつくったカレンダーに(各ボランティアの写真が載ったりするのですが)私の写真を探したり。

9か月、最初は本当に全然コミュニケーションが取れなかったのに、ようやくここまで来たって感じだったんですよね。寂しいです。

青年海外協力隊員としての成果とか町の地域活性のためにとかそういう話の前に、単純に一緒に歩んできた相手がいなくなるというのはとても寂しいことです。

普通日本だったら数週間前には聞くし送迎会とかもできるのにね。急に来なくなるんだもん。


一協力隊員としてはとても悔しかったです。コツコツ人間関係を作って来ても、ふりだし。

ペルーは政治色が強いです。選挙なども義務化されており、投票に行かないと罰金を払います。

町の中の家々は支持する候補者の名前はモチーフが描かれ自分がだれを支持しているかを明らかにしています。

4年に一度その選挙が行われ、選ばれた人を筆頭にすべての人員が入れ替わります。


たとえば2018年の12月に選挙があり、私の配属先の町役場はそれに伴い役場長が変わり、2019年1月から総入れ替えになりました。

2018年10月まで前任者はいましたが、総入れ替えしたので私の前任者のことを知っている人はほとんどいなくなりました。

4年間は基本人は変わらないのですが、それも役場長の一声で全然動きます。辞めさせられたり、部署移動になったりします。

私もその現実を着任時から知っていたので、4年で変わってしまう人たちを充てにしてしまうと持続可能とか言ってられないなーとは思っていました。

調整員さんはそれに対して、そんなこと言ってたら何もできないから4年で変わってもいいからとりあえずいる人たちに何かするしかないんじゃない?といってくれていました。

といっても配属先のフォローがはじめからない私にそんな選択をしている余裕もなく、とにかく配属先も農家も学校も州都の組織も巻き込んで、、!みたいに動いたりしていました。

その間にも人の入れ替わりはたくさんあって、アシスタントレベルだとほとんど変わっちゃいました。

同僚は農業課、環境課、観光課、経済開発課に1人ずついたのですが、観光課は人員移動があり今誰もいない状態で、私の上司が一応兼任みたいになっていました。

観光についても私は活動する予定だったので新しい年度になったら誰か観光課につれてくるよという上司の言葉を信じて観光の活動を一度ストップしていました。上司もいなくなっちゃって、それはどうなっちゃうんでしょうねー。

現在農業課、環境課、経済開発課にそれぞれ1人ずついる同僚だけが変わらず在籍しています。3人の同僚がいることが何とか救いですが、全てを統括していた私のカウンターパート(上司)がいなくなり、私も基本上司にすべて話していたので、これからどうすればいいのかなーっていう感じです。



辞めさせられたと聞いたとき、めっちゃ悔しくてなんで?!みたいになっていたのですが、それを伝えに来た同僚や別の部署の元アシスタントは全然普通なんですよね。

もう来ないらしいよ→「あ、そうなんだー」。以上。

軽すぎる、反応が、笑

いうてこの1年一緒に働いてきた人じゃんかーと思いながらも

この町ではそれが普通なんでしょう。

誰かが次の日から急に来なくなるなんて、普通過ぎるくらい普通なのでしょう。

わかっています、でも私は理解はできません。

引継ぎだって十分にすることもできないし。というか、私のカウンターパートは次どうなるんでしょうねー。

悲しーなーと思っていたら噂の上司がまあまあなテンションで入ってきました。悲しくなさそうでした。笑

私だけらしいです、こんなショックを受けているのは。笑

さすが仕事のできる上司、わざわざ来て私にパソコン内の情報のありかを引き継いでいきました。

そして最後にひとこと、

「俺はいなくなるけれど、いくみは「KATEIKA」のプロジェクト続けて言ってね。あれ、俺好きだからさ!!何かあったらいつでも電話してくれていいから」

ちゃっちゃーて来てちゃっちゃーと帰ってしまった。ほんと今までありがとうって一応言ったけれど相手のさよならもさらりして過ぎていてあっけなくて。笑

いやーみんな全然さらさらしすぎていて余計に悲しくなりますー。



みんな慣れているのでしょうが、「慣れんな!」って言いたいですね。

ほらあの、たとえば女友達が泣きそうに笑っていたとして、

どうしたの?って聞いたら

彼氏が私との予定ドタキャンして他の女の子たちと遊びに行っちゃった。もう慣れたけどね~笑

っていう女友達に「そんなこと、慣れんな!!」っていう、彼女を実は想っている男友達

的なニュアンスで「慣れんな!!」って言いたいですね。(誰)


ペルーの社会。政治が中心の社会。

進んではとまり、なくなる。

進んではとまり、なくなる。

そうやって今までも来たのでしょう。

人が変わり育てた人も変わり引き継がれることもなく、技術も伝授されず、今までも来たのかもしれません。

どうせ数年、どうせ数か月で変わってしまう仕事に対してどれだけの人が熱意をもってできるのでしょう。

誰かのために、町のために、そうやって働いても簡単に職を失う世の中でどれだけのひとが志を維持できるのでしょう。


ペルーという国は、面白いです。好きですよ。

でもいろんな顔を持っています。

一方でマチュピチュ。世界的に認められた世界遺産。インカ帝国の首都クスコ。世界中から人が集まる。特有の文化や伝統、食を維持している。

一方でリマ。南米でも片手で数えるくらいの大都市。そこにいけばなんでもそろう。

一方で日系社会。今から120年前に初めて日本から移民が入り、日系社会を作った。一時期は日系の大統領もいて、長い間統治した。

一方でアマゾン。実はペルーの60%はアマゾンであり、熱帯雨林。今でも多くの先住民が暮らす。特有の気候、食文化を持っている。

一方で気候。ペルーに来たら世界の104の生態系の確か82はクリアできるといわれている。それくらい多様な気候、生態系にあふれた国。

一方で経済格差。大都市リマを見つけたと思えば、貧しい貧困地帯も存在する。リマやクスコにたくさんのお金は使われても、本当に援助が必要なところにはなかなか届かない。

一方で鉱山や自然資源。今までもこれからもミネラルに頼ってきた。日本にはないミネラルや日本にはない自然資源。日本の場合自然資源がないので何かを創造することで生きてきたけれど、ペルーはどちらかというと自然とそこにあるものを売ることで生きてきた、そんな風に見える。


こんなにも魅力的な国だからこそ、こんなにも様々な顔を持った国だからこそ、その陰に隠れて様々な問題を抱えているのは事実。

私には、目の前の利益にとらわれて、本質的に対応していかないといけない課題から目を背けられているように見える。

中長期、そんなこといったってしょうがないんだと思う。未来なんて思い描かない習慣なのだろう。

でも、いい仕事をした人が急に辞めさせられてその仕事もその人の思いも引き継がれることなく日々が更新されていくとして、それらにみんなはとっくに慣れていて、それがペルーの当たり前で。

本当にそれでいいのかな。

もしみんなそれでいいと思っているなら、じゃあなんで私はここにいるのかな。


私の周りの人、みんな強いよ、本当に。

めっちゃポジティブ。笑

私も結構ポジティブって他者から言われてきたけれど全然次元が違う。超ポジティブ。

めそめそしているとだめらしい。笑 だから気を遣うんだけどさ。

「諦め」があるんだなーと思う。

誰にも何にも期待しない、「諦め」があるからこそ強いんだなーと思った。

インフラも時間も約束も仕事も、結構カオスになりがちな環境で「諦める」の術が身につくのかもしれなくて、それが何より強さに代わるんだとは思う。

「慣れんな!!」っていいたいけれどね。

がつがつしていないところはペルー人のいいところであるとは思うけれど、この国この町で暮らしていて引っかかることは少なくない。

「だって仕方ないじゃーん」って声も聞こえてきそうだけどね。

まあ、その通りなんだけど。


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いくみ 
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